7年振りの来日公演が控えるバステッド。色褪せない懐かしさと、新たな解釈での活動
ラジオDJ、ライナー執筆など幅広く活躍されている今泉圭姫子さんの連載「今泉圭姫子のThrow Back to the Future」の第88回。
今回は、10月23日に大阪、24日に東京で来日公演が行われるバステッド(Busted)についての想い出とこれまでについて寄稿いただきました。
<関連記事>
・ポスト・マローン、ゲーム実況中にカントリー・アルバムの制作について明かす
・ポスト・マローン単独来日公演:ステージで“生きる”ひまわりのようなアーティスト
7年振りの来日公演
7年振りのジャパン・ツアーで帰ってくるバステッド。昨年は、ヒット曲を再レコーディングした『Greatest Hits 2.0』が、全英アルバム・チャート・ナンバー・ワンに輝きました。大ヒットしたデビュー・アルバム『Busted』(2002)とセカンド・アルバム『A Present for Everyone』(2003)は、最高位2位だったので、『Greatest Hits 2.0』は、彼らにとって初めての1位と言うことになります。
過去、シングルは4曲1位、Top3ヒットも4曲と言う輝かしい成績を残しているバステッドの名曲の数々は、デビューから20年以上経っても、色褪せず、懐かしさと、新たな解釈による楽曲の魅力を十分楽しむことができました。
2015年、チャーリー・シンプソンが戻ってきて、正式なリユニオンがオフィシャルになってから制作した『Night Driver』(2016)は、悪ガキ集団のイメージから、大人への階段を上り始めた第一歩の作品でした。もしかしたら、「What I Go To School For」のような元気印のサウンドこそバステッド、と思っていたファンにとっては、戸惑いを隠せなかったかもしれません。
でも今、『Night Driver』を改めて聴き直すと、バステッド流シンセ・ポップ・サウンドは、彼ららしいメロディが、心地よく耳に残るサウンドに仕上げられていることがわかります。ソロ活動のため、ロサンゼルスでの生活を始めていた頃のジェイムス・ボーンに何度か会いましたが、彼がエレクトリックなサウンドにかなり傾倒していたことを知っていたので、私にとっては、決して意表をついた作品ではなかったのですが、ファンの方は驚かれたかもしれませんね。
別れと再会
2004年、バステッドは、もっとロックをやりたいという意識を強く持っていたチャーリーが、ファイトスターの活動に専念するため、バンドを離れました。そんな経緯があるので、バンドは決して円満な別れではありませんでした(円満な解散はありませんけど)。その後、ジェイムスとマット・ウィリスは関係性を続けていました。
再結成の大きなきっかけは、2014年、ジェイムスとマットがマクフライと組んだマクバステッドの成功でしょう。音楽業界の幼馴染と言える2組の共演は、ジェイムスとマットにとってバステッド再結成への思いを強くしていきました。ただ、再度3人が集結するまでには、かなりの時間がかかったと言うわけです。もちろん、再結成後も音楽的な試行錯誤は、3人が乗り越えていかなくてはいけない壁でした。
再結成後の活動
『Night Driver』を経て、2019年には『Half Way There』をリリース。全英チャート最高位2位のヒットとなっています。このアルバムは、段階を経て、3人がやるべき道に戻り、ポップ・ロックとしてのパワーとエネルギーを感じる作品に仕上げられました。そして、パンデミックを乗り越え、次に彼らが手掛けたのが、先述した『Greatest Hits2.0』だったのです。今の声、今の解釈による作品作りで、名曲に新たな息吹を与え、ナンバー・ワンになったのです。
この2.0はシリーズ化され、『Greatest Hits 2.0 (Guest Features Edition)』では、バステッドの名曲を彼らと親しいバンド仲間が参加してのヴァージョンが収録されています。例えば「Year 3000 2.0」は、ジョナス・ブラザーズをフィーチャー。元々ジョナスはファースト・アルバムで、この曲をカバーした経験があることから共演が実現。
「What I Go to School For 2.0」はザ・ヴァンプス、「3AM 2.0」はジェイムス・アーサー、「Thunderbirds are Go 2.0」はマクフライ等など、どれもとても楽しくワクワク感に溢れた作品に仕上げられています。
さらに今年になって、『Greatest Hits 2.0 (Another Present For Everyone – Live Edition)』、2.0のコンピレーション作品「Greatest Hits 2.0 (Another Present For Everyone)」もリリースされています。
2016年にリユニオン・コンサートをロンドン02アリーナで観ましたが、とにかく楽しい彼らのコンサート。ヒット曲ばかりで会場全体が一体感を持って大合唱。感動しました。その光景にも負けない前回の恵比寿リキッドルーム公演も忘れることができません。
3人が思いを一つにして、再度バステッドとして動き始め、時代を超えて愛されるグループとしての証明は、最近の活躍を見ればわかります。先日、ジェイムスと連絡を取った時に、来日公演を楽しみにしているとメッセージをくれました。 昨年、ミュージカル『ルーザーヴィル』の原作者としての来日はありましたが、バステッドとしての7年振りの来日公演は、また格別な思いがあることでしょう。
Written By 今泉圭姫子
著者の新刊
『青春のクイーン、永遠のフレディ 元祖ロック少女のがむしゃら突撃伝』
2023年9月5日発売
発売
今泉圭姫子のThrow Back to the Future』 バックナンバー
- 第1回 :U2『The Joshua Tree』
- 第2回 :バグルス『ラジオ・スターの悲劇』
- 第3回 :ジャパン『Tin Drum』(邦題:錻力の太鼓)
- 第4回 :クイーンとの出会い…
- 第5回:クイーン『世界に捧ぐ』
- 第6回:フレディ・マーキュリーの命日に…
- 第7回:”18 til I Die” ブライアン・アダムスのと想い出
- 第8回:ロキシー・ミュージックとブライアン・フェリー
- 第9回:ヴァレンシアとマイケル・モンロー
- 第10回:ディスコのミュージシャン達
- 第11回:「レディ・プレイヤー1」出演俳優、森崎ウィンさんインタビュー
- 第12回:ガンズ、伝説のマーキーとモンスターズ・オブ・ロックでのライブ
- 第13回:デフ・レパード、当時のロンドン音楽事情やガールとの想い出
- 第14回:ショーン・メンデス、音楽に純粋なトップスターのこれまで
- 第15回:カルチャー・クラブとボーイ・ジョージの時を超えた人気
- 第16回:映画「ボヘミアン・ラプソディ」公開前に…
- 第17回:映画「ボヘミアン・ラプソディ」サントラ解説
- 第18回:映画「ボヘミアン・ラプソディ」解説
- 第19回:クイーンのメンバーに直接尋ねたバンド解散説
- 第20回:映画とは違ったクイーン4人のソロ活動
- 第21回:モトリー・クルーの伝記映画『The Dirt』
- 第22回:7月に来日が決定したコリー・ハートとの思い出
- 第23回:スティング新作『My Songs』と初来日時のインタビュー
- 第24回:再結成10年ぶりの新作を発売するジョナス・ブラザーズとの想い出
- 第25回:テイラー・スウィフトの今までとこれから:過去発言と新作『Lover』
- 第26回:“クイーンの再来”と称されるザ・ストラッツとのインタビュー
- 第27回:新作を控えたMIKA(ミーカ)とのインタビューを振り返って
- 第28回:新曲「Stack It Up」を発売したリアム・ペインとのインタビューを振り返って
- 第29回:オーストラリアから世界へ羽ばたいたINXS(インエクセス)の軌跡
- 第30回:デビュー20周年の復活作『Spectrum』を発売したウエストライフの軌跡を辿る
- 第31回:「The Gift」が結婚式場で流れる曲2年連続2位を記録したBlueとの思い出
- 第32回:アダム・ランバートの歌声がクイーンの音楽を新しい世代に伝えていく
- 第33回:ジャスティン・ビーバーの新作『Changes』発売と初来日時の想い出
- 第34回:ナイル・ホーランが過去のインタビューで語ったことと新作について
- 第35回:ボン・ジョヴィのジョンとリッチー、二人が同じステージに立つことを夢見て
- 第36回:テイク・ザット&ロビー・ウィリアムズによるリモートコンサート
- 第37回:ポール・ウェラー、初来日や英国でのインタビューなどを振り返って
- 第38回:ザ・ヴァンプスが過去のインタビューで語ったことと新作について
- 第39回:セレーナ・ゴメス、BLACKPINKとの新曲と過去に語ったこと
- 第40回:シン・リジィの想い出:フィル、ゲイリーらとのインタビューを振り返って
- 第41回:クイーン+アダム・ランバート『Live Around The World』
- 第42回:【インタビュー】ゲイリー・バーロウ、7年ぶりのソロ作品
- 第43回:コロナ禍にステイホームで聴きたい新旧クリスマス・ソング
- 第44回:ジャスティン・ビーバー、成長が垣間見えた約3年ぶりのライヴ
- 第45回:アルバムが控えるポール・スタンレーとKISSの想い出を振り返って
- 第46回:コナン・グレイ、孤独の世界に閉じこもって生まれた音楽と希望の新曲
- 第47回:グレタ・ヴァン・フリート、“ツェッペリンらしい”と言われることを語る
- 第48回:クイーンの隠れた名曲:映画で彼らを知った人に聴いて欲しい楽曲
- 第49回:ブルー(Blue)「The Gift」の魅力:今も日本で愛される名曲の想い出
- 第50回:「ハイスクール・ミュージカル」シリーズとは?
- 第51回:ブライアン・メイ初のソロアルバムを振り返る
- 第52回:離婚を歌ったケイシー・マスグレイヴスが3年前に語っていたこと
- 第53回:ロジャー・テイラーのヴォーカルと楽曲
- 第54回:ABBAの新作と、“第2のビートルズ”と言われていた40年前
- 第55回:ザ・ウォンテッドの復活:休止前の想い出と最新インタビュー
- 第56回:アンとナンシーのウィルソン姉妹、ハートの想い出
- 第57回:80年代後半に活躍したグラス・タイガーを振り返る
- 第58回:ブライアン・メイのソロ2作目『Another World』を振り返る
- 第59回:ブライアン・メイ復刻盤『Another World』の聴き所
- 第60回:ポリスのドキュメンタリー『Around The World』とインタビュー
- 第61回:フィル・ライノットの生涯と音楽を振り返るドキュメンタリー映画
- 第62回:10代のジャネット・ジャクソンとのインタビューを思い返して
- 第63回:ブロンディのデボラ・ハリーとUK音楽シーンの女性達を振り返る
- 第64回:セバスチャン・イザンバールが語る新作や、故カルロス・マリンへの想い
- 第65回:クイーン『The Miracle』当時の想い出と未発表の新曲「Face It Alone」
- 第66回:『ビー・ジーズ 栄光の軌跡』で描かれる3兄弟と『小さな恋のメロディ』」
- 第67回:アリアナ・グランデとのインタビューを振り返って
- 第68回:サム・スミスの最新アルバム『Gloria』と初来日の時に語ったこと
- 第69回:ブライアン・アダムス、6年ぶりの来日公演前に最近の活動を語る
- 第70回:洋楽アーティストが歌う“桜ソングス”のおすすめ
- 第71回:The 1975、過去のインタビューからの発言集
- 第72回:『ガーディアンズ』新作とザ・ザのマット・ジョンソンとのエピソード
- 第73回:『ガーディアンズ』新作とザ・ザのマット・ジョンソンとのエピソード
- 第74回:50周年のエアロスミス、1988年の来日インタビューを振り返って
- 第75回:オリアンティとのインタビューを振り返る
- 第76回:クランベリーズのドロレス・オリオーダンとのインタビューを振り返る
- 第77回:オリヴィア・ロドリゴ、2ndアルバムへのプレッシャーを語る
- 第78回:ロビー・ウィリアムスのインタビューとテイク・ザットとの関係性
- 第79回:今年クイーンが出場するNHK紅白歌合戦
- 第80回:ボン・ジョヴィを後押しした日本のファンとバンドからの愛
- 第81回:クイーン+アダム・ランバート来日公演
- 第82回:『ロッキー』と『プリティ・イン・ピンク』のサントラを振り返る
- 第83回:ボン・ジョヴィのドキュメンタリーは私たちに贈られたアナザー・ストーリー
- 第84回:テイラースウィフト、来日公演と報道の仕方、そしてそばにいてくれる音楽
- 第85回:ボン・ジョヴィデビュー40周年のバンドによる新たなチャプター
- 第86回:29年振りの来日公演が迫るテイク・ザット
- 第87回:カントリーは再度音楽と向き合えるチャンスを与えてくれる