デビュー50周年のエアロスミス、1988年の来日インタビューを振り返って

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ラジオDJ、ライナー執筆など幅広く活躍されている今泉圭姫子さんの連載「今泉圭姫子のThrow Back to the Future」の第74回。今回は、今年デビュー50周年を迎え、最新のベスト・アルバム『Greatest Hits』を8月18日に発売、そして9月からフェアウェル・ツアーを発表したエアロスミス(Aerosmith)について寄稿頂きました。

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クイーン、KISS、エアロスミス

今月は、デビュー50周年を迎え、まもなく『Greatest Hits』をリリースするエアロスミスにスポットを当てます。エアロスミスは、9月からブラック・クロウズをサポート・アクトに迎え、フェアウェル・ツアーを敢行します。このツアーは、現在発表されている日程では、2024年1月26日のモントリオールまで続きます。KISSもフェアウェル・ツアーを終え、エアロもか、と寂しさが募りますが、クイーンが2024年2月に過去最大規模での来日公演を果たすのは嬉しいニュースです。

そうなんです。70年代のロック・シーンの一つの象徴として、クイーン、KISS、エアロスミスがいました。それぞれが絶大なる人気を誇っていた時代、新ロック・ジェネレーションを代表する3大バンドとして、彼らは新しいファン層を広げたのです。

歌えるロック、メロディアスなロック、ルックスも華やかで、ユニークで、エンターテインメントとしての楽しみもある! これぞロックといった世界観はもちろん、従来のロック・ファンだけでなく、ロック少女の胸をもときめかせたのです。《クイーン、KISS、エアロスミス》、この順番は、語呂がいいからなのか、自然にこう呼ばれていました。クイーン・ファンであった私も、華やかなロック・シーンのど真ん中で、この3組に夢中になった1人でした。

 

『Rocks』の衝撃

1976年に発売になったアルバム『Rocks』が、エアロスミス初体験となる作品でした。この年、クイーンは、『A Night At The Opera(オペラ座の夜)』に続く『A Day At The Races(華麗なるレース)』を発売し、キッスは『Alive!』が大ヒットし、『Destroyer(地獄の軍団)』から代表曲「Detroit Rock City」を生みました。すごい年だったんですね。

エアロスミスの『Rocks』は、「Back In The Saddle」「Sick as a Dog」といったロック・サウンドに加え「Home Tonight」といったロック・バラードを生みました。もちろん、このアルバムで洗礼を受けてからは、前作『Toys in the Attic(闇夜のヘヴィ・ロック)』を聴き、エアロスミスのスタイルは、このアルバムに凝縮されていることを知ったのです。

 

低迷からの復活

エアロスミスは、1977年に初来日しています。この時は、コンサートへ出向く友人を恨めしい気持ちで見送りました。その後1988年まで、エアロスミスが来日することはありませんでした。実は、『Rocks』の大成功があったものの、ここから彼らは過渡期に入り、なかなか抜け出せない状況が続きます。

追い打ちをかけるように、1979年にはジョー・ペリーが脱退し、1981年にブラッド・ウィットフォードも脱退。ギタリスト2人が不在という状態に陥り、『Rocks』を超えるヒット作を生み出すことができずにいました。ところが、1984年にジョーとブラッドがバンドに復帰、『Done with Mirrors』で気持ちを一つにし、1987年、ついにエアロスミス第2期の幕を開けることになった『Permanent Vacation』をリリースします。

ブルース・フェアバーンをプロデューサーに迎えたアルバム『Permanent Vacation』からは、「Dude (Looks Like a Lady)」「Angel」「Rag Doll」といったシングル・ヒットを生みました。ちなみに私は「Magic Touch」こそ、珠玉の名曲だと思っています。

アルバム・チャート・アクションは最高位11位でしたが、このアルバムが、エアロスミス復活を果たした名作であることは間違いありません。そして1988年、11年振りの来日公演が実現となりました。予定よりも30分延長しての2時間15分のコンサート。15年振りに演奏した曲もあり、彼ら自身も楽しんだ様子を、公演後のインタビューで答えてくれています。私にとってのエアロスミス初インタビューはこの時。スティーヴン・タイラーとトム・ハミルトンが応じてくれました。

 

1988年のインタビュー

日本のファンについてスティーヴンは、「日本のファンはわぁーっと騒いで、ピタッと静まる。一瞬焦って、何か俺が間違ったんじゃないかって心配した。でもいい意味で張り詰めた状態でいられたね。もし、エルヴィスが生きていて、今コンサートを開いたら、きっと同じようなファンの反応になるんじゃないかって思った。エルヴィスのファンは、彼が何を話すかを聞きたい。だから静まる。日本のファンもそれと同じ。僕たちを長い間待っていてくれた気持ちがよくわかった」とファンには嬉しい言葉が聞けました。

復活となったアルバム『Permanent Vacation』についてトムは「これまで、いろいろなプロデューサーと仕事をしてきた。プロもいたし、音楽を知らない奴もいた。ブルースは僕たちにとって新鮮なプロデューサーだったね。僕たちの音楽に真剣に取り組んでくれた」と。

そしてスティーヴンは「オリジナルの5人に戻って、それぞれの経験をここで生かしたかった。エアロスミスはタイトなバンドであることを証明したかった。ブルースも素晴らしかったけど、このアルバムの素晴らしいところは、バンドが強くなれたことだ」と語ってくれました。

アルバムの新たな試みの一つは、バンド以外のソングライターにアドバイスを求めたという点です。ホリー・ナイト、ジム・ヴァランス、デスモンド・チャイルドの名がクレジットされていました。

「ほとんど出来上がったものに、手を加えてもらった。“Rag Doll”は、“Rag Time”って歌っていたんだけど、今ひとつピンとこなくて、それでホリーに電話して、歌詞を聞いてもらった。彼女は、“Rag Time”よりも“Rag Doll”がいいってアドバイスしてくれた。その一言で“Rag Doll”は完成したんだ」とスティーヴン。

この時のインタビューでは、過去の自分たちを振り返ってこんな話もしてくれました。

スティーヴンは「昔の俺たちはドラッグ漬けだった。それでダメになってしまった。コカインをやると人生にスピード感があるように錯覚して、その結果ヴィジョンが狭くなってしまう。そんな時、友人に“お前はもうダメだね”って言われて愕然とした」。トムも「ミュージシャンはドラッグをやることで、いい音楽を作れると思い込んでいる。そういう生活に甘えている。でもそれが次には何もできなくなってしまうことになるのさ」と。

さらにスティーヴンは、「酒を飲んだ勢いで、女を口説くのと同じさ。勢いをつけないと何もできないって思い込んでいる。恥ずかしい気持ちになったり、怯えたり、恐れたりするのを隠す必要はないのさ」と発言。まさに、エアロスミスのメンバーの言葉だからこそ、重みを感じることができました。

最後に若手バンドへのメッセージはとスティーヴンに聞くと次のように話してくれました。

「形にはまったロック・バンドは消えていく。どんどん新しいものに飛び込んでいくバンドこそ、次のチャンスを与えられるんだ。スピリットとアティテュードをいつまでも持ち続けて欲しい」

その後のエアロスミスは、1989年に『Pump』、90年代に入って『Get A Grp』と大ヒット・アルバムを立て続けに連発し、黄金期を迎えます。

Written By 今泉圭姫子


エアロスミス 『Greatest Hits』
2023年8月18日発売
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⑤ 2CDGreatest Hits(1CD)+Live Best 1977 – 2016 Vol.2(1CD)*日本独自企画盤
⑥ 1CDGreatest Hits(1CD)


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今泉圭姫子(いまいずみ・けいこ)

ラジオDJ、音楽評論家、音楽プロデューサー
1978年4月、湯川れい子氏のラジオ番組「全米Top40」のアシスタントDJのオーディションに合格し、この世界に入る。翌年大貫憲章氏とのコンビでラジオ番組「全英Top20」をスタート。以来現在までにラジオDJ以外他にも、テレビやイベント、ライナー執筆など幅広く活動。また、氷室京介のソロ・デビューに際し、チャーリー・セクストンのコーディネーションを行い、「Angel」のLAレコーディングに参加。1988年7月、ジャーナリスト・ビザを取得し、1年間渡英。BBCのDJマーク・グッドイヤーと組み、ロンドン制作による番組DJを担当。
1997年、ラジオ番組制作、企画プロデュースなど活動の場を広げるため、株式会社リフレックスを設立。デュラン・デュランのジョン・テイラーのソロとしてのアジア地域のマネージメントを担当し2枚のアルバムをリリース。日本、台湾ツアーも行う。
現在は、Fm yokohama「Radio HITS Radio」に出演中。

HP:http://keikoimaizumi.com
Twitter:https://twitter.com/radiodjsnoopy
Radio:Fm yokohama「Radio HITS Radio」

 

 

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