来日直前サブリナ・カーペンター、今までの来日インタビューを振り返る

Published on

ラジオDJ、ライナー執筆など幅広く活躍されている今泉圭姫子さんの連載「今泉圭姫子のThrow Back to the Future」の第73回。今回は、2023年7月18日に東京・豊洲PIT、19日に大阪・Zepp Osaka Baysideにて来日公演を行うサブリナ・カーペンター(Sabrina Carpenter)ついて寄稿頂きました。

<関連記事>
17歳の新人、オリヴィア・ロドリゴがいきなり記録的ヒットになった理由
サブリナ、オリヴィアの記録尽くしの大ヒット曲へのアンサーソングを発表


 

2023年7月18日と19日、4年振りのジャパン・ツアーのために来日するサブリナ・カーペンター。その来日にあわせて、昨年リリースされた『emails i can’t send fwd:』が、日本独自企画盤として4曲のボーナストラックとフォト・ブックを追加し再編成して発売されます。

サブリナにとって、5作目に当たるこのアルバムには、タイトルが示すように、送る事ができなかったe-mailをテーマに、24歳になったサブリナの等身大の思いが歌われています。10代から20代へと突入する時を、自然体で受け止めたいと言っていたサブリナ。その大切な時期を、パンデミックによって止まらざるを得なくなりました。この時期に、彼女は、どのような心境の中で音楽と向き合ったのでしょうか?きっと、その答えは『emails i can’t send fwd:』に溢れているはずです。

サブリナは、過去の作品でも、その時の自分自身を反映させた作品を作ってきました。女優としての人気が先行し、同世代のロール・モデルとして注目されたサブリナ。2017年の初来日では、シンガーであるサブリナ・カーペンターの本気モードをインタビューで感じる事ができました。歌のうまい女優ではなく、シンガーとしての目標値が非常に高いアーティストであることを彼女の言葉から知る事ができたのです。

今回は過去3回に渡るインタビューから、サブリナ・カーペンターの魅力を改めて探ってみましょう。

 

2017年:POPSPRING 2017での初来日

2017年、5月の誕生日直前、17歳の時に『POPSPRING 2017』出演のための初来日では、

「到着した日は、ずっと寝ていたの。本当は本場のお寿司屋さんに行って、苦手なお寿司を克服するために、美味しいお寿司の食べ方を教えてもらおうと計画していたのに……夜中の3時に目が覚めて、しっかり時差ボケです」

と。そして、プロフィールに書かれているキャリアの確認!

「演技も歌も11、12歳の頃に、同時に始めて、歌手としては12歳でレーベルと契約したの。そして16歳でアコースティック・アルバム『Eyes Wide Open』をリリースして、セカンドの『EVOLution』では、もっと歌に貪欲になって、ソウルフルで、ポップがベースになっているサウンドに、自分の経験を歌にしたのよ。そして多くの人たちに共感してもらえるように作ったの」

タイトル曲は、ロマンティック・ポップに仕上げられています。

「とてもセンチメンタルな歌。人生は何が起こるかわからない、だから何があっても、流れるままに生きていく、という歌。きっとみんなが一度は経験したことのある事よ」

人生を語るには、まだ17歳のサブリナには早いのでは、と思ってしまいますが、その言葉と年齢との違和感を感じさせない不思議な魅力を感じました。そして、シンガーとしての自分の役割をしっかりと理解している、そんな印象を受けました。「しっかりしているわね!」と伝えると、

「それは嬉しい。ありがとう。私のモットーは行動すること。じっとしているなんてできない。若い時に生まれる考えや経験することを大切にしていきたいの。それを無駄にしたくないし、通り過ごしてしまいたくないから」

と、はっきり自分の意見を伝えていました。

「あと3年で20代。悲しい〜。10代のうちに、すべてのルールを破ってみたい(笑)」と17歳らしい、素直な言葉も聞かせくれました。

「シンガーとしての目標?  グレイトなシンガーになりたい。そして自分自身の音を持つこと。これってとても重要だと思うの。意味のあることを歌い、みんなに影響を与えられるシンガーになりたい」

と17歳のサブリナは語っていました。

 

2019年:単独公演での来日

そしては初来日から2年後、3枚目のアルバム『Singular: Act I』を引っ提げて、ジャパン・ツアーのために再来日した時にインタビューしました。前回、正しいお寿司の食べ方を学べなかったので、今回こそは、とチャレンジャーな気持ちを抱いての来日でした。まもなく『Singular: Act II』も発売ということで、2枚の作品の関連性について聞いてみました。

「元々は16曲入りの1枚のアルバムだったんだけど、今の時代、1枚に16曲は多いかなと思って、8曲に分けてみたの。そうすると、自分の気持ちがうまく8曲にまとめられて、2枚のアルバムとして意味のある作品に生まれ変わったの」

ツアーでは、『Singular: Act II』からも新曲として演奏。なかでも「Exhale」のパフォーマンスは素晴らしいものでした。キラキラ・ドレスから、スウェット姿に衣装替え。フードを被り、正面を向かず、ずっと横側をファンに見せてのパフォーマンス。何かを伝えたいという思いが、歌う前から伝わってきました。

「実はあの姿は、私のオフの姿。何もない時は、ジーンズにフードのスウェット。最後のステージは、それほど計算したものではないけれど、あの曲を歌うときに、キラキラした衣装はちょっと違うかなと思って。もちろんキラキラも私の一部だけど。人間はいろいろな側面を持っていていいと思うの。でも、あのステージのことをわかってくれて嬉しいな」

そして『Singular: Act II』は、意外にも、サブリナの内面をさらけ出す作品であったことがわかりました。

「『Singular: Act II』では、あえて傷つきやすい自分を見せているの。でも自信だってあるのよって伝えている。自信があるっていうと、性格的にも前へ前へで、派手な笑顔の人って思いがちだけど、それが自信を持つという意味ではなくて。自分の素の感情を見せることも、自信があるから見せられる。この2年間、自分の中でいろいろな事が起こって、人生って完璧じゃないって思ったの。それに向き合うのも怖かったけど、そういうことを見せるのも自信の表れかなと思う。こういう仕事をしていると、完璧な自分を求められるけど、そればかりじゃないんだよって、ファンと共に成長できたらいいなと思ってるの」

コンサートでは、新作を通して、サブリナの素の姿を余す事なく見せてくれました。

 

2019年:サマーソニック出演

そして4ヶ月後に、《サマーソニック》出演のため、3度目の来日を果たしたサブリナ。《ポップ・スプリング》に続いての日本でのフェス出演。とてもリラックスしていて、日本の夏を楽しんでいました。

「音楽は何も身にまとわなくても、素顔の自分、自分が考えていることすべてを表現できるよね。自分をさらけ出すことは、音楽を通すと、歌声に強さが生まれたり、自分が伝えたいことが明確になる。演技は、他の人の考えを形にするという違いがあるけれどね。でも、演技をすることで、感情表現は確実に豊かになっていると思う」

歌、演技の2つの表現方法をうまく消化し、シンガーとして成長した姿がありました。そして19歳のサブリナは、2年後の成人の年となる21歳について、こんなことを話していました。

「きっと20代になったら、意識して変えなくても自然に変化が生まれくると思う。当然それが作品に表現されるはず。ファンの人たちは驚くかもしれないけれど、私のファンはそういう変化も受け止めてくれると思う。アーティストとしての変化は、当然必要だと思っている」

この言葉を受けて、新作『emails i can’t send fwd:』を改めて聴くと、彼女の変化が、17歳の時にグレイトになりたいと言っていたサブリナが、その目標に向かって着実にステップアップしていることがわかります。「Nonsense」は、R&Bテイストのサウンドに乗って、「emails i can’t send」はエモーショナルに、語るように歌う2曲は新しいサブリナです。

21歳の、パーティーは、仲の良い友達と旅をしたい、と話していた4年前、パンデミックで旅はお預けとなり、どのような思いで21歳を迎え、そして24歳となった今を受け止めているのでしょうか? 10代の時でも人生は完璧ではないと考えるサブリナが、この数年、どのように歩んできたのかを、また彼女自身から聞いてみたいと思うのです。

Written By 今泉圭姫子



サブリナ・カーペンター『emails i can’t send fwd:』
2022年7月15日発売
国内盤CDiTunes Store / Apple Music / Spotify / Amazon Music / YouTube Music





今泉圭姫子のThrow Back to the Future』 バックナンバー


今泉圭姫子(いまいずみ・けいこ)

ラジオDJ、音楽評論家、音楽プロデューサー
1978年4月、湯川れい子氏のラジオ番組「全米Top40」のアシスタントDJのオーディションに合格し、この世界に入る。翌年大貫憲章氏とのコンビでラジオ番組「全英Top20」をスタート。以来現在までにラジオDJ以外他にも、テレビやイベント、ライナー執筆など幅広く活動。また、氷室京介のソロ・デビューに際し、チャーリー・セクストンのコーディネーションを行い、「Angel」のLAレコーディングに参加。1988年7月、ジャーナリスト・ビザを取得し、1年間渡英。BBCのDJマーク・グッドイヤーと組み、ロンドン制作による番組DJを担当。
1997年、ラジオ番組制作、企画プロデュースなど活動の場を広げるため、株式会社リフレックスを設立。デュラン・デュランのジョン・テイラーのソロとしてのアジア地域のマネージメントを担当し2枚のアルバムをリリース。日本、台湾ツアーも行う。
現在は、Fm yokohama「Radio HITS Radio」に出演中。

HP:http://keikoimaizumi.com
Twitter:https://twitter.com/radiodjsnoopy
Radio:Fm yokohama「Radio HITS Radio」

 

 

Share this story

Don't Miss

{"vars":{"account":"UA-90870517-1"},"triggers":{"trackPageview":{"on":"visible","request":"pageview"}}}
モバイルバージョンを終了