ブライアン・メイ初のソロアルバム『Back To The Light』、参加ミュージシャンと楽曲を振り返る

Published on

ラジオDJ、ライナー執筆など幅広く活躍されている今泉圭姫子さんの連載「今泉圭姫子のThrow Back to the Future」の第51回。今回は、リマスターや貴重な音源が追加されて発売されたブライアン・メイ初のソロ・アルバム『Back To The Light(邦題:バック・トゥ・ザ・ライト~光にむかって~)』について。これまでの連載一覧はこちらから

<関連記事>
ブライアン・メイが語る「ソロ曲にすることをフレディが祝福してくれた」
ブライアン・メイ、初ソロ作『Back To The Light』がリマスター&2CDで発売決定


 

1992年に発表されたブライアン・メイの初のソロ・アルバム『Back To The Light(邦題:バック・トゥ・ザ・ライト~光にむかって~)』が、発売30周年を迎えるに当たって、2021年最新リマスターとして生まれ変わりました。2枚組のデラックス・エディションのCD2には、「Out Of The Light」として、ギター・ヴァージョン、ライブ・テイクなどが収録され、ファンには嬉しいコレクターズ・アイテムとなっています。それはともかくとして、ここでは、このアルバムがリリースされた時代を振り返りましょう。

1991年11月24日、フレディ・マーキュリーが亡くなり、翌年の4月20日、ロンドン・ウェンブリー・スタジアムで追悼コンサートが行われました。多くのスーパースター達がクイーンの名曲を披露したこのコンサートで、ブライアンは「Too Much Love Will Kill You」を初披露しました。夜空に響く美しい旋律を聴きながら、この曲はクイーンの未発表曲として残されていたんだ、と会場でセンチメンタルな気分に浸っていたことを、今でも思い出します。そしてこの曲は、その年の9月にリリースになったブライアンのソロ・アルバム『Back To The Light』で、再び耳にすることになりました。

ブライアンが、クイーンのブライアン・メイではなく、1人の音楽を奏でるブライアン・メイとしてリリースしたこのアルバムは、ハードロック界の職人とも言えるミュージシャン、コージー・パウエル、ニール・マーレイ、ドン・エイリーらが参加するロック・アルバムに仕上げられました。ジョン・ディーコンが「Nothin’ But Blue」に参加しているのも嬉しかったですね。

またゲイリー・ティブスの名を見つけ、私は喜びました。彼はロキシー・ミュージック、アダム&ジ・アンツとして活躍したブロンドのハンサムなベーシストです。そして共作者の中にはコージー・パウエルの名もありました。

筆者とコージー・パウエル

コージーとの作品は、クイーンのブライアンとは違う、あらたなロックへの探究心が感じられ、新鮮でした。コージー・パウエルのスコンスコンドスンドスンと気持ちの良いダブルベースドラムが大好きな私は「Resurrection」を聴き、興奮したものです。ブライアンのソロ・ギターもここでしか聴けない、攻撃的な音を奏でています。

また「Love Token」には、コージー、ニール・マーレイが参加。ホワイトスネイク時代の2人にブライアンが加入したらこんな感じ?とワクワク想像してしまいます。

CD2の「Out Of The Light」に収録されている「Driven By You (Cozy and Neil Version ’93)」は、そんな3人のコラボが好きな私にとってはお宝そのものです。コージーは、その後ブライアン・メイ・バンドのメンバーとしてツアーに参加したり、ブライアンのセカンド・ソロ・アルバム『Another World』にも参加しましたが、1998年に交通事故で亡くなりました。『Another World』は、彼の最後のスタジオ作品となってしまいました。

「Too Much Love Will Kill You」は、『Back To The Light』の後に、再度耳にすることになります。フレディの生前の歌声に新たな息吹を吹き込み、1枚のアルバムに仕上げた『Made In Heaven』に収録されました。この中には、ブライアンのソロ、フレディのソロとして発表されていた曲があり、『Made In Heaven』を手にして初めて、クイーンとしてもレコーディングを試みていたことを知ったのです。「Too Much Love Will Kill You」は、ブライアンの歌声でも、フレディの歌声でも、それぞれの想いがしみじみと伝わる楽曲であることを改めて感じました。まったく別曲のように聴こえるのは、2人の魅力が最大限に生かされているからかもしれません。

最近のブライアンは、SNSでも活発な動きをし、発信力の高さに驚かされますが、彼は昔から多くのミュージシャン達と積極的に交流し、繋がりを大切にしてきました。1982年、ミルトンキーンズでのコンサートを見に行った際に、その時のサポートアクトの1組だったハートの翌日(翌々日だったか)のハマースミス・オデオンでのコンサートに飛び入り参加し、ファンを歓喜させました。伝説のコンサートをやったばかりなのに…。

ブライアンが登場することは、ミルトンキーンズ後のアン・ウィルソンとのインタビューで教えてもらったのですが、エネルギッシュなブライアンの活動に驚かされたものです。自分自身が大成功したアーティストであっても、刺激となる音楽に対して、常にオープンな気持ちで向き合うことができる人、それがブライアン・メイです。『Back To The Light』は、そんなブライアンの音楽愛に満ちたアルバムです。

最後に、『Back To The Light』の邦題『バック・トゥ・ザ・ライト〜光にむかって〜』のサブタイトル「光にむかって」を、当時縁があって命名させていただきました。ブライアンのギターの音色は、光となって、私たちにいつも寄り添っていてくれる、そんな思いを込めました。

Written By 今泉圭姫子



ブライアン・メイ『Back To The Light』
2021年8月6日発売
(国内盤CD発売は8月11日に変更)
国内盤2CD / 国内盤1CD / 2CD+1LP / LP


今泉圭姫子のThrow Back to the Future』 バックナンバー


今泉圭姫子(いまいずみ・けいこ)

ラジオDJ、音楽評論家、音楽プロデューサー
1978年4月、湯川れい子氏のラジオ番組「全米Top40」のアシスタントDJのオーディションに合格し、この世界に入る。翌年大貫憲章氏とのコンビでラジオ番組「全英Top20」をスタート。以来現在までにラジオDJ以外他にも、テレビやイベント、ライナー執筆など幅広く活動。また、氷室京介のソロ・デビューに際し、チャーリー・セクストンのコーディネーションを行い、「Angel」のLAレコーディングに参加。1988年7月、ジャーナリスト・ビザを取得し、1年間渡英。BBCのDJマーク・グッドイヤーと組み、ロンドン制作による番組DJを担当。
1997年、ラジオ番組制作、企画プロデュースなど活動の場を広げるため、株式会社リフレックスを設立。デュラン・デュランのジョン・テイラーのソロとしてのアジア地域のマネージメントを担当し2枚のアルバムをリリース。日本、台湾ツアーも行う。
現在は、Fm yokohama「Radio HITS Radio」に出演中。

HP:http://keikoimaizumi.com
Twitter:https://twitter.com/radiodjsnoopy
Radio:Fm yokohama「Radio HITS Radio」

Share this story


Don't Miss

{"vars":{"account":"UA-90870517-1"},"triggers":{"trackPageview":{"on":"visible","request":"pageview"}}}
モバイルバージョンを終了