セレーナ・ゴメス、BLACKPINKとの新曲と過去のインタビューで語ったこと【今泉圭姫子連載】
ラジオDJ、ライナー執筆など幅広く活躍されている今泉圭姫子さんの連載「今泉圭姫子のThrow Back to the Future」の第39回。今回は8月28日にBLACKPINKとの新曲「Ice Cream」が話題となっているセレーナ・ゴメス(Selena Gomez)。2010年、2011年の2回本人にインタビューした今泉さんに、新曲とともに彼女の過去の発言や楽曲について振り返っていただきました(これまでのコラム一覧はこちらから)
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セレーナ・ゴメスがBLACKPINKの新曲「Ice Cream」に参加したことが話題になっています。ガーリー・ポップの楽しさをカラフルな映像と歌声で表現し、聴いても、見ても、甘くて美味しい作品に仕上がっています。ほとんどが英語歌詞で制作されたこの曲は、セレーナとBLACKPINKの素敵なケミストリーを、世界中のファンにストレートに伝えることができたのではないでしょうか!
BLACKPINKのロゼは「私たちは以前からあなたの大ファンなので、本当に光栄です」とリモートでの動画で、セレーナに挨拶をしていました。セレーナも「こちらこそ本当に夢のような共演ができて嬉しいです」と。BLACKPINKのメンバーは、平均年齢23.5歳ですから、子供の頃にディズニー・チャンネルで活躍していたセレーナの姿を、多くの作品を通して見ていた世代。セレーナが、彼女たちにとっての憧れのスターであることは間違いありません。
女優、シンガー、そしてコスメ・ブランド「レア ビューティ」の起業など、充実したキャリアを積んでいる28歳のセレーナは、現状に満足することなく、ドラマ、映画、コラボレーションにも積極的にチャレンジ。20代で楽しめることはすべて、果敢に挑戦しているといった印象を受けます。
そんなチャレンジャーなセレーナだからこそ、シンガー・デビュー10年にして、新作『Rare』に収録されているシングル「Lose You To Love Me」が初の全米ナンバー・ワンに輝き、アルバムも『Stars Dance』(2013)、『Revival』(2015)に続いて、3作連続全米ナンバー・ワンといった快挙を成し遂げました。デビュー時の人気女優が歌っているという評価を払拭し、実力派シンガーを目指し、一歩一歩努力してきた結果が、シングル、アルバム1位という記録となったのです。
振り返れば、セレーナは華やかな道ばかりを歩いてきたわけではありません。全身性エリテマトーデス(SLE: systemic lupus erythematosus)と呼ばれる疾患にかかり、2015年には化学治療を受け、その後遺症のため翌年は活動を休止し、休養宣言もしています。病気との闘いは、彼女にとって大きな試練だったはずです。そしてジャスティン・ビーバーとの恋愛も、彼女が乗り越えなければならない壁の一つでした。そう言った状況の一つ一つを自分の中で受け止め、新しい自分との出会いを模索していくことが、セレーナの生き方なのかもしれません。
初めてセレーナにインタビューしたのは、女優からシンガーへの第一歩を踏み出した2010年、初来日前での電話インタビューでした。その時の印象は、17歳の女の子の可愛らしさを感じさせながらも、とてもしっかりした受け答えをし、すでに大人へと成長した人間性を感じました。7歳の時からショウビズの中で生きているのですから、自然と大人への道を、同世代よりも早く歩いていたということでしょう。セレーナのデビューは、ソロというよりも、セレーナ・ゴメス&ザ・シーン名義のバンド・スタイルでした。
「バンドとしてのデビューは、女優からキャリアをスタートさせたということが大きいかと思います。演技の世界では、作品を作り上げるのに、スタッフ、キャストと一緒に作り上げていくやり方なので、それを音楽に繋げたかったんです。一緒にツアーで回る人、一緒に自分の音楽に共感を持ってもらえる相手が欲しかったからです」
デビュー当時のセレーナのサウンドは、ロックからポップ、R&B、バラードまで幅広い音楽スタイルに挑戦していました。
「母が音楽好きだったので、彼女が聴く音楽に影響を受けたと言っていいかもしれません。フランク・シナトラからビートルズ、U2、コールドプレイ、テキサス出身だからカントリー・ミュージックもよく聴きます。シャナイア・トウェイン、リーバ・マッキンタイアが大好き。アルバムに収録されている“Falling Down”は、ゴーゴーズのジーナの作品ですが、ゴーゴーズも母からよく聴かされていました。そんな彼女の曲を歌えるのは、とても嬉しいです」
余談ですが、セレーナの名前はそんな音楽好きな母が、当時大人気だったメキシコ系アメリカ人シンガー、セレーナ(Selena)からつけられたという話があります。
この電話インタビュー後、2011年にプロモーションで初来日を果たしたセレーナ。2度目のインタビューも、しっかりした女性としての印象には変わりありませんでした。ショウビズを生き抜くための秘訣を聞くと
「朝起きたら、まず神様に感謝します。私がとても恵まれていることを忘れてはいけません。夢を実現させていることが当たり前だと思ってはいけないのです。そして家族、周りの人たちが応援してくれてることへの感謝も忘れてはいけません。毎日、毎日が新しいことを学ぶ日々です。その中から、自分がどういう人間なのかということを探っています。後悔しないように、毎日それを受け止めています」と。
真面目な、といえばその一言で片付けられてしまうかもしれませんが、セレーナは、子供の頃から自分を客観視できる能力を身につけ、どんな困難にも冷静に取り組んでいける力が潜んでいるのでしょう。『Rare (Special edition)』に収録されていた未発表曲「Feel Me」は、ジャスティンとの関係を歌っていると言われて話題になりました。彼女は、たくましく恋愛を消化できるタイプではなさそうですが、しっかり受け止めて判断することで消化していくタイプと言えるかもしれません。この曲はもう過去のもので、一つの楽曲として冷静に判断できるからこそ、世の中に送り出したのだと思います。
2016年の日本公演から4年が経ちました。多くのアーティストたちが公演を断念せざるを得ない状況の中で、セレーナは、ファンがワクワクするようなBLACKPINKとの共演を提供してくれました。今、多くの人たちが我慢の中での生活を強いられていますが、近い将来、雨上がりに見る虹のような希望の日が再びやってきた時に、BLACKPINKとセレーナの共演が舞台で見れることを楽しみにしたいと思います。
Written by 今泉圭姫子
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セレーナ・ゴメス『Rare (Special Edition)』
2020年7月22日発売
CD+DVD / iTunes / Apple Music /Spotify
今泉圭姫子のThrow Back to the Future』 バックナンバー
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- 第2回 :バグルス『ラジオ・スターの悲劇』
- 第3回 :ジャパン『Tin Drum』(邦題:錻力の太鼓)
- 第4回 :クイーンとの出会い…
- 第5回:クイーン『世界に捧ぐ』
- 第6回:フレディ・マーキュリーの命日に…
- 第7回:”18 til I Die” ブライアン・アダムスのと想い出
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今泉圭姫子(いまいずみ・けいこ)
ラジオDJ、音楽評論家、音楽プロデューサー
1978年4月、湯川れい子氏のラジオ番組「全米Top40」のアシスタントDJのオーディションに合格し、この世界に入る。翌年大貫憲章氏とのコンビでラジオ番組「全英Top20」をスタート。以来現在までにラジオDJ以外他にも、テレビやイベント、ライナー執筆など幅広く活動。また、氷室京介のソロ・デビューに際し、チャーリー・セクストンのコーディネーションを行い、「Angel」のLAレコーディングに参加。1988年7月、ジャーナリスト・ビザを取得し、1年間渡英。BBCのDJマーク・グッドイヤーと組み、ロンドン制作による番組DJを担当。
1997年、ラジオ番組制作、企画プロデュースなど活動の場を広げるため、株式会社リフレックスを設立。デュラン・デュランのジョン・テイラーのソロとしてのアジア地域のマネージメントを担当し2枚のアルバムをリリース。日本、台湾ツアーも行う。
現在は、Fm yokohama「Radio HITS Radio」に出演中。
HP:http://keikoimaizumi.com
Twitter:https://twitter.com/radiodjsnoopy
Radio:Fm yokohama「Radio HITS Radio」