テイラー・スウィフトの今までとこれから:過去インタビュー発言と新作『Lover』【今泉圭姫子連載】

Published on

ラジオDJ、ライナー執筆など幅広く活躍されている今泉圭姫子さんの連載「今泉圭姫子のThrow Back to the Future」の第25回は、2019年8月23日に自身7枚目のアルバム『Lover』を発売するテイラー・スウィフト。過去4回インタビューしたときのテイラーの発言から今作への変遷について執筆いただきました。
(これまでのコラム一覧はこちらから)


テイラー・スウィフトが、新作『Lover』を2019年8月23日にリリースします。昨年11月に、来日公演を行ったばかりのテイラーですが、早くも新作での活動をスタートさせました。パニック・アット・ディスコのブレンドンが参加した「ME!」に続くシングル「You Need to Calm Down」は、ホモフォビア(同性愛嫌悪)に対するテイラーのメッセージであり、彼女の言動に過剰に反応するメディアへの彼女の変わらない姿勢とも受け取れます。MVにはフィギュア・スケーターのアダム・リッポン、アダム・ランバートなど多くのセレブが出演し、仲違いを取り上げられていたケイティ・ペリーも、ハンバーガーの着ぐるみで登場。ポテトの着ぐるみのテイラーとハグをする演出が話題になりました。

6月1日、LAで行われたiHEART Radioのイベント「Wango Tango」に出演したテイラーを観たLA在住の通訳Sam Katsutaさんの話では、ステージ上はピンクで統一されていて、ファッションは虹色。そして薔薇のイメージを打ち出し、明るいテイラーが復活したとのことでした。その日は「Shake It Off」「Blank Space」「I Knew You Were Trouble」「Love Story」「Delicate」「Style」「We Are Never Ever Getting Back Together」「ME!」と全8曲披露したそうです。

Wango Tangoの様子 Photo by Sam Katsuta

前作『reputation』がリリースされた年は、ラジオDJとのセクハラ訴訟の真っ只中だったテイラー。SNSの投稿を全部削除したり、カニエ・ウエストとの問題を世の中がまだおもしろおかしく騒ぎ立て、彼女が言葉を発するたびに、お騒がせなイメージで片付けられていたような気がします。しかしセクハラでは勝訴し、無事にアルバムはリリースされ、発売初週に120万枚を突破するなど数々の記録を作り、東京で最終日を迎えたワールド・ツアーのチケット総売上は300億円という、アメリカ音楽史上最大の売上記録を作りました。

『reputation』での活動が大成功を収め、すべてのことを吹っ切って、新たな気持ちで未来に向き合うテイラーの明るさは、再びマックスになったのかもしれません。新作からの2曲を聴く限りでは、新しいテイラーは、すべての表現に楽しさをもって臨んでいると感じます。以前「Clean」という曲について話を聴いた時、彼女は「溺れて、やっと息ができたというイメージなんだけど、落ち込んだり、痛みを感じていたりする時、その痛みから逃げず、通り過ぎずにいることで、人は立ち直れるという歌なの」と話をしてくれたことがありました。今彼女は「Clean」で歌っているように、完全にさまざまなことを乗り越え、新たなステップを踏み出したのでしょう。

 

テイラーは、自分の恋愛経験を歌にしていると公言していますが、元ボーイフレンド達にとっては冷や汗ものかもしれません。テイラーだけでなく、アリアナ・グランデにしても『thank u, next』で大胆にも元彼たちを歌にし、立ち止まらず次に進むことを歌っていました。まさに今の時代の女子代表二人です。こういった歌には、単に元彼へのバッシングではないことを、女子ならわかっているはずです。

テイラーは「恋愛がインスピレーションなんだけど、人生について書く時は過去を振り返るというよりは、私がその瞬間に感じた気持ち、体験したことを書いているの。だから、今思っている感情を書くことによって、頭の中を整理することができるし、自分の助けにもなるわ。自分の曲を通して、みんなが不安になっている時、恋愛で落ち込んでいる時、失恋しちゃった時、傷ついてしまった時、そんな時でもひとりじゃないのよ、同じ気持ちの人がいるのよ、寂しさも、幸せな気持ちも、同じように感じている人がいるのよって言いたいの」とアルバム「Red」をリリースした時のインタビューで答えいました。こんな風に思っているテイラーだからこそ、世界中の女の子が彼女の歌を愛し、応援し、子供から大人まで共感するのでしょう。

テイラーの愛に対する表現は、最近の作品でもわかるように、さまざまな側面から表現していくようになりました。「You Need To Calm Down」で象徴されるように、テイラー流の愛の定義は、愛に素直であることがキーとなり、これからも多くの人たちの支えになっていくのではないかと思います。新作『Lover』は、自分を大切にしている人たちへのメッセージがたくさん込められているような気がします。ロマンスがテーマになっているそうですが、それはハッピーなものに限らず、人生を通して寂しさ、悲しみの中にあるロマンスもアイデアとなっているとのことです。

 

『Lover』のアルバム・ジャケットはピンク、青、イエローを基調にしたパステルなイメージ。以前色について聞いたことがあります。「レッドは私のカラー。冒険、そしてエキサイティング、刺激を受ける色ね。日本のイメージは、明るいピンクかな。そしてイエロー、日本にいるとなんだかマジックを感じるの。そういうイメージなの」と。『Lover』のアルバムの色をみると、テイラーには、なにかマジックが起こりそうな、そんな気持ちが生まれているのでしょうか?どんなマジックをテイラーは夢見ているのでしょう。

テイラー初来日時(2010年)

これまで4回ほどテイラーに会ったことがありますが、彼女はいつどんな時でも、プロフェッショナルな姿勢でしっかりと受け答えをします。それもいい加減な言葉を発することなく、的確でわかりやすいのです。来日のたびにテイラーについている通訳の松田京子さんは「テイラーは予定外のことが起きても、それを華麗に対応し、こちらがヒヤっとすることがあっても、本人は動揺を見せず、それを微塵にだすこともありません。心の中でいつも拍手、感動、リスペクトです」と。私はインタビューの時のテイラーしか見ることができませんが、東京ドームの公演前にご挨拶でお会いした時は、妙なぴりぴり感はなく、コンサートを楽しむ余裕さえ見せてくれる堂々とした姿でした。最近ぴりぴりの人が多いから、余計彼女のその姿に感動しちゃうのです。テイラーママにいたっては、バックステージ・ツアーと称して、ステージ裏を見学させてくれるほど。

2015年「The 1989 World Tour @東京ドーム」のバックステージ

「音楽をやっていなかったら?友達の部屋の模様替えが好きだからインテリア・デザイナーか小説家」と答えていたテイラー。今のテイラーは、音楽を通じて、小説を書き、アートもクリエイトしているから、すべてやりたいことはやっていますね。「10代からアルバムを出しているので、きっとファンの人たちは私の声の変化、サウンドの変化を一緒に感じてくれていると思うの。そしていつものように私の歌詞を聴いて、共感を覚えてくれる。それはいつまでも変わることのないことだと思うわ」テイラーにとって、20代最後のアルバムとなる『Lover』。29歳の彼女が何を思い、何を伝えていきたいのか、期待は高まるばかりです。

Written By 今泉圭姫子


テイラー・スウィフト『Lover』
2019年8月23日発売
CD&限定版 / iTunes


今泉圭姫子のThrow Back to the Future』 バックナンバー


今泉圭姫子(いまいずみ・けいこ)

ラジオDJ、音楽評論家、音楽プロデューサー
1978年4月、湯川れい子氏のラジオ番組「全米Top40」のアシスタントDJのオーディションに合格し、この世界に入る。翌年大貫憲章氏とのコンビでラジオ番組「全英Top20」をスタート。以来現在までにラジオDJ以外他にも、テレビやイベント、ライナー執筆など幅広く活動。また、氷室京介のソロ・デビューに際し、チャーリー・セクストンのコーディネーションを行い、「Angel」のLAレコーディングに参加。1988年7月、ジャーナリスト・ビザを取得し、1年間渡英。BBCのDJマーク・グッドイヤーと組み、ロンドン制作による番組DJを担当。
1997年、ラジオ番組制作、企画プロデュースなど活動の場を広げるため、株式会社リフレックスを設立。デュラン・デュランのジョン・テイラーのソロとしてのアジア地域のマネージメントを担当し2枚のアルバムをリリース。日本、台湾ツアーも行う。
現在は、Fm yokohama「Radio HITS Radio」に出演中。

HP:http://keikoimaizumi.com
Twitter:https://twitter.com/radiodjsnoopy
Radio:Fm yokohama「Radio HITS Radio」

Share this story


Don't Miss

{"vars":{"account":"UA-90870517-1"},"triggers":{"trackPageview":{"on":"visible","request":"pageview"}}}
モバイルバージョンを終了