今映画「ボヘミアン・ラプソディ」公開前に…

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ラジオDJ、ライナー執筆など幅広く活躍されている今泉圭姫子さんの連載「今泉圭姫子のThrow Back to the Future」の第16回。今回は海外では10月末、日本では11月9日に公開されるクイーンを描いた映画「ボヘミアン・ラプソディ」について。まだマスコミ試写会も行われていない段階ではありますが、クイーンを追い続けてきた今泉さんにこの映画への期待などを執筆していただきました(これまでのコラム一覧はこちらから)


 

いよいよ11月9日に公開になる映画「ボヘミアン・ラプソディ」。私の中でのカウントダウンも始まりました。早い?予告編がアップデイトされるたびに、ドキドキが止まらないのですが、映画の詳細を知りたい気持ちを抑え、ただその日を待っている毎日です。情報過多は、映画の楽しみを奪ってしまうから、と勝手に思い込んでいます。大好きな韓国ドラマは、すぐに最終回のストーリーを調べちゃったりするのに…きっとクイーンの映画はこうあって欲しいという理想があるからなのかもしれません。

今回原稿を書くことになり、初めて映画「ボヘミアン・ラプソディ」のさまざまな情報を目にすることになりました。映画の企画が上がった頃は、フレディ・マーキュリーの壮絶な人生が描かれるのではないか? 彼のプライベートが赤裸々に綴られるのでは? といった不安があったのですが、映画「ボヘミアン・ラプソディ」は、純粋に大英帝国が生んだ伝説のロック・バンドの軌跡が描かれていると知り、まずは安心しました。

メアリー・オースティンやジム・ハットンが配役されているので、ある程度フレディの私生活に触れられていることはわかりましたが、クイーン初期にフレディを支えてきたメアリー、そして亡くなるまでのパートナー、ジムの存在が、どのようにフレディに影響を与えてきたかを知るのは、ロック・バンド、クイーンを語る上では欠かせないものであることは十分承知しています。

フレディ役のアメリカ人俳優ラミ・マレックは、ロングヘアー時代のフレディによく似ています。そして話し方をとてもよく研究していて、フレディのロック・スターとしての堂々とした姿を見事に演じているようです。はい、予告編だけの感想ですが…。

そして何と言っても、ジョン・ディーコン役のジョゼフ・マゼロがよく似ていて、思わず顔がニマニマしてしまいます。楽曲「Bohemian Rhapsody」にオペラティックなコーラスを入れるシーン、そして6分の楽曲をシングルにする時のレーベルの拒否反応は、ファンにとってはお馴染みのエピソードですが、このシーンをクイーンという偉大なるバンドを詳しくはまだ知らない若い音楽ファンにとって、刺激的なエピソードになったらいいなと思っています。

しらさぎルック、ベロアの赤のジャケット、前身バンド、スマイル(Smile)にフレディが加入するいきさつ、短い予告編の中には、当時のクイーンをリアルに体験できる要素がいっぱい詰まっていました。ローリング・ストーン誌のインタビューでは、ラミがロジャーとブライアンに会い、二人からの話で「フレディはバンドの中での仲裁役だった」と聞かされたと発言していました。これは私にとっても意外な言葉で、バンドにとって、シンガーとしての役割だけではなく、どれだけフレディが大切な存在だったか、そして独特の絆があったかを知ることができました。きっと、映画の中でも知られざるエピソードが語られていることでしょう。フレディが出っ歯だったため、義歯をつけて発音の練習したとか、そういう情報はいらないのですが(笑)、予告編を見ただけでも、ラミの好演は間違いありません。

映画の公開に先立ち、サウンドトラックの情報が公開されました。10月19日に発売になる「ボヘミアン・ラプソディ」のオリジナル・サウンドトラックは、クイーンの楽曲を寄せ集めたベスト的な作品ではなく、映画の内容に沿った楽曲、未収録の楽曲などが収録されています。クイーンは、過去に映画「フラッシュ・ゴードン」の音楽を全面的に手掛け、オリジナル・アルバムとしてリリースしています。映画のセリフなども入り、サントラとしての要素に加え、それまでにないエレクトリックな音作りで、スペイシーなサウンドで作り上げられました。

映画への楽曲提供もあります。アメリカの人気TV番組「サタデイ・ナイト・ライヴ」のコーナーを1992年に映画化した「ウェインズ・ワールド」では、主人公のマイク・マイヤーズとダナ・カーヴィーとその仲間たちが車の中で「ボヘミアン・ラプソディ」のオリジナルを聞きながら、激しく歌マネをして話題となり、1976年リリース当時は全米9位だったのが、1992年に全米2位のリバイバル・ヒットにつながりました。

そういえば、映画「ボヘミアン・ラプソディ」にはマイク・マイヤーズが出演しています。どんなシーンに登場するのでしょうか?また、昨年公開になったアンセル・エルゴート主演の「ベイビー・ドライバー」には、「Brighton Rock」が使われ、時代を超えて、クイーンの楽曲がスクリーンにも登場。良い音楽は、流行りのサウンドとは関係なく愛されていることを実感するのです。

映画「ボヘミアン・ラプソディ」のサントラの中には、スマイル・ヴァージョンの「Doing All Right」が収録されています。スマイルは、クイーンの前身バンドで、ブライアン、ロジャー、そしてティム・スタッフェルによるバンドです。ティム脱退後にフレディが参加し、クイーンが結成されるのですが、「Doing All Right」はティムとブライアンの共作で、唯一スマイル時代の楽曲として、ファースト・アルバム『Queen(邦題:戦慄の王女)』に収録されました。

ティム・ヴァージョンは、1982年に発売になった『Gettin’ Smile』で発売になっています。ブライアンとティムの共作ナンバーとフレディのラリー・ルレックス時代の楽曲8曲を集めたクイーンの『In Nuce』は、なかなか貴重なCDとして世の中に出たので、それも合わせてチェックしてみてください。今回のサントラのヴァージョンは、オリジナルではなく、当時のヴァージョンを再現するために、50年振りにブライアン、ロジャー、ティムがアビーロードスタジオに集まり、あらためてレコーディングしたものだそうです。こだわりを感じて、嬉しい1曲になりそうです。そしてライヴ・エイドでのパフォーマンス5曲、ロック・イン・リオ、パリでのオーディオ初収録もあります。

映画「ボヘミアン・ラプソディ」公開後、クイーンがどのように生まれたのか、私が胸をときめかせたあの時代のように、クイーンの音楽に一人でも多くの人たちが興味を持ち、音楽の素晴らしさ、音楽がもつパワーを共感することができたら、きっと世界は変わることでしょう。11月9日まで、あともう少し!


クイーン『Bohemian Rhapsody (The Original Soundtrack)』
2018年10月19日世界同時発売
CD購入はこちら
先着特典:ジャケット絵柄の耐水耐光ステッカー

映画『ボヘミアン・ラプソディ』
2018年11月9日日本全国ロードショー
配給:20世紀フォックス映画
© 2018 Twentieth Century Fox
映画公式サイト


連載『今泉圭姫子のThrow Back to the Future』 バックナンバー


今泉圭姫子(いまいずみ・けいこ)

ラジオDJ、音楽評論家、音楽プロデューサー
1978年4月、湯川れい子氏のラジオ番組「全米Top40」のアシスタントDJのオーディションに合格し、この世界に入る。翌年大貫憲章氏とのコンビでラジオ番組「全英Top20」をスタート。以来現在までにラジオDJ以外他にも、テレビやイベント、ライナー執筆など幅広く活動。また、氷室京介のソロ・デビューに際し、チャーリー・セクストンのコーディネーションを行い、「Angel」のLAレコーディングに参加。1988年7月、ジャーナリスト・ビザを取得し、1年間渡英。BBCのDJマーク・グッドイヤーと組み、ロンドン制作による番組DJを担当。
1997年、ラジオ番組制作、企画プロデュースなど活動の場を広げるため、株式会社リフレックスを設立。デュラン・デュランのジョン・テイラーのソロとしてのアジア地域のマネージメントを担当し2枚のアルバムをリリース。日本、台湾ツアーも行う。
現在は、Fm yokohama「Radio HITS Radio」に出演中。

HP:http://keikoimaizumi.com
Twitter:https://twitter.com/radiodjsnoopy
Radio:Fm yokohama「Radio HITS Radio」

 

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