ディスコのミュージシャン達

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ラジオDJ、ライナー執筆など幅広く活躍されている今泉圭姫子さんの連載「今泉圭姫子のThrow Back to the Future」の第10回です。今回は、今年ディスコ40周年記念として発売される60曲を収録したコンピCD『Let’s Disco ~The Best OF Disco Hits~』収録曲の中から数曲ピップアップして語っていただきました。コラムの過去回はこちら


 

今年は、映画「サタデー・ナイト・フィーヴァー」日本公開40周年の年なんですね。私が湯川れい子先生のラジオ番組「全米トップ40」のアシスタントDJに応募し、6人のアシスタントのひとりとして番組に出演させていただいた年が1978年でした。そして番組主催の「サタデー・ナイト・フィーヴァー」試写会で映画を初めて見ました。ジョン・トラヴォルタも魅力的でしたが、イヴォンヌ・エリマンの「If I Can’t Have You」が大好きになりました。ディスコ40周年と位置づけしている1978年は、半人前以下の私ではありましたが、業界1年生になった年でもあります。

この年の夏、1ヶ月間夏季留学で初めてロンドンに行きました。まだ学生でしたが仕事も始めていたので、この貴重な1ヶ月間でスージー・クワトロ、シティ・ボーイ、ジャパン、バスコックス、999などにインタビューするという経験もさせてもらいました(パンク・グループとのインタビューのドタバタ劇はまたいつかお話します)。学生寮だったので、同年代の人たちと旅をしたり、ディスコにいったり、学生生活も楽しみました。ディスコでは、なぜかブロンディが大ブームで、必ず「Denis」が流れていました。私はどちらかというとスージー・スーが好きで、なぜアメリカ出身のデボラ・ハリーがイギリスでこんなに人気なのか、当時はわかりませんでした。ブロンディーは、翌年「Heart of Glass」で世界的なブレイクを果たしましたが、最初はイギリスから火がついたグループだったのです。『Let’s Disco ~The Best OF Disco Hits~』には、「Rapture」が収録されています。

1980年になると、イギリスではネオパンクと呼ばれるパンクの洗礼を受けた若者たちの新しい時代が到来します。それがニューロマンティック。ダンス・ミュージックとパンクのアティテュードをミックスし、華やかなシーンを生み出しました。そんなシーンの核となったのがデュラン・デュランです。彼らが最も影響を受けたのは、セックス・ピストルズデヴィッド・ボウイロキシー・ミュージック、そしてシックでした。ベースのジョン・テイラーは、「Le Freak(邦題:おしゃれフリーク)」を初めて聞いた時にショックを受け、自分で買ったレコードを持って、ドラマーのロジャー・テイラーの家に行き、一緒に聴いて「自分たちがやりたい音楽はここにある」と言ったそうです。この話は昨年日本武道館公演のために来日した時のプロモーション時、ロジャーが語ってくれました。そんな時代が基盤となりデュラン・デュランは誕生。そしてシングル「Reflex」で、憧れのアーティスト、ナイル・ロジャースがリミックスを手がけるという夢を叶えたのです。このリミックスをきっけに「The Wild Boys」、プロジェクト・グループ、パワー・ステーションで、よりガッチリとナイルをはじめバーナード・エドワーズ、トニー・トンプソンと仕事をすることにもなりました。「バーナードから直接ベース・プレイを伝授された」と興奮気味に話をしてくれたジョンの姿も思い出します。

ナイル・ロジャーズは昨年のデュラン・デュラン日本武道館公演にもスペシャル・ゲストとして出演しました。1996年JTスーパーサウンズで来日した際に、バーナード・エドワーズが来日中に亡くなるという悲劇に見舞われました。その時以来の武道館ということで、彼にとってもバーナードを思う1日になったようです。そして2011年ガンの手術を受けたナイルですが、来日時にはガン克服という嬉しいニュースも伝えられました。今はバーナードもトニーもいませんが、日本武道館のステージは、一瞬にしてディスコ・フロアーになった楽しいステージでした。ライヴ前、湯川れい子先生のインタビューに立ち会わせていただきましたが、とても穏やかなナイルの姿を見ることができたのは、そんな病との闘いを乗り越えた安堵感からだったのでしょうか?新作ももうすぐ出るよ、と言っていましたが、一応まだリリースになっていません。『Let’s Disco ~The Best OF Disco Hits~』には、「Le Freak」「Good Times」が収録されています。

ニュー・ロマンティックとは一線を画したグループといえば、アダム&ジ・アンツでした。デュラン・デュランやスパンダー・バレエ、ヴィサージ、ウルトラヴォックスとはちょっと違うカラーをもっていました。パイレーツ・スタイルで、アフリカン・ドラム・ビートを取り入れた新しいサウンドでした。ナイン・インチ・ネイルズのトレント・レズナーもファンだと公言しています。そんなアダム&ジ・アンツがアメリカ進出を試みた1981年、ロサンゼルスのグリーク・シアターでコンサートを行い、そのプロモーションでアメリカの有名な音楽番組「Solid Gold」に出演しました。アダムのアメリカ活動を追いかけるため、日本から「ミュージック・ライフ」の東郷かおる子さんたちと一緒に、コンサート、そしてテレビ番組を見学に行った私は、アダムが「Solid Gold」に出演するというだけで興奮気味なのに、司会がマリリン・マックーと大好きなアンディ・ギブ、さらに出演者はアダムの他にリック・ジェイムスだったので大興奮。「Super Freak」を生で聴くことができました(生というかパフォーマンスですが)。当時携帯の時代ではないので、インスタントカメラでパシャパシャ撮りましたが、紛失です(ため息)。さまざまな出来事を振り返るたびに、手元に何も残していないことにショックを覚えます。

アダム自身もファンク・ミュージックに影響を受けていたので、リック・ジェイムスに会えて大喜び。一緒に写真を撮っていました。リックは2004年に56歳の若さで亡くなっています。それにしても彼は大きな人でした。アダムと並ぶと、余計彼の背の高さに驚かされました。私は握手してもらうのがせいぜいでした。素行の悪さが取りざたされていましたが、そんな雰囲気はなく、存在感のあるエンタテイナーという印象でした。『Let’s Disco ~The Best OF Disco Hits~』には、もちろん「Super Freak」が収録されています。

『Let’s Disco ~The Best OF Disco Hits~』には、収録楽曲を見ていると、自然に口ずさめる曲が多く、当時の楽曲の素晴らしさがディスコという枠を超えても感じられます。私のAll Time Bestの1曲である、1977年5週間全米1位に輝いたエモーションズの「Best of My Life」が収録されているのも嬉しいです。会ったこともなければ、生で聴いたこともありませんが、今でも色褪せない素敵なポップスです。

ちなみに私は、ナイトタイムはディスコよりも、大貫憲章さんのロンドン・ナイト、伊藤政則さん、酒井康さんのヘヴィーメタル・ナイトにツバキハウスへ行くぐらい。ロンドンでは今はなくなってしまったランカスターゲートのディスコ、ヒッポドロームのフロアーで棒立ちになっているタイプでした。どちらかというとディスコ・ナンバーはポップスとして楽しく聴いていました。


『レッツ・ディスコ~ザ・ベスト・オブ・ディスコ・ヒッツ』 

2018.3.21 Release

~“DISCO FEVER 40 -Special Version” 1日限りの昼ディスコ !~

3世代ディスコ in DIANA(日比谷)開催!


連載『今泉圭姫子のThrow Back to the Future』 バックナンバー


今泉圭姫子(いまいずみ・けいこ)

ラジオDJ、音楽評論家、音楽プロデューサー
1978年4月、湯川れい子氏のラジオ番組「全米Top40」のアシスタントDJのオーディションに合格し、この世界に入る。翌年大貫憲章氏とのコンビでラジオ番組「全英Top20」をスタート。以来現在までにラジオDJ以外他にも、テレビやイベント、ライナー執筆など幅広く活動。また、氷室京介のソロ・デビューに際し、チャーリー・セクストンのコーディネーションを行い、「Angel」のLAレコーディングに参加。1988年7月、ジャーナリスト・ビザを取得し、1年間渡英。BBCのDJマーク・グッドイヤーと組み、ロンドン制作による番組DJを担当。
1997年、ラジオ番組制作、企画プロデュースなど活動の場を広げるため、株式会社リフレックスを設立。デュラン・デュランのジョン・テイラーのソロとしてのアジア地域のマネージメントを担当し2枚のアルバムをリリース。日本、台湾ツアーも行う。
現在は、Fm yokohama「Radio HITS Radio」に出演中。

HP:http://keikoimaizumi.com
Twitter:https://twitter.com/radiodjsnoopy
Radio:Fm yokohama「Radio HITS Radio」

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