オリヴィア・ロドリゴ初来日公演レポ:演技に裏打ちされた表現力と本物のミュージシャンシップ

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Photo by Jesse DeFlorio

オリヴィア・ロドリゴ(Olivia Rodrigo)が最新アルバム『GUTS』を引っさげて初の来日公演を2024年9月27日、28日に実施。この初日公演について、ライター/翻訳家の池城美菜子さんによるこのコンサートのオフィシャルレポートが到着。

あわせてこのコンサートのセットリストがプレイリストとして公開されている(Apple Music / Spotify / YouTube)。

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シンガーソングライターかつロックスター

背筋をまっすぐ伸ばし、スキップをしながらオリヴィア・ロドリゴが有明アリーナのステージを横切る。古今東西、ロックスターは星の数ほど生まれたけれど、これほどスキップが似合うロックスターはいないかも、と思う。

「初の東京公演だよ!」と、くり返し叫ぶオリヴィア。ステージの上では165センチの身長よりずっと大きく見え、生の歌声はいっそう力強く、ピアノの弾き語りもギターをかき鳴らす姿も様になる。ディズニー・チャンネル出身の俳優としてアイドル要素が強いのは事実だけれど、何よりも彼女はシンガー・ソングライターで、総合的にロック・スターだ。

2024年2月23日からスタートした『GUTS WORLD TOUR』はすでに終盤。2021年のデビュー作をプロモートする『SOUR TOUR』から公演数、地域、会場のサイズと大幅にアップしたにもかかわらず、昨年秋の時点でチケットの争奪戦のニュースが流れてきた。ツアーが始まると、アメリカの硬派な新聞から音楽メディアまで幅広く大絶賛されており、このツアーが日本に来るのが待ち遠しかった。一夜限りの予定だった東京公演も即完したため、すぐに追加公演も発表となった。

雨混じりの悪天候でも有明アリーナにはツアーTシャツやオリヴィアの好きな薄紫色を身につけたファンが押し寄せて、すべてが高揚していた。スパンコールのミニスカートがよく似合うオリヴィアと同世代の人から、親同伴のもっと若い人、それから意外と年季の入った洋楽ファンまで目についた。プロデューサーのダン・ニグロとがっぷり組んだ『GUTS』は、幅広い層にまで届いているのだ。

 

合唱率が高く観客席と近いショウ

19時5分、暗転。星形の下半分を切り取ったような、逆Vの字になっているステージの中央にオリヴィアが姿を現した。1曲目は、「bad idea right?」。ギタリストを2人配したバンドは、バック・コーラスを入れて7ピース。全員女性だ。続いての「ballad of a homeschooled girl」で、場数を踏んでいる凄腕を揃えているのがすぐに伝わってきた。

3曲目で早速「vampire」を投入。2023年を代表する曲になったので、合唱率がひときわ高い。逆V字のステージは花道がふたつとなり、より観客席と近くなる。ステージに一番近いアリーナ席前方はオールスタンディングになっていた。

『SOUR』からの「traitor」で8人のダンサーが登場。オリヴィアと揃いのダンスを踊るのではなく、パフォーミング・アートのような振り付けとメークで驚く。人種はさまざまだが、“かわいい”メーキャップを施していないあたり、オリヴィアからのメッセージが透けた。彼女はアメリカの中絶が禁止されている州ではコンドームを配り、人権団体に熱心に寄付をしている“アーティスト”なのだ。

 

感情の表現力と身体能力の高さ

出世曲「drivers license」はピアノに弾き語りで披露。「teenage dream」では、「19歳になる直前、大人になるのがすごく怖かったときに書いた曲なの。いまは21歳だから、18歳だった頃の自分に“大丈夫だよ“って伝えたい」と語った。赤ちゃんの頃からの映像をバックドロップで流し、観客を長いこと彼女を知っている気分にさせる。『GUTS』の魅力は、行間からあふれ出る感情の機微だ。日本盤の対訳をしながら、ふっと目頭が熱くなった「making the bed」は、ベッドを整えるという日常の行為に、「いまの状況になったのはほかでもない、自分が望んだから」とスターダムにいる悩みを重ね合わせて秀逸。この曲をベッドに見立てた台に寝そべったまま歌い上げて、身体能力の高さを示す。

ステージから姿を消したちと思ったら、アリーナ後方に現れ三日月のセットに向かう。彼女が座ると月がせりあがり、360度回転しながらそのまま「logical」と「enough for you」を歌った。多くのファンが彼女を間近に見られる気の利いた演出。月に座った姿が絵になり、2.5次元の世界に入り込めそうなのも強みだ。

ステージに戻り、アコースティック・ギターを鳴らすギタリストの隣に座り、「happier」などを繊細に歌い上げたのもよかった。ドリーミーなセクションからさらにしっとり歌い上げるセクションをつなげる構成で、観客は前のめりで彼女の歌声に耳を傾ける。

 

演技に裏打ちされた表現力と本物のミュージシャンシップ

衣装チェンジは4回。基本、ビキニトップとショートパンツの色を変えるだけなのだが、変化を伝えるには十分。最後は真っ赤なレオタードに着替え、炎を映し出すバックドロップの前にギターを抱えたオリヴィアが仁王立ち。ふたりのギタリストと一斉にギターをかき鳴らす様子は完全にロックコンサートだ。

「obsessed」で四つん這いになったあたりは官能的で、“かわいい人”からすぐに内面を含めて“美しい人”になってしまうんだろうな、と思った。その意味でも、初来日公演をキャッチできたファンは、オリヴィアの貴重な姿を目撃したことになる。クライマックスの「all-american bitch」の凛々しさは戦隊ヒーロー並み。曲間で「嫌なこと、嫌な人を思い出して、思いっきり叫んで見て!」と煽り、会場中が大絶叫になったのも楽しかった。

アンコールでは白いタンクトップとジーンズのショートパンツで登場し、「good 4 u」、「get him back!」を歌い切った。演技に裏打ちされた表現力と本物のミュージシャンシップが出会ったとき、何が起こるのかを体現しているのがオリヴィア・ロドリゴであり、少し空恐ろしい才能だと思いながら会場を後にした。

Written By 池城 美菜子 / All Photo By Jesse DeFlorio



オリヴィア・ロドリゴ『GUTS (spilled)』
2024年3月22日発売
CD&LP&Goods / iTunes Store / Apple Music / Spotify / Amazon Music / YouTube Music


オリヴィア・ロドリゴ『SOUR』
2021年5月21日発売
国内盤CD 6月2日発売
CD / iTunes / Apple Music / Spotify / Amazon Music / YouTube Music




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