04 Limited SazabysのGENとTOTALFATのBuntaが語るマシン・ガン・ケリー新作『Tickets To My Downfall』
2020年9月25日に発売されたマシン・ガン・ケリー(Machine Gun Kelly)の最新作『Tickets To My Downfall』。このアルバムは今までラッパーとして4枚のアルバムを発売してきた彼の初のポップ・パンク・アルバムとなり、自身初の全米アルバムチャート1位を獲得、ロック・アルバムとして約1年1か月振りの首位となりました。
このアルバムの国内盤の発売(12月9日)に合わせて、04 Limited SazabysのGENさんとTOTALFATのBuntaさんが対談。その模様を掲載します。
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――今日は、ポップパンクが背骨になったマシン・ガン・ケリーのアルバムを通していろんなお話を伺いたいと思って、日本のメロディックパンクを刷新し続けているおふたりに来ていただきました。まずざっくりとですが、今回の『Tickets To My Downfall』を聴いてどんなことを感じましたか。
GEN(04 Limited Sazabys):ここまでシンプルなポップパンクを鳴らすのは照れるものなんじゃないかと思っちゃうんですけど、純粋にポップパンクが好きなんだなって感じて、キュンキュンしちゃいましたね。ラッパーとして大成した人なのに全然ラップの要素が入ってこないくらいだから。
Bunta:(ラップの)スピットみたいな歌唱すら入ってこないもんね。ラップのフロウでポップパンクをやるんじゃなくて、純粋にポップパンクの譜割でしか歌ってないところに驚いたよね。トラヴィス(・バーカー/BLINK182)がプロデューサーで入ってるだけあってサウンドはBLINKっぽい部分が多いけど、それでも古いものにはなってないのが面白くて。
――その肝はどういうポイントなんでしょうね?
Bunta:基本は生音のバンドサウンドだけど、Bメロのハットだけ打ち込みが入ってるとか。細かいけど、随所にトラックミュージックの方法論が混ざってるんですよ。その辺りが、懐かしさと新しさの絶妙なバランスになってる気がします。ヒップホップのフィールを持ってポップパンクをやってたトラヴィスと、ラッパーでありながらポップパンクもルーツに持ってるマシン・ガン・ケリーだから作れた作品のような気がしますね。たとえば“all I know”にTrippie Reddをゲストに迎えても彼にラップをさせていないように、トラックミュージックの方法論もわかった上で純粋なポップパンクをやったらどうなるかっていうことなんでしょうね。
GEN:ラップさせてないし、ラップさせる気のない曲ですもんね(笑)。サビでもブリッジミュートかよっていう。
Bunta:ははははは! オケが全然変わんないもんね(笑)
――確かに。ループの中で聴かせるのも、トラックミュージック的な構造と言えますよね。ヒップホップの隆盛を経たからこその発想というか。
Bunta:そうそう。ABサビっていう型じゃなく、1ヴァース1フック、2ヴァース2フック、みたいな中でどう聴かせるかっていう緻密さは感じる。
GEN:ロックアルバムとして全米1位になったのも、そういうアップデートがあるからなんでしょうし。それに、懐かしさだけで終わらないのはサウンド面によるところが大きいと思うんですよ。特にギターかな? 今っぽいミックスがされてて。それこそラップミュージック以降なんでしょうけど、ギターがトゲトゲしてなくて、いい意味で軽い音に仕上げられてる。
Bunta:クラブミュージックで流れても違和感がない音の質感だよね。今はアメリカのメインストリーム自体がローを軸に考えてるわけで、そうすると、一見懐かしいポップパンクでもローがベースになる。それこそ最近のBLINKのアルバムを聴いてみても、昔ならもっとギターの歪みが前に出てたのが、今は低音の豊かさが顕著で。そういう面で現代的だよね。
GEN:そうなると、ヴォーカルのテンションも変化しますよね。メインのフックでも(歌が)高いところにいかないし、シャウトするような歌唱がない。実は低いキーのままっていうのも特徴ですよね。だけどメロディがいいからずっと聴けるというか。
――たとえばトラップの構造がわかりやすいですけど、ローを主体にするとギターの無駄な歪みを減らすことに繋がって、その分中域が広くなりますよね。そうなると、低いキーでもメロディが動けるっていう。
Bunta:そうそう。基本的にポップパンクってサビが高い音楽だったわけですよ(笑)。でもこのアルバムは、高いところに行かずともフックをちゃんと聴かせられてる。そこが新鮮ですよね。で、これくらい低いキーでやれるのは、マシン・ガン・ケリーがラップの方法論を理解してるからで。ラップだったらフックが低いのも当たり前だし、そのノリで歌もやってんじゃないかな。それこそトラップがそうですけど、ラップミュージックの構造がわかると声の広がりが違うよね。たとえばポスト・マローン聴いてると『声デカッ!』って思うんだけど(笑)、あれは従来のロックのサウンドだったらできない。ギターの音域とかがマスキングしちゃうから。そう考えると、今回のアルバムが上手いのはそこなんでしょうね。ギターの角を上手く逃して、相対的に歌を際立たせるっていう。
GEN:逆に言うと、今のラップミュージックを聴いてる人からすればギターがめっちゃ鳴ってるアルバムでしょうし。ラップミュージックをくぐった上でロックに戻ってくるっていう瞬間がたくさんある。
――ポップパンクを背骨にしつつもミクスチャーでもあるという音楽性はTOTALFATも04 Limited Sazabysも体現されてきたものだと思うんですが。ここまで話してきたことと自分達の音楽という視点で見ると、どういうことを感じますか。
Bunta:BLINK182とトラヴィスって、90年代から2000年代初頭のロック側からヒップホップ・クラブミュージック側に橋を渡してた存在で。そういうバックボーンが噛み合ってるから今回の作品があるんだろうし、だからTrippie Reddとかも『一緒にやりてえ!』って言ったはずで。で、TOTALFATもトラヴィスやBLINKの影響を受けてきた世代だから、J-REXXXやZeebraさんと一緒にやったりしながらポップパンクだけじゃない音楽性を広げていけたんですよね。なんなら、日本でやってる俺らのほうが二手も三手も先にポップパンクをいろんな音楽とクロスさせて、その面白さを証明してきた気もする(笑)。で、今は日本のさらに若い世代でも新しいミクスチャーが起こってきてるわけですよね。それもまた、俺らとしてはやりやすい環境になってるんですよ。たとえばCVLTEっていうバンドが釈迦坊主と一緒にやってたのも、こんなミックスがあるんだ?ってビックリするし。今は、日本も海外も音楽がフラットに混ざるようになってるのが面白い。
――GENさんはどうですか。
GEN:ミクスチャー観が拡大していく感じももちろん面白いんですけど、今回のマシン・ガン・ケリーのアルバムみたいに僕ら世代が聴いたら懐かしい音楽でも、今の十代が聴いたら「新しい!」って思う可能性も広がってると思うんです。今や十代のキッズはラップミュージックをメインに聴いてる時代ですし、僕も今のアメリカのキッズだったらラップをやってたはずで。でも、もし僕が十代でこのマシン・ガン・ケリーの新譜を聴いたら生粋のパンクキッズに仕上がっちゃうだろうなって。それこそストリーミングでなんでも聴けちゃう時代の中でいろんな音楽がフラットに混ざっていく流れも実感しつつ、懐かしいものが新しく響くっていうのも面白いことなんですよね。フォーリミもいろんなカルチャーを吸収してきたバンドですけど、自分達がキュンキュンした原風景を一番大事にし続けてるっていう意味では、今回のアルバムを聴いて嬉しい気持ちになりましたね。だって、この作品が実際にウケてるわけですから(笑)。
Bunta:それはデカいよね。だって全米1位でしょ。やっぱりコロナの拡大以降、求められる音楽も変わってきてるんだろうし。
GEN:それは絶対にありますね。深いところに入っていく音楽も染みるけど、それ以上に高揚感とかアッパーな気分が求められてる気がする。今わざわざ落ち込まなくてもいいんじゃない?っていうか……世界が病んでる最中ですけど、同じような闇を音楽から感じ取って安心するよりも、むしろアガれる音でワルガキしたいなって僕は思うし。逆に今の時代にフィットする音が、このアルバムのような気がします。
Bunta:それに、たとえばパンクでもヒップホップでも、極論はメッセージがあるかどうかだと思うんですよ。
――音楽性も根源も異なるけど、メッセージや精神性が問われるのは一緒ですよね。
Bunta:世の中が歪めば歪むほど、必然的にパンクとかヒップホップみたいに本来的にメッセージを持ってる音楽が強くなるはずなんです。逆に言えば、雰囲気だけの音楽は淘汰されていく。凄く本質的な流れになってきてると思うんですよね。心からの痛みを歌っている人達も今強くなっている最中だろうし、今こそポップな音楽でアグレッシヴに行く人達のタフさも求められているんだろうし……なんにせよ、コアがあるかどうかっていう部分が問われてる時代だと思いますね。
GEN:そもそもパンクはレベルミュージックですもんね。
Bunta:完全にそう。俺らがパンクに出会った頃って、ちょうどオールドスクールからニュースクールに移り変わる頃で。それこそBLINK182の後くらいだよね。で、マシン・ガン・ケリーもその時代の影響を受けてきたんだなってわかるし、彼はSleeping With SirensのKellinとフィーチャリングしてたこともあるくらい2000年代以降のポストハードコアとも共通点があるアーティストなわけで。
――クランクっていうジャンルに区分けされることもありましたし、ラッパーとして認識されていても、元々叫びを持っている人ですよね。
Bunta:そうそう。その強度があった上で、ヒップホップっていう黒人のカルチャーの中で認められてるのも凄いことじゃないですか。たとえばLogicはもう少しインテリな角度から行ってるけど、マシン・ガン・ケリーは完全にギャングサイドから行ってる。そっちサイドで認められてビッグになる人ってなかなかいないから。
GEN:で、そうやって認めさせた上でこんなにシンプルなポップパンクをやるのがヤバいですよね。だってラヴソングまで歌っちゃってるし。タフな闘いをしてきた結果として今こそ青春を表現できてる感じがめちゃくちゃカッコいい。XXXTentacionも、生きてたら今頃ポップパンクをやってたかもしれないなって。
Bunta:ああ、確かに。実際、最近はBLINK182をサンプリングしてるソロアーティストも増えてきてるしね。
――ラップミュージックのアーティストがトラヴィスをプロデューサーとして呼ぶことも増えてますよね。20年前にヒップホップのフィールをポップパンクに持ち込んだのがトラヴィスなわけで、ラップミュージックがロックのサウンドを求め始めた今の流れの中で、トラヴィスが橋渡しとして重宝されるのは非常に合点がいきますよね。
Bunta:時代背景もあって、ラッパーがギターのサウンドを必要としてる流れがあるし、その時代の変わり目にトラヴィスの需要が増えてるってことですよね。そもそも、トラヴィスは昔からDJと一緒にやりながらロックをガンガンMIXしてたし、トラヴィス自身のドラムも、ダンスミュージック的なアプローチをポップパンクに持ち込んでたんですよ。キックの位置とかハットの粒立ちとか……ダンスミュージックを理解してプレイできるロックのドラマーは実はそんなにいないから。トラックミュージックはBPMの縛りがあってループの中でどう見せるのかが重要ですけど、これだけシンプルなポップパンクでも現代的なエッセンスが満載っていうのはトラヴィスの説得力そのものですよね。
――おふたりはヒップホップやクラブミュージックもよく聴かれていると存じ上げますが、自分達にとって、そういう音楽とパンクの接続点はどんなところだと思います?
Bunta:たとえば一緒にクラブとかに行って、一緒に飲んだり楽しくなったりするじゃん? で、そうやって楽しくなったり盛り上がったりする音楽としてロックを聴きたい時もあって。好きなやつと出会うための遊び場所っていう意味では、同じところにある音楽だと思いますね。
GEN:わかります。僕が最初にポップパンクを好きになったのも、音楽としてはもちろん、ファッションとか遊び場の感覚もあったんですよ。ストリートの感覚って言ったらいいのかな? だから、ヒップホップやクラブミュージックもそういう部分で混ざってる感じですかね。
Bunta:一緒に遊べる友達がそこにいるから行くっていうか。友達にレゲエ好きなヤツがいたらレゲエも好きになるんだろうし、それもストリートっていう遊び場があるから混ざるもので。きっと、よく言う『ストリート』ってそういう流れだと思うんですよ。だってストリートってなんでもフラットに混ざれる場所だから。で、今はまたそういう流れが出てきてる感じがあるし、どんどん混ざれる時代になってきてるよね。
GEN:確かに、僕もヒップホップ畑の人から声をかけてもらうことは増えましたし。それこそ一緒に遊んでる友達との関係から始まるコラボレーションは面白いんですよ。
Bunta:ストリートって言葉通りの意味で言ったら街のカルチャーっていうことなんだろうけど、もっと言えば、たまたま出会ったヤツらと何かを生み出せる概念のことを指してるんだよね。で、MGKもトラヴィスもそういうストーリーの上で出会ってると思うんだよ。
GEN:そうですよね。
Bunta:今は人と人が知り合う場所がSNSとかになってるけど、基本的には、既に知っている人同士で情報を交換してるところで。だからそれがストリートと同じような偶発性とか面白さを発揮できるところなのかって考えたら、俺はそうでもないなあって思っちゃうんだよね。
GEN:それで言うと、今回のマシン・ガン・ケリーの作品って「なんとなくポップパンクをやりたいから」っていうものではないことが伝わるじゃないですか。なんとなくトラヴィスを呼んだわけじゃなく、まさに通ってきた道っていう意味でストリートを感じる。
Bunta:そうだね。ここまで当時のサウンドでやってる人って今はなかなかいないし。ある意味、BLINKが出てきた当時と通ずる空気が今にもあるのかもしれないし。
――BLINK182って、「What’s My Age Again?」のMVなども含めて、パンクを「おバカなこと」にした人達と語られがちじゃないですか。でも、当時の世紀末感や沈滞したムードに対して、自分達なりの解放宣言としてポップパンクを鳴らしたんだろうし、自由の体現としていろんな音楽を混ぜていたと思うんです。そういう意味で言うと、コロナ以降の逼迫した時代背景の中で改めてポップパンクを再定義するアーティストが増えても何もおかしくないですよね。
GEN:やっぱり僕がポップパンクを好きになったのって、おふざけ感が心地よかったんですよ。遊んでいいし、ふざけることも自分の主張なんだよっていう感じが好きだった。で、時代がこういう弾けた音楽を求めるのはある意味必然ですよね。たとえば最近は家にいる時間が長いからNetflixとかをよく観てますけど、今は特にパンデミックをモチーフにして終末観の強い作品が多い。まぁそれも好きですけど、でも、その後はやっぱり明るい方向に自分を逃したくなるんですよ。
Bunta:どっちかになってくるよね。時代をそのまま示唆した作品を作るか、自分で自分の天国を作るか。
――自分で自分の天国を作る。いい言葉ですね。それこそレベルミュージックがやってきた闘いの目的そのものですよね。
Bunta:俺らにとって怖くない場所を作るというか、争う必要がない世界を作るために闘ってきた音楽だから。TOTALFATとしても、絶望より明るい場所を自分達で作るんだっていう歌を作ってきたつもりですし。
GEN:深くまで病んだ言葉を紡いで共感を得るっていう発想もあるけど、まずは自分がアガって、いい状態をキープして生きていく歌を歌ったほうが健康的なのは言うまでもない。で、マシン・ガン・ケリーがこのアルバムでやったこともそれと同じだと思うんですよ。暗い言葉を吐くより、無垢だった自分が興奮した音楽達をもう一回やるんだっていう。
Bunta:このアルバムが出たことによって、俺らはやっぱり間違ってなかったって思えたしね(笑)。ポップパンクは『あの頃の音楽』じゃねえぞって。
――このアルバムは『Tickets To My Downfall』というタイトルじゃないですか。マシン・ガン・ケリーが、自分自身の生い立ちやコロナ禍も含めて落ちるところまで落ちた感覚が逆噴射して、なんとか人生の形を掴み直すために青春に遡ったところもある気がしますよね。何に感動して生きてきたのかをもう一度見つめ直さないと本当に死んでしまうっていう切実さが、この弾けっぷりには出ているというか。
Bunta:ルーツの大事さって、そこですよね。自分がどう生きてきたのかをちゃんと見つめ直すっていうことでもあるし、それがあるから自分が何者なのかを理解できるっていう。それが問われている時代でもあるかもしれないですよね。さっき話した、音楽のコアにあるメッセージがものを言うっていうのと一緒なんだろうし。
GEN:フォーリミとしても、これからの音楽の作り方をどんどんシンプルにしていきたい気持ちがあるんですよ。これだけ情報に溢れた世の中でシンプルにしていくことは勇気の要ることなんですけど。
――それはどうして考えたことなんですか。
GEN:大人になってきて、「こんなこともきるんだぞ」っていう勝負をしていてもしょうがないと思ったんですよ。前に使えなかった技を使うことを目的化するよりも、曲やメッセージの部分が刺さるかどうかが大事なのは言うまでもない。新しい技を覚えていくことだけに喜びを見出すようになると、それはもうアスリートの発想ですよね。アスリートのカッコよさもあるけど、ロックバンドはあくまでも自分がキュンとくるかキュンとこないかの青臭いところにいたいんですよ。Buntaくんはどう思います?
Bunta:俺らの場合は、シンプル化しつつも進化してるのがわかるようになってきてるんだよね。元々4人だったのが3人になって、Kubotyがいたところを3人で埋めていくっていう発想がまた新しい進化を呼んでる気もする。前よりもコーラスが増えてるし、俺もコーラスをするようになって。前なら歌のことを考えたこともなかったのに、スピッツを聴いて下ハモを練習するようになったりさ(笑)
GEN:ははははは! 最高じゃないですか。でも、TOTALFATって音楽的にめちゃくちゃ豊富ですけど、バンドをやるっていうことに対してはシンプルな感じですよね。何度でも1年生からスタート!みたいな。
Bunta:確かに、何回1年生やるんだよってのは思う(笑)。でもそれが面白いんだよね、何度も再構築しながら、人と一緒に面白いものを作るためにリスタートする。だから、新しい武器を増やしてるっていうよりも、何回も『元々持っていたもの』に気づいていく感じかな。
――お二人に対してこう言うのもどうかと思うんですが、ポップパンクってどうしても懐古的なジャンルになりかけているじゃないですか。それをどう更新していくのかっていう部分にもかかるお話だと感じました。
GEN:やることはシンプル化したいんですけど、音楽的な素養とか立ち位置に関してはもっと複雑化したいと思っていて。どのシーンでも動ける自分でありたいけど、自分がロックバンドでやるならこれ!っていうのは研ぎ澄ませたい。どんなにロックバンドが劣勢と言われても、別に負けてるとも思ってないんですよ。どんなラッパーのライヴを観ても、ロックバンドのライヴほどテンションが上がったことはないから。外国のラッパーの来日ライヴでも、本物だ!っていう興奮はあったとしてもロックバンドみたいに熱量で興奮することはないんです。お客さんだって、写真撮ってInstagramやってる人がほとんどじゃないですか(笑)。セールスとかは負けてるかもしれないけど、音楽として負けてると思ったことはないですね。
Bunta:間違いない。GENはさ、それくらいデカいスケールを沸かしてる自信もあると思うんだよね。これだけの味方がいるっていうのを信じて大事にできてるヤツらは強いから。今まで通りのパンクロックをいままで通りに貫くためにどうしていくのか。それを考え続けたいですね。
GEN:ポジティヴなバイブスを維持し続けるためには、自分を磨き続けるのが大事じゃないですか。何もできなかった日はやっぱり罪悪感が溜まって落ち込みやすいし。いろいろ考え過ぎることなく、自分で対処していくこと。それが僕らにとっての音楽だよなって改めてコロナ禍に思いましたね。
――では、最後にお二人の一番好きな曲について語っていただければと。
GEN:僕は「forget me too」ですかね。Halseyが入ることによって生まれるParamore感と、ビートが気持ちいい中で少しだけラップっぽい譜割も入ってきてて。静かに始まって疾走していく時に、歌い出しでマシン・ガン・ケリーが<Damn>って言うんですけど、その「行くぞ感」が半端なくキュンキュンきちゃって(笑)。で、サビでハーフの縦ノリになるところ。その展開って、言ってみればBLINKもNEW FOUND GLORYもやってたベタなセオリーじゃないですか。それを恥ずかし気もなくやってくれて、やっぱ行ってくれるよね!みたいな。ベタなんだけどベタじゃない感じがある。
――超ベタだけどHalseyの声が上を飛んで行くところで一気に景色が変わるし、その爽快感ったらないですよね。
GEN:そうそう。サウンドも現代的だし、セオリーと現代解釈があるのが面白いですね。Buntaくんはどの曲が一番好きなんですか?
Bunta:俺は「concert for aliens」だね。本当にBLINKを聴いてる感覚になるっていうか。この作品がリリースになる前に先行で配信された曲のうち「concert for aliens」をよく聴いてたんですよ。アルバムに向けてワクワクする展開っていうか、MGKなのにこんな曲入ってるんだ?っていう気持ちになったのが「concert for aliens」で。
――リリックも今作のタイトルを象徴するラインまみれですね。<My life is a roller coaster><Get me off this roller coaster/I’m in too deep>っていう。
Bunta:そうそう。コロナ禍にも通ずる気持ちが出てるっていうか。で、<I’m falling>のリフレインのところがマジでBLINKっぽいし、「Feeling This」のサンプリングみたいなフレーズもあって。ミックスとかも当時のBLINKに寄せてそうだし……俺の好きなトラヴィス感が満載なのがこの曲で、一番好きですね。この曲聴くときゅんとしちゃいますよね、フィルとかもトラヴィス印があるっていうか。細かいところまで意識が行き届いてるっていうか、キメ細かいんですよねえ。
――たとえばHalseyはParamoreからの影響を公言していますけど、長らく男性優位でマッチョだったパンクやEMOのシーンを女性としてぶち抜いたのがParamoreなわけで、その血を受け継いだ世代のアーティスト達が今、女性の強さを提示して歌っているのも合点がいく。そのひとりであるHalseyと直球のポップパンクをやるっていうのは、精神性としてポップパンクを2020年に位置付けることだと思うし。
Bunta:ああ、確かに。
――なおかつYUNGBLUDとThe UsedのバートともにFALL OUT BOYの“Dance, Dance”を引用するのは、ポップパンクにソウルやR&Bを持ち込んだバンドの楽曲を、ラップミュージック以降のロックスター像と2000年代初頭のポストハードコアの流れを線にして再解釈するっていうことになる。もの凄く緻密に2020年のポップパンクをやってるアルバムですよね。
Bunta:そういう意味でメッセージ性が強烈にある作品ですよね。最近で言ったらJxDNっていうアーティストとトラヴィスが一緒にやってるし、またユースのものとしてポップパンクが再定義されて行くのはめちゃくちゃいいことですよね。……ま、JxDNのMVで出てくる部屋にBLINKのポスターが貼ってあったのは「ヤラセ過ぎるでしょ」って思ったけど
GEN:はははははは! その辺もトラヴィスぽいってことで(笑)
Interviewed by 矢島大地 (MUSICA)
マシン・ガン・ケリー『Tickets To My Downfall』
2020年9月25日発売 / 国内盤CD 12月9日発売
国内盤CD / iTunes / Apple Music / Spotify
TOTALFAT『WILL KEEP MARCHING』
2020年8月21日発売
iTunes / Apple Music / Spotify / Amazon Music
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04 Limited Sazabys「Jumper」
2020年2月21日発売
iTunes / Apple Music / Spotify / Amazon Music
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