【全曲解説】映画『ワイルド・スピード/ファイヤーブースト』サウンドトラック【動画付】
2023年5月19日に日本を含めた全世界の劇場で公開されたシリーズ最新作『ワイルド・スピード/ファイヤーブースト』。作品のスケールと同じく、毎回そのサウンドトラックも話題となっている。
この記事では、映画公開にあわせて発売となる『ワイルド・スピード/ファイヤーブースト』サントラ国内盤CDに収録される全15曲について、音楽ライターの渡辺志保さんに解説いただきました。
また映画公開にあわせて“ワイスピ・サーガ”の楽曲を新作からまとめたプレイリストも公開中(Apple Music / Spotify)。
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1. Kodak Black & NLE Choppa (feat. Jimin of BTS, JVKE & Muni Long)「Angel Pt. 1」
2019年にリリースした「Shotta Flow」が瞬く間にプラチナム認定され、次世代ラップスターとして圧倒的な人気を誇るNLE・チョッパー。彼のYouTubeチャンネルでトレイラーが公開されたこの「ANGEL PT.1」だが、その話題はすぐにSNS上を独占。
なぜならケンドリック・ラマーのアルバム『Mr.Morale & The Big Steppers』にも参加した札付きのラッパー、コダック・ブラック、「Hrs & Hrs」のヒットでも知られる注目シンガーのマニー・ロングに加えて、藤井風とのコラボ曲でも話題になったシンガーソングライターのJVKE(ジェイク)、そしてなんとBTSからJIMINが参加しているのだ。前代未聞のビッグ・コラボが実現した『ワイルド・スピード/ファイヤーブースト』ならではの一曲。
2. YoungBoy Never Broke Again, Dermot Kennedy & Bailey Zimmerman「Won’t Back Down」
2022年だけでも1作のアルバムと4作ものミックステープを発表し、常にストリートを騒がせているラッパーのヤングボーイ・ネヴァー・ブローク・アゲインがリードを取る『ワイルド・スピード/ファイヤーブースト』の鍵ともなる本曲。
ボロボロになるまで挫折を味わいながらも決して屈しない姿を歌い、さらに家族についても触れるリリックは、映画本編のシチュエーションともリンクし、さらにエモーショナルな響きを持つ。印象的なコーラス部分を歌うのは、シングル「Rock and A Hard Place」が全米を席巻している人気カントリー歌手のベイリー・ジマーマンと、母国アイルランドでは“今世紀最も売れたデビュー・アルバム”に認定された『Without Fear』でお馴染みのシンガーソングライター、ダーモット・ケネディの二人。
劇中でも、クライマックスに近づく“ここぞ”というシーンで本曲が流れ、作品を締めくくるエンドロールでもこの曲がドラマチックに響き渡る。それぞれ異なるバックググラウンドを持つ実力派アーティスト3名が織りなす、新たなワイスピ・アンセムの誕生だ。
3. Jessie Murph「Nothing Else Matters」
アラバマ生まれの新生ポップスター、ジェシー・マーフ。TikTokやYouTubeにアップしたカヴァー動画が話題となり、瞬く間に大きな注目を浴びるようになった。2021年にコロンビア・レコーズとディールを交わし、見事メジャーデビュー。2023年に1stミックステープ『drowning』を発表している。
感情的に訴えかけるようなハスキー・ヴォイスがジェシーの魅力。本曲では、壮大なストリングスに負けない力強い歌声でリスナーを魅了する。
4. 24kGoldn, Kane Brown & G Herbo「My City」
世界中でヴァイラル・ヒットを記録した「Mood」で日本のリスナーにもお馴染みであろう24kゴールデン。西海岸生まれで、名門大学に入学し、その後中退するという経歴を持つ。
ポップな切り口も得意とする24kゴールデンとタッグを組んだのは、人気オーディション番組への出場経験も持つ人気カントリー歌手のケイン・ブラウン、そして、チーフ・キーフやリル・ビビーらとともにシカゴの街をレプリゼンとし続けてきた人気ラッパーのG・ハーボの二人だ。
5. María Becerra「Te Cura」
2000年にアルゼンチンで生まれたマリア・べセラ。歌手を目指す前、わずか12歳の時にSNSで発表した動画が注目を集め、YouTuberとして活動をスタートしたという経歴を持つ。
2019年にデビューEP『222』をリリース以降、これまでにJ・バルヴィンとの「Qué Más Pues?」や、カミラ・カベロとの「Hasta Los Dientes」など、豪華アーティストとのコラボ曲も度々話題に。ラテン界を代表する新たなスター・シンガーとしてのキャリアを着々と歩んでいる。
6. Lil T Jay, Fridayy & Khi Infinite「Countin’ On You」
リル・ティージェイは、ニューヨークはブロンクス生まれ、少年院に収監された際にリリックを書き始めたというバックグラウンドを持つラッパー。本曲でも、彼の持ち味であるメロディアスなフロウを存分に活かしている。
ともに参加しているシンガーのフライデーは、リル・ベイビーやDJキャレドらの楽曲へもフィーチャーされている気鋭のアーティスト。加えて、カイ・インフィナイトも同郷の先輩、プシャ・Tらのフックアップを受ける注目のシンガーだ。
7. Lil Durk (feat. EST Gee)「Spinnin’」
シカゴのドリル・ラップ・シーンを率いる存在であり、ハードでタフなビートからメロディアスなコーラスまでを乗りこなす人気ラッパーのリル・ダーク。カントリー歌手のモーガン・ウォーレンとのコラボ曲も話題になった7thアルバム『7220』は、発売初週に米ビルボード・チャート1位をマークした。
フィーチャリング・アーティストとして参加しているEST・ジーは、5発の銃弾に撃たれたという経験を持つラッパー。タフなスタイルを得意とし、2022年にメジャーデビューを果たした。
8. J Balvin「Toretto」
まさにワイスピ・シリーズのヒーローとも言うべきドミニク・トレットのテーマ曲とも言える一曲。歌うのはコロンビア出身で、“プリンス・オブ・レゲトン”の異名を持つJ.バルヴィン。
2017年に発表した「Mi Gente」のMVは、現時点でYouTubeの再生回数32億回を超えるほどのモンスター・ヒット曲。バッド・バニーとともに参加したカーディ・Bのヒット曲「I Like It」での歌声を覚えている人も多いはず。
9. BIA「Furious」
元々はファレル・ウィリアムズ主宰のレーベルにも所属していたビア。2021年にシングル「WHOLE LOTTA MONEY」がヴァイラル・ヒット。その後リリースされたリミックスにはニッキー・ミナージュをフィーチャーし、J.コールとのシングル「LONDON」も話題に。
ソーシャル・メディア上でも強固なファンベースを誇り、常にトレンドセッターとしての役割も果たす注目のフィメール・ラッパーだ。
10. Justin Quiles, Dalex & Santa Fe Klan「Sigue La Fiesta」
まるでカーレースのような熱気をはらむレゲトン・バンガーに参加しているのは、アメリカで生まれ、のちにプエルトリコへ移りシンガーとしてデビューしたという経歴を持つジャスティン・キレス。2021年のアルバム『La Última Promesa』はプラチナム認定を受けるヒットに。
加えて、シルキーな歌声が魅力的なレゲトン・シンガーのダレックス、そしてメキシコ生まれのラッパー/シンガーのサンタ・フェ・クランの3名。
11. Skrillex (feat. Ludmilla, King Doudou & DUKI)「Vai Sentando」
世界中のフェスを盛り上げてきた名DJのスクリレックス。今回、彼がコラボ相手に選んだのはリオ・デ・ジャネイロに生まれ、Spotify上では10億界以上の再生回数を誇るほどの人気の女性シンガー、ラジミーラ。
加えて、レゲトンやベース・ミュージックを世に送り続けてきたフランスのトラックメイカーである、キング・ドゥドゥと、ラテン・グラミー・アウォードにもノミネート経験があるアルゼンチン出身の人気歌手/ラッパーのデュキ。レゲトンをベースにしたヘヴィなビートに仕上がっている。
12. Kordhell & Key Glock「9 In My Hand (Fast X Remix)」
サウンドクラウドなどのネット上でも大きな盛り上がりを見せてきた音楽ジャンル、フォンク(FONK)。主にメンフィス周辺のヒップホップ・サウンドに影響を受けたジャンルだが、今作ではフォンク・シーンのプロデューサー/DJのコーデルが、メンフィスの人気ラッパー、キー・グロックのラップを大胆にフォンク調に仕上げている。『ワイルド・スピード/ファイヤーブースト』の世界観とも重なるような、複雑な展開を含むアグレッシブなリミックスだ。
13. Daddy Yankee (feat. Myke Towers)「Gasolina (Safari Riot Remix)」
現在に続くレゲトン・ブームの礎となったのが、“キング・オブ・レゲトン“ことダディー・ヤンキーのこの曲ではないだろうか。オリジナル版は2004年に発表され、10カ国以上のチャートにおいてTOP10入りを果たした。
今回は、オスナやアヌエルAAら名だたるレゲトン・アーティストらと共演してきた人気ラテン系ラッパーのマイク・タワーズを迎え、世代を超えたリミックスに仕上がっている。
14. ANNA (feat. MadMan & Gemitaiz)「Bando (Fast X Remix)」
新作が発表されるたびに、どんどんワールドワイド&アクロバティックな展開を見せるワイスピ・サーガ。この曲ではイタリアを代表する注目のラッパー3名が集結。もともと、アンナのソロ曲として2020年にリリースされた「Bando」だが、そこにマッドマンとジェミタイズが参加したリミックスが登場した。
今回は、原曲のビートを活かしつつさらにディープなサウンドへと変貌を遂げたバージョンに。
15. Doechii「Crazy (Safari Riot Remix)」
ケンドリック・ラマーやSZAを輩出した西海岸の名門レーベル、TDEに所属する注目のアーティストがこのドーチーだ。規定の枠に捉われないアグレッシヴでクリエイティヴなスタイルを得意とし、2023年には米ビルボードが主宰する「Women in Music」においてライジング・スター賞を受賞。
元々は2022年に発売された彼女の人気曲「Crazy」を、スペシャルな『ワイルド・スピード/ファイヤーブースト』仕様にリミックスしたのが本楽曲。(編註:この曲は日本盤CDのボーナストラック)
Written By 渡辺志保
『ワイルド・スピード/ファイヤーブースト オリジナル・サウンドトラック』
Fast & Furious / Fast X Original Sound Track
2023年5月19日発売
日本版CD(ボートラ1曲追加)
iTunes Store / Apple Music / Spotify / Amazon Music / YouTube Music
<国内盤CD収録楽曲>
1. Angel Pt. 1 – Kodak Black & NLE Choppa (feat. Jimin of BTS, JVKE & Muni Long)
2. Won’t Back Down – YoungBoy Never Broke Again, Dermot Kennedy & Bailey Zimmerman
3. Nothing Else Matters – Jessie Murph
4. My City – 24kGoldn, Kane Brown & G Herbo
5. Te Cura – Maria Becerra
6. Countin’ On You – Lil T Jay, Fridayy & Khi Infinite
7. Spinnin’ – Lil Durk (feat. EST Gee)
8. Toretto – J Balvin
9. Furious – BIA
10. Sigue La Fiesta – Justin Quiles, Dalex & Santa Fe Klan
11. Vai Sentando – Skrillex (feat. Ludmilla, King Doudou & DUKI)
12. 9 In My Hand (Fast X Remix) – Kordhell & Key Glock
13. Gasolina (Safari Riot Remix) – Daddy Yankee (feat. Myke Towers)
14. Bando (Fast X Remix) – ANNA (feat. MadMan & Gemitaiz)
15. Crazy (Safari Riot Remix) – Doechii *
*国内盤CDボーナス・トラック
<デジタル配信サウンドトラック収録楽曲>
1. The End of The Road Begins (Intro) – Kai Cenat
2. Spinnin’ – Lil Durk (feat. EST Gee)
3. Get It – Anti Da Menace, Luh Tyler
4. Won’t Back Down – YoungBoy Never Broke Again, Dermot Kennedy & Bailey Zimmerman
5. Angel Pt. 1 – Kodak Black & NLE Choppa (feat. Jimin of BTS, JVKE & Muni Long)
6. My City – 24kGoldn, Kane Brown & G Herbo
7. Countin’ On You – Lil T Jay, Fridayy & Khi Infinite
8. SupaFly – Cootie, BiC Fizzle & Big X Tha Plug
9. Reaper – Babyface Ray, BabyTron & Peezy
10. Steppers – NLE Choppa & Nardo Wick
11. 9 In My Hand (Fast X Remix) – Kordhell & Key Glock
12. Datura – Suicide Boys
13. Furious – BIA
14. Toretto – J Balvin
15. Te Cura – Maria Becerra
16. Sigue La Fiesta – Justin Quiles, Dalex & Santa Fe Klan
17. Gasolina (Safari Riot Remix) – Daddy Yankee (feat. Myke Towers)
18. Vai Sentando – Skrillex (feat. Ludmilla, King Doudou & DUKI)
19. Bando (Fast X Remix) – ANNA (feat. MadMan & Gemitaiz)
20. Let’s Ride – YG & The Notorious B.I.G feat. Lambo4oe, Ty Dolla Sign & Bone Thugs-N-Harmony
21. Nothing Else Matters – Jessie Murph
映画情報
『ワイルド・スピード/ファイアーブースト』
日本公開日:5月19日(金)※世界同時公開
映画公式サイト:https://wildspeed-official.jp/
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