待ち望まれた2大ヒーローの共闘を盛り上げる!『デッドプール&ウルヴァリン』サントラ全曲解説
破天荒なスーパー・ヒーロー、デッドプールの最新作にして『LOGAN/ローガン』以来となるウルヴァリンの復帰作、『デッドプール&ウルヴァリン』。今作を盛り上げるサントラは最速公開日の7月24日より配信開始、同26日にはCDも発売。時代もジャンルも飛び越えて、豪華なアーティストによる往年の名曲から最新楽曲までをを収録したこのアルバムを、山﨑智之さんに解説いただきました。
<関連記事>
・【ネタバレあり】『デッドプール&ウルヴァリン』サントラ全曲+α解説【完全版】
・MCUの人気ヴィラン『ロキ』の時間をめぐる冒険とそれを盛り上げる楽曲たち
・巨匠たちの新たなマスターピース『ドクター・ストレンジ/MoM』の音楽
・ローラ・カープマンによる『マーベルズ』の音楽を紐解く
デッドプールとウルヴァリンの2大ヒーローが遂に歴史的合体を果たす。
“マーベル・コミックス”を舞台に活躍してきた両雄が映画館のスクリーンで初めて対面したのが『ウルヴァリン:X-MEN ZERO』(2009)だった。ヒュー・ジャックマン演じるウルヴァリンとのラスト・バトルで対決するのはウェポンXIという“別キャラ”だったが、同じライアン・レイノルズが演じ、他人をナメたウザイトークなどは既に確立されていた。
そうしてライアン/デッドプールの単独主演作『デッドプール』(2016)『デッドプール2』(2018)は世界的に大ヒットを記録するが、1作目で「誰にペコペコして主演をゲットしたと思う?“プルヴァリン”と名前が似ている人だよ」と発言、2作目では串刺しになったウルヴァリンのオルゴールが登場するなど、執拗なウルヴァリンいじりを繰り返してきた。そして2024年、『デッドプール&ウルヴァリン』で2人は宇宙の存続を賭した戦いへと向かうことになる。
スーパーヒーロー映画として、そしてコメディ映画として絶大な支持を集める『デッドプール』シリーズだが、その音楽も魅力のひとつだ。第1作ではワム!フィーチュアリング・ジョージ・マイケルの「ケアレス・ウィスパー」がラストを盛り上げたし、第2作ではなんとセリーヌ・ディオンが新曲「アッシェズ」を主題歌として提供。それ以外にも新旧のヒットからマニアックなナンバーが流れるのに加えて、セリフでも盲目の老婆アルをロニー・ミルサップ、X-MENのネガソニック・ティーンエイジ・ウォーヘッドをシネイド・オコナーに例えるなど、さまざまな音楽ネタが散りばめられている(ちなみにネガソニックの名前もモンスター・マグネットの曲タイトルが元ネタだったりする)。
『デッドプール&ウルヴァリン』でも全編さまざまな音楽が流れ、作品をより起伏に富んだものに。懐かしのオールディーズから最新ポップ・ヒットまで、時代もサウンドも多彩な楽曲をコレクションしたサウンドトラック・アルバムだ。
1. プラターズ「Only You (And You Alone)」
1955年に発表されてから時代を超えて愛されているプラターズの代表曲と言えるムード・バラード。本作で聴くことが出来るのは再録音ヴァージョンだ。
2. イン・シンク「Bye Bye Bye」
全米を代表するボーイ・バンドで、ジャスティン・ティンバーレイクらが在籍したことでも知られるグループの2000年のヒット・シングル。
3. メリリー・ラッシュ&ザ・ターンアバウツ「Angel of the Morning(朝の天使)」
第1作では1981年のジュース・ニュートンによる同曲が使われていたが、本作では1968年、メリリー・ラッシュのヴァージョンが収録されている。オリビア・ニュートン・ジョンやニナ・シモーンなども歌ったこの曲を書いたのは映画『メジャーリーグ』でもおなじみ「恋はワイルド・シング」のチップ・テイラーだ。
4. Stray Kids「SLASH」
韓国の8人組ボーイズグループによる新曲。2017年のデビューからあっという間に世界制覇、日本でも5大ドーム・ツアーを成功させる人気ぶりで、その勢いに乗って『デッドプール&ウルヴァリン』に殴り込みをかけることになった。
5. ファーギー「Glamorous」
元ブラック・アイド・ピーズ…という枕詞はもはや不要。ソロ・アーティストとして活躍するファーギーの2006年のナンバー。アルバム『プリンセス・ファーギー』とシングル・ヴァージョンではリュダクリスをフィーチュアリングしていたが、こちらは彼女の単独ヴァージョンだ。
6. グー・グー・ドールズ「Iris」
1990年代後半の全米を席巻したモダン・ロックを代表する曲のひとつで、1998年にヒット。映画『シティ・オブ・エンジェル』でも使われた。モダン・ロックはちょうど笑いのツボに入りやすい湯加減なのか、2023年にも『バービー』でマッチボックス・トゥエンティの「プッシュ」が再注目されたところだ。
7. ヒューイ・ルイス&ザ・ニュース「The Power Of Love」
1980年代アメリカン・ロックの超大物。この曲は1985年に映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の主題歌に使われ、今回は“ウルヴァリン探し”の音楽として聴くことが出来る。なお作中では「いつも夢みて If This Is It」も使用された。
8. ウェイロン・ジェニングス「I’m a Ramblin’ Man」
アメリカの伝説的カントリー・シンガー、1974年に発表した代表曲のひとつ。1959年、バディ・ホリーやリッチー・ヴァレンスが亡くなった飛行機事故をギリギリで逃れ、1985年には「ウィ・アー・ザ・ワールド」のレコーディングでスタジオを訪れながら参加を拒否するなど、さまざまな逸話を残したアウトロー。
9. パッツィー・クライン「You Belong To Me」
1952年に初吹き込み、ポップ・スタンダードとしてパティ・ペイジから江利チエミ、トニー谷、映画『ナチュラル・ボーン・キラーズ』サウンドトラックでのボブ・ディラン、
『アイリッシュマン』でのジョー・スタッフォードまで数多くの幅広いシンガーに歌われてきたナンバーだが、本作に収録されているのはパッツィー・クラインによる1962年のヴァージョンだ。
10. クリス・デ・バー「Lady In Red」
1986年、クリス・デ・バーによるヒット曲。
1980年代ラヴ・バラードの象徴としてパロディ的に使われることも多く、『ワーキング・ガール』『ドッジボール』などのコメディ映画、また『アメリカン・サイコ』では変態シリアル・キラーのパトリック・ベイトマンがこの曲を聴いている描写もある。
11. アヴリル・ラヴィーン「I’m With You」
アヴィリルのデビュー作『レット・ゴー』(2002)からのパワー・バラード。同年早くもTVシリーズ『ヤング・スーパーマン』で使われるなど、スーパーヒーローとは縁がある。
12. ヒュー・ジャックマン、キアラ・セトル、ザック・エフロン、ゼンデイヤ、 ザ・グレイテスト・ショーマン・アンサンブル「The Greatest Show」
ウルヴァリンいじりはさらにエスカレート。ヒュー・ジャックマンが主演、自ら歌う『グレイテスト・ショーマン』(2017)挿入曲だ。ヒューに加えて『スパイダーマン』シリーズでおなじみゼンデイヤ、『アイアン・クロー』でケビン・フォン・エリックを演じたザック・エフロンなど、ヒーロー関係者が揃っていることに驚かされる。
13. ジョン・トラヴォルタ、オリヴィア・ニュートン・ジョン「You’re The One That I Want(愛のデュエット)」
『グリース』(1978)の終盤を彩るデュエット。それまでお嬢さんキャラだったオリヴィアが黒レザーに身を包み歌いまくるナンバーだ(JK役だが実際にはアラサー)。
14. ジミー・デュランテ「I’ll Be Seeing You」
1938年、ブロードウェイ・ミュージカル『ライト・ジス・ウェイ』挿入曲として初演。フランク・シナトラやビング・クロスビー、ノラ・ジョーンズなどが歌ってきたジャズ・スタンダードであり、映画『きみに読む物語』でビリー・ホリデイのヴァージョンがフィーチュアされた。本作に収録されているのはジミー・デュランテによる1965年のもの。バスター・キートンとの共演でも知られる彼は、その容貌から“デカッ鼻”と呼ばれた。
15. エリック・カルメン「Make Me Lose Control」
「オール・バイ・マイセルフ」など心を打つメロディで知られるエリックの1988年、最後のヒット曲。ミュージック・ビデオでは『アメリカン・グラフィティ』へのオマージュも込められている。2024年3月11日に亡くなった彼への追悼ともいえる本作での使用だ。
16. アレサ・フランクリン「You’re All I Need To Get By」
“ソウルの女王”アレサも『デッドプール』ワールド入り。オリジナルはマーヴィン・ゲイだが、彼女のヴァージョンは1971年にヒットした。
17. グリーン・デイ「Good Riddance (Time of Your Life)」
パンクの枠を越えてアメリカン・ロックの大御所となったグリーン・デイの1997年のナンバー。しっとり聴かせるナンバーでバンドの新機軸を切り開き、今やアメリカのハイスクールなどでは卒業式の定番ソングだ。
18. ロブ・サイモンセン「LFG(Theme from “Deadpool & Wolverine”)」
アルバムのラストはインストゥルメンタル・スコア。『ゴーストバスターズ/アフターライフ』(2021)や『ザ・ホエール』(2022)などで頭角を現してきたロブ・サイモンセン(日本ではシモンセンと表記されることもあるが、本人はサイモンセンと発音)が盛り上げるトラックで、本CDは幕を下ろす。
なおトレーラー(予告編)ではマドンナの「ライク・ア・プレイヤー」が使われるなど、本編を飛び出してまで音楽で魅了する。バトルありギャグありミュージックあり、『デッドプール&ウルヴァリン』はまさに無敵の映画作品である。
Written by 山﨑智之
2024年7月24日 配信
2024年7月26日 CD発売
CD
マーベル・スタジオ 公式プレイリスト
『Marvel Music』
好評配信中
Apple Music / Spotify / Amazon Music / YouTube / LINE MUSIC
- MCUの人気ヴィラン、裏切り王子『ロキ』の時間をめぐる冒険とそれを盛り上げる楽曲たち
- 遊び心を忘れていない巨匠たちの新たなマスターピース『ドクター・ストレンジ/MoM』の音楽
- より高く、より遠く、より強く、共に。ローラ・カープマンによる『マーベルズ』の音楽を紐解く
- 映画『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』サントラ配信。国際色豊かな40名以上が参加