来日公演直前、オールモスト・マンデーが語る“自分たちらしさ”を発揮したデビュー・アルバム『DIVE』
エルトン・ジョンなどからその音楽性を賞賛され、2022年10月一夜限りとなる初の来日公演を大成功に収め、コンスタントにツアーとシングルのリリースを続けてきたサンディエゴ発3人組インディ・ポップ・ロック・バンド=オールモスト・マンデー(almost monday)。
そんな彼らがデビュー・アルバム『DIVE』を2024年9月にリリース。さらに、本作を引っ提げて約2年ぶりとなる来日公演を11月16日に実施。日本限定でCD化された『DIVE』日本盤は来日公演にあわせて11月13日に発売される。
そんな来日直前の彼らを音楽ライターの村上ひさしさんがインタビュー、あわせてデビュー・アルバム『DIVE』について解説していただきました。
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デビュー・アルバムで早くも見せる進化と成長
南カリフォルニアはサンディエゴ出身の3人組インディーロックバンド、オールモスト・サンデーが遂に待望のデビュー・アルバム『DIVE』を発表した。Z世代の代弁者として「broken people」をはじめ、さまざまなポップアンセムで同年代の心を掴み、共感を得てきた彼らが、早くもネクストチャプターに突入。世代や同胞意識を超えて、自分たちのルーツに基づいた、他アーティストとは異なる“自分たちらしさ”を発揮しはじめた。
彼らのデビュー・アルバム『DIVE』を一聴して感じるのが、ギター演奏がよりダイナミックに舵を取り、楽曲のスピード感がアップされたこと。長年続けてきたツアーによる影響が大きかったそうで、ギター担当のコールクリスビーはこんなふうに説明する。
「確かに音楽嗜好も変わったし、ツアーに出た影響が大きかったと思います。知らない場所を訪れ、知らないバンドのライブを観て、フェスティバルに出演し、考え方や見方が変化しました。あとコロナ禍のパンデミック中にさまざまな音楽を吸収したことも大きかったと思います」
ロラパルーザやボナルーなどの大きなフェスに出演し、AJRやザ・ドライヴァー・エラと長期間にわたって欧米ツアーを行ってきた彼ら。ベースギター担当のルーク・ファブリーも同調する。
「ライブで演奏していると、もっとギターを入れたい、もっと速い曲が欲しい、という気持ちが湧いてきました。その影響がこのアルバムや楽曲に現れるのは当然ではないかと思います」
ビーチライフに育まれた“自分たちらしさ”
アルバム『DIVE』を聴いて、多くのリスナーが「ザ・ストロークスを彷彿とさせられる」と感想を語っている。Z世代やそれ以下の若いファンの中には、彼らを聴いて初めてザ・ストロークスを知ったという人も多いだろう。ポップでメロディックな歌と、付かず離れず異なるメロディを奏でるギター。躍動感溢れるタイトなリズムパートも特徴的だ。「僕たちは彼らから大きな影響を受けていますから」と語るコールは、以前から最も好きなバンドとしてザ・ストロークスを挙げていた。
「ずっと聴いてきたバンドの影響が表れるのは、とても自然なこと。クールじゃないかと思います。ニューヨークのバンドの影響を、自分たちの音楽に取り入れつつ、自分たちの音楽を創造していく、そこが大切なのだと思います。自分たちらしさも、僕たちはしっかり反映させています。南カリフォルニアで育ったこと、サーフロックのシーンについてなど、そういった部分が投影されています」
そう、南カリフォルニアのレイドバックしたムードは、以前から彼らの特徴でもあったが、アルバム『DIVE』では、それがいっそう強調され、重点的に掘り下げられている。アルバム全編には、海、太陽、砂浜、夏、日焼けといったワードが歌詞のあちこちに鏤められている。サーファーでもある彼らのビーチライフの日常が窺える。改めて自分たちのルーツに立ち返り“自分たちらしさ”に目覚めたかのように。フロントマンのシンガー、ドーソン・ドハティーはこんなふうに語る。
「それこそが僕たちの自分たちらしさであり、みんなが愛してくれている理由ですから。作られたイメージなんかじゃありません。自分たちらしく、というのは、僕たちが常に舞い戻ってくる基本でもあります」
アルバム本編のラストを締めくくる「life goes by」というナンバーには、彼らのそんな気持ちが集約されている。メンバー全員がアルバム中、最も好きな曲だという。
「あの曲はこのアルバムやこのバンド、僕たちの現在の素顔を如実に示していると思います。少し笑える歌詞なのですが、ピッタリ言い当てています。そこまで詩的というわけなく“海に入りたいからビーチへ連れてって”と歌っていたりして(笑)。そういうところが僕たちらしさじゃないかと思います。実際、僕たちはビーチが大好きで、しょっちゅうビーチで過ごしたり泳いだりしているわけで、つまり大したことを歌ってるわけでも、大それたメッセージを発しているわけでもないけれど、それが僕たちなんです。ツアーでいろんな国々を訪れて、こうした歌を歌うのはとても楽しくて、思わず笑顔になってしまいます」(ドーソン)
アルバムのオープニングを飾るタイトル曲「dive」では、ザ・ビーチ・ボーイズを思わせる、とびきり美しいコーラスも披露される。ザ・フォー・フレッシュメンというコーラスグループが起用されている。最近ママス&パパスにハマって、よく聴いているというドーソンは、その経緯をこう語る。
「アルバム制作のかなり終盤だったと思います。コンセプトに沿った何かが必要だとずっと感じていて、あれこれ迷っていたのですが、制作の終わりの方で、とても感銘を受けたハワイアンのインスト曲があったんです。そのメロディにインスパイアされて、僕たちも作ってみようと思ったんです。その後にバーバーショップスタイルの4人組コーラスグループ、ザ・フォー・フレッシュメンと出会って、彼らと一緒に是非ともやりたいと思ったので、すぐにお願いしました。ザ・ビーチ・ボーイズの影響を受けているのは間違いないです。彼らのDNAをたっぷり感じられる曲だと思います。懐かしいスタイルをカムバックさせ、それを2024年のニューアルバムに入れてみたかったんです」
レイドバックしたフィールグッドなムードに覆われているものの、アルバムにはさまざまな方向性のサウンドが詰まっている。サーフロック風の「she likes sports」、ファンキーなディスコ調「jupiter」、サイケな「can’t slow down」。
ノスタルジックな「seaside market」には、ひしゃげたギターやボーカル、トランペットの音色が飛び交い、海辺のマーケットを散策しているかのようで、何とも言い難い至福感とほのぼのムードに包まれている。
「僕たちの友人で、プロデューサーの知り合いでもある彼が、トランペットのような楽器を持って、たまたまスタジオに来ていたんです。僕たちはプロダクションに関して何か違ったことをやってみたいと探していたので、彼に“この曲に合わせてちょっと演奏してもらえる?”と頼んで、確か5回ほど曲に合わせて演奏してもらったんです。その中から一番あの曲に相応しい、いい感じのパートを選びました。アルバムには、多くの異なる方向性のサウンドが含まれています。そもそも僕たちのサウンドというのは、そういう七変化を少しするのが特徴じゃないかと思います。ロック寄りだったり、ポップ寄りだったり、さまざまなタイプのサウンドがあって、僕たちはひとつの方向性だけに囚われないようにと心がけています。僕たちが作りたいのはひとつの方向性に偏らず、どのような音楽リスナーでも楽しめる楽曲のアルバムなのだと思います。そんなことを考えながら制作しました」(コール)
11月の来日公演にかける意気込み
アルバムのタイトル『DIVE』には、もちろん飛び込むという意味があり、ジャケットにも海に飛び込む様子が描かれている。と同時に「これがデビュー・アルバムであり、ここから飛び込む」という意味も託されている。
「僕たちの音楽、美学、世界観を一言で上手く言い表しています。バンドのデビュー・アルバムであり、ここから僕たちの世界が始まって、みんなを導きたいという思いも込められています。オールモスト・マンデーの音楽とその世界にみんなで飛び込もう、といった意味合いです。キャッチフレーズとしてもピッタリじゃないかと思います」(コール)
「素晴らしいバンドの多くが、素晴らしいデビュー・アルバムを作っている」と語る彼らは、デビュー・アルバムの制作には、じっくり時間を掛けて慎重に進めてきた。
「自分たちに正直で、自分たちらしい作品を作り、現在の僕たちの姿を捉えたいと思いました。そのためには時間が掛かります。後から振り返って、このアルバムがスナップショットの写真を眺めているかのように“あの頃の僕たちはこうだった”、“こういう音楽をやってたんだ”と思い出せればいいなと思うんです」(ルーク)
コンスタントにシングルを発表してきた彼らだけに、アルバムには収録されなかった楽曲も多数存在する。それらを網羅するかのように、日本盤CDにはたっぷりボーナストラックが追加収録されている。ドーソンが「ほとんど2枚組だよね」というCDには本編11曲と、10曲ものボーナストラックを収録(日本盤のみ)。そのデビュー・アルバムを引っ提げて、いよいよ約2年ぶり2度目の来日公演が迫ってきた。
「もちろん、すごく楽しみです。日本って、僕たちが普段から一番よく話題にしている国じゃないかと思います。日本でのツアーのこと、“日本でもっと時間が欲しいね”とか言って。僕たちがこれまで活動してきた中で、最もクールな体験のひとつが日本に行けたこと。渋谷の街を歩き回ったことは忘れられません。そうそう、渋谷にはたくさん人がいるけど、2人のファンが僕たちが歩いているのを見つけて、手作りファンアートを贈ってくれたんです。渋谷の真ん中で。その時に改めて、僕たちの創造している音楽が他の人にも影響を与えていると実感したのを覚えています。地球のこんなに離れた遠くで…。その2人のファンは、僕たちのライブにも来てくれて、とにかく、すごくクールな体験でした。日本のみなさん、とても愛しています。(日本語で)愛してます! もうすぐ日本で会いましょう!」(ドーソン)
Written By 村上 ひさし
2024年9月25日発売
日本盤CD:11月13日発売
CD / Apple Music / Spotify / Amazon Music / YouTube Music / LINE MUSIC
来日公演情報
11月16日 (土) SHIBUYA THE GAME
OPEN 17:00 / START 18:00
チケット発売中
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