オールモスト・マンデーが語る、Z世代が奏でる音楽からサンディエゴの日常が聴こえる理由

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Photo by Cole Ferguson

サンディエゴ出身のインディ・ポップ・バンド、オールモスト・マンデーが初来日公演を実施。米西海岸のビーチ・ライフを彷彿とさせるハッピー・ヴァイブスと、爽やかなサウンドで人気の彼ら。2022年初めから本格的にツアーを再開させ、次々と新曲を発表し、来日直前の10月初めには、日本デビューEP『cough drops (japan special edition)』もリリース。上昇気流に乗っているドーソン・ドハティー(ヴォーカル)、ルーク・ファブリー(ベース)、コール・クリスビー(ギター)のメンバー3人に、音楽ライターの村上ひさしさんがインタビュー。初めての東京体験から、グループとしてのゴール、Z世代の代弁者としての現在の心境まで、たっぷり語ってもらった。

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ツアーの再開とニュー・シングル

――楽曲の総ストリーミング数が遂に1.1億回を超えたそうですね。日本デビューを果たした去年(2021年)の夏から一気に増えたようですが、何か思い当たるフシはありますか?

ルーク:正直言って僕たちにも分からなくて……ただひとつ言えるのは、僕たちの曲をみんなが気に入ってくれたってこと。ライヴをやって、ツアーをやって、フェスに出演して、そういったことの積み重ねの結果じゃないかと思ってます。

――2022年に入ってから積極的にツアーを行ってきましたよね。

コール:本腰を入れたのは今年の2月ぐらいから。アメリカではけっこう長期に渡ってツアーをやってたし、南アメリカやオーストラリアに足を伸ばしたり、その後またアメリカに戻ってツアーを続行。今回も日本の後に韓国を訪れます。

――数日前にニュー・シングル「cough drops」がリリースされました。ガレージ・ロック的なエッジのあるサウンドで、かつてのホワイト・ストライプスなどを思い出しました。

3人:(口々に)うんうん嬉しい。それってクール!

ドーソン:僕たちが狙っていたのも、そういうサウンドだったので嬉しいです。新型コロナが落ち着いて、よくやくライヴ活動を再開できるとなった時、“どういう形でオーディエンスとコネクトするのがベストなのか?”と考えながら作りました。ライヴの状況を想像しながら。ギターを前面に押し出して、エネルギー全開のサウンドにしようと。実際ライヴで演奏したら、凄く好評だったんです。“リリースはいつ?”とかファンのみんなから訊かれることも多くて、それがリリースに繋がった形です。


ビーチ・ライフを映し出すフィールグッドなサウンド

――先に発表された「sunburn」や「sun keeps on shining」、そしてこの「cough drops」もそうですが、全て破局や失恋がテーマですよね。少々物悲しい雰囲気もあって。

ドーソン:僕たちが悲しい性格だから(笑)。というのは冗談だけど、常に心掛けているのが、歌詞のテーマは誰もが経験してきたこと、共感できるようなことにするという点です。失恋もそのひとつだし、友人との別れなど、みんなが経験することですよね。それぞれのリスナーが自分のことのように感じてもらえるのではないかと思っています。

――ノスタルジックなムードが漂っているのは、過去を振り返っているから?

ドーソン:多分そうですね。過去の思い出だから。でも悲しいことを歌っていても、そんな経験ができたことに凄く感謝しているというか、一緒に時間を過ごせて良かった、みたいな気持ちが強いです。

――だからオールモスト・マンデーの音楽はフィールグッドなんですね。

ドーソン:うんうん、フィールグッドな音楽。だけど、歌っているのはまったく逆だったりして。悲しかったり(笑)。そういうところも面白いんじゃないかと思います。

――「sunburn」や「sun keeps on shining」には太陽が歌詞に出てきて、出身地サンディエゴの日常が聴こえてきます。その辺りは、あえて意識していたり?

ルーク:僕たちにとってはごく自然なこと。特に意識しているわけではありません。ビーチの傍で暮らしてきた僕たちとしてはハッピーな感じ、楽しい曲調が多いのは、とても自然なことじゃないかと思います。もはや僕たちの一部ですから。

ドーソン:特にこの2曲はサンディエゴぽくて、サンディエゴのアンセムって感じもあります。凄くサンディエゴのフィーリングを感じてもらえるのではないかと。

――サンディエゴから東京にやってきて、凄く人が多くて、ゴチャゴチャしているじゃないですか。違和感を感じたりは?

ドーソン:いや全然、凄く楽しいです。もっと長く東京にいれたらって思うほど。そう、今朝もみんなで話してたんです。明朝、僕たちは発っちゃうけれど、できれば一ヶ月ぐらい東京に住みたいよねって(笑)。あらゆるものに目が奪われ、様々なものがギッシリひしめきあっていて、これを全部消化するには、もっと時間が必要。うん、東京ってニューヨークのタイムズスクエアを数倍クールにした街じゃないのかな、そんな気がしています。

 

ありのままを最優先するZ世代の感性

――デビュー曲「broken people」以来、Z世代の代弁者のように捉えられてきましたが、よくインスタグラムを例に挙げて、ミレニアル世代は綺麗で完璧な写真を好んでいたけど、Z世代は粒子の粗い素朴な写真を好むと言われますが、ひとつ上のミレニアル世代との違いは感じますか?

ルーク:確かに僕たちの方がもっとありのまま、素朴な感じが好きです。きっと前の世代が完璧でベストなものを好んでいたから、その反動もあるんじゃないかと。音楽もそうだと思います。みんな自分らしさを大切にしていて、リアルで誠実なものを求めています。TikTokや新しいアプリのBeRealにしても、ありのままを良しとしています。フィルターなどを使って綺麗に見せていた前の世代とは違っています。音楽も、あまりプラグインなどを使わなかったり。

――Z世代という括りから抜け出して、そろそろ次の地点へと向かっていたり、成長している実感はありますか?

ドーソン:だといいけれど。

コール:もっと広い世代に、僕たちの音楽はアピールできると思うし…。

ドーソン:うん、Z世代に限らず楽しんでほしいと思います。

――実際3人はデヴィッド・ボウイやMGMT、ゴリラズなど、上の世代のアーティストたちから影響を受けていますよね。最も影響を受けているのは?

ドーソン:バンドとして3人が最も影響を受けているのは、やはりデヴィッド・ボウイだと思います。

コール:個人的には一番好きなのはザ・ストロークスかな。

Photo by Cole Ferguson

――じゃ「cough drops」が、お気に入りですね。

コール:うんうん、その通り(笑)。

ルーク:僕が一番好きなのはフェニックス。

ドーソン:僕はすごく迷うけど、ずっと一番好きなバンドってことで、やっぱりコールドプレイかなと。世界一ビッグなバンドっていうので、ちょっとベタだけど(笑)。クリス・マーティンの大ファンなんです。

――バンドとしての最終的な目標を教えてください。

ルーク:ずっとツアーを続けていきたいです。Z世代のアーティストの中には、あまりライヴ経験がなくて、いざライヴになると“あれれ?”ってことが少なくないけれど、僕たちは、その点しっかり経験を積んでいる。そこを気に入ってくれてるファンも多いと思います。

コール:最初の頃は、ほとんどレコーディングせずに、ライヴ活動ばかりしていました。バンドとしての一体感など、これからはレコーディングにも生かしたいです。

ドーソン:あとスタジアムを満杯にしたいかな(笑)。何も世界最大のバンドになりたいというわけではなくて……少し真面目な話になりますが、自分たちの音楽ファンを少しずつでもいいから増やして、コミュニティのようなものを作りたいんです。僕たちの音楽を楽しんで、開放感を味わって、みんなが自分らしくいられる、そんな場を作りたいと願っています。

――最後にオールモスト・マンデーのファンに愛称というのは、ありますか?

ドーソン:つい最近ファンが付けてくれたみたいで、サンデーズっていうのがあるようです。オールモスト・マンデー(月曜)だからサンデー(日曜)と掛けているんですけど、でもアイスクリームのサンデー(Sundae)の綴りっていう(笑)。

Written By 村上ひさし


オールモスト・マンデー『cough drops (japan special edition)』
2022年10月5日発売
CD / Apple Music / Spotify / Amazon Music / LINE MUSIC



 

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