クリスマスに聴きたい一曲。チャイコフスキーの《くるみ割り人形》組曲:バレエ音楽への案内

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欧米ではクリスマスの風物詩ともなっているチャイコフスキーの《くるみ割り人形》組曲。

キャンディのように甘い「シュガープラム(金平糖)の精の踊り」から、きらびやかな「葦笛の踊り」まで、《くるみ割り人形》組曲は、砂糖、雪、輝きを象徴する音楽だ。今回、この作品がクリスマスの定番曲として親しまれている理由を明らかにしていく。


チャイコフスキーの《くるみ割り人形》組曲:バレエ音楽のガイド

名前の由来は?

チャイコフスキーのバレエ音楽で、世界中のクリスマスの定番となっている《くるみ割り人形》。指揮者のサイモン・ラトルは、これを「音楽の素晴らしい奇跡の1つ」と呼んでいる。バレエのタイトルは、1814年にドイツのファンタジー作家E.T.A.ホフマンによって書かれた物語『くるみ割り人形とねずみの王』に由来している。

チャイコフスキーの代表作《眠れる森の美女》でタッグを組んでいた振付師のマリウス・プティパが、チャイコフスキーに、『ホフマンの物語』のアレクサンドル・デュマのバージョンに基づいて、彼が選んで書き出した新しいシナリオの音楽を書くように依頼した。プティパはチャイコフスキーに、各セクションのテンポや小節の数など、細部まで指示している。

全2幕は、少女のクリスマス・イヴのお祝いとロマンティックな恋の目覚めが話の中心である。少女は夜中にそっと階段を降り、お気に入りのプレゼントのくるみ割り人形で遊んでいる。するとくるみ割り人形はハンサムな王子に変身し、スイーツの国に彼女を連れて行く。このバレエは、1892年12月18日にロシアのサンクトペテルブルクにあるマリインスキー劇場で最初に上演された。

チャイコフスキーは、バレエが初演される前に《くるみ割り人形》から8つの場面を選び、《くるみ割り人形》組曲としてまとめた。1892年3月7日にサンクトペテルブルクで初めて演奏されたこの組曲はすぐに人気を博し、ディズニー映画『ファンタジア』でも使われている。

知っておくべきこと

チャイコフスキーの《くるみ割り人形》組曲が常に人々を驚かせてきたのは、作曲家がオーケストラから得た驚くべき音を紡ぎ出していることである。彼は、きらびやかなカットグラス、クリスタルジンジャー、綿あめのように聴こえる音楽で、おもちゃやお菓子を生き生きと表現している。

革新的なことの1つは、チャイコフスキーが「シュガープラムの精の踊り」でチェレスタを使用したことである(プティパは、この踊りを「噴水から水滴が噴き出すように」聴こえるようにしたいと言っていた)。

チェレスタは、ハンマーが金属板に当たる鍵盤楽器で、グロッケンシュピールに似ているが、もっと柔らかく聴こえる。チャイコフスキーは1891年にパリでこの楽器に出会い、他のロシア人作曲家が彼の前にこの楽器を使って作曲しないように秘密にしておくよう注意し、出版社に購入を依頼している。

ほとんどの舞曲は、オーケストレーションが異なるだけの同じ旋律による、2つの”節”から成っている。チャイコフスキーは、フルートを数本演奏しているときと同じように、オーケストラ全体の音色をクリスタルのように透明に保っていることにお気づきだろうか。

チャイコフスキーの《くるみ割り人形》組曲は、「序曲」と「行進曲」で始まり、お菓子の国を舞台にしたバレエの第2幕から舞曲へと移る。

「シュガープラムの精」の踊りの後、「ロシア」、「アラビア」、「中国」、「葦笛」の踊りが続くが、「アラビア」の踊り(ラトルは「弦楽器とオーボエとコーラングレが踊りの上で大きな悲しみを歌う」と述べている)は、実際にはグルジアの民謡の子守歌に基づいている。《くるみ割り人形》組曲は、優雅さと壮大さを呼び起こす有名な「花のワルツ」で締めくくられる。

シュガープラムとは何か

果物、ナッツ、種子、スパイス、チョコレートの周りに硬い砂糖で包まれた、少し丸い、もしくはプラムの形をした甘いものを指している。それらは16世紀から19世紀にかけて人気があり、専門用語では「ドラジェ」または「コンフィ」であった(実際、私たちの妖精のフランス語名は「ドラジェの精」である。「M&M’s」のチョコレートは明らかにこれの子孫だ。

どこかで聴いたことがある?

特定の年齢以上の人は、「葦笛の踊り」を聴くとキャドバリーのフルーツとナッツのチョコレートバーを連想してしまうことだろう(この曲は1970年代にフランク・ミュアーが出演していたいくつかのテレビCMで使われていた)。

「シュガープラムの精の踊り」は、ベイリーズからバークレイカードまで、クリスマスのテレビCMや店内BGM、着信音でも使用されている。

チャイコフスキーの《くるみ割り人形》組曲がもしこれほど様々なところで使われていなければ、今のように多くの人に愛されることはなかっただろうか。いや、ラトルが言うように、「それはあり得ない。この曲はどんなことがあっても必ず愛され続けるだろう」。

ロサンゼルス・フィルハーモニックとグスターボ・ドゥダメルの演奏によるチャイコフスキーのくるみ割り人形

「グスターボ・ドゥダメルは自身が指揮したディズニー映画『くるみ割り人形と秘密の王国』のオリジナル・サウンドトラックに合わせて、ロサンゼルス・フィルハーモニーとのチャイコフスキーのオリジナルのバレエ音楽《くるみ割り人形》をリリースした。

ロサンゼルスのウォルト・ディズニー・コンサートホールで行われた、エキサイティングでありながら作品の本質を示すロマンティックな演奏は、クリスマスのクラシックに新しい色彩が与えられている。子供と大人の両方の心に訴える音楽で、クリスマスのお祝いの準備に最適なアルバムだ」—クラシックFM「アルバム・オブ・ザ・ウィーク」

Written By uDiscover Team


■リリース情報

2018年11月30日発売
グスターボ・ドゥダメル指揮、ロサンゼルス・フィルハーモニック
チャイコフスキー:バレエ《くるみ割り人形》
CD /Amazon Music /Apple Music / Spotify





 

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