3歳までに音楽を『モンテッソーリ教育×ハーバード式子どもの才能の伸ばし方』伊藤美佳インタビュー
大反響を得ている子育て本「モンテッソーリ教育×ハーバード式 子どもの才能の伸ばし方」(かんき出版)とのコラボレーションによる、クラシックのコンピレーションアルバム『モンテッソーリ教育Xハーバード式 子どもの才能を伸ばすクラシック』がリリースされた。
リズム編とメロディ編という編成の2枚組にはクラシックの名曲が計30曲も収録されている。モンテッソーリ教育とはどういうものなのか、そのなかでクラシックとはどんな存在なのか。著者の伊藤美佳さんにお話を聞いた。
―まず20世紀初頭のイタリアで考案されたモンテッソーリ教育と、伊藤さんとの出会いを教えていただけますか。
「我が家には3人子どもがいるのですが、長男は普通の幼稚園に通いました。長女も最初は普通の幼稚園に入園しましたが、管理の厳しいところだったので、友人から転園させたいとの相談を受けたことで、彼女といろいろな幼稚園を見学に行くなかで出会ったのがモンテッソーリの幼稚園でした。
他とは様子が明らかに違い、子ども達がすごくイキイキとしていて、しかもパッと見た感じでは先生の姿がないので、子ども達しかいないように見えました。でも、ちゃんと子ども達を見守っているので、何かあると、どこからかスーッと現れる感じでした。
さらに見ていると、アルコールランプを使って、塩水から塩を作る実験をしていたり、本物のアイロンでアイロン掛けをしている子がいたり。なかなか危ないという理由で、子ども達にさせないことも経験させているんです。
また、見学をしている時にテーブルの花瓶を倒してしまった子がいて、私達に説明をしてくれている先生のところに来て、「お水をこぼしちゃった」と言ってきたんですね。その先生は、叱ることなく、一緒に雑巾を取りに行き、拭き方から雑巾の洗い方、絞り方まで教えてあげていて、私達に「次から自分ひとりで出来るように教えてあげることが大事なんです。失敗は決して悪いことじゃないので」って。そのやりとりに私は、今まで何をしていたんだろうってショックを受けて、すぐに長女を転園させました」
―実際に転園して何か変化は起きましたか。
「幼稚園のお迎えのバスに乗る前から、毎日ワクワクしていて、今日は縄跳びをするんだとか言って。実際に幼稚園に着いてから、縄跳びをずっとやっているみたいで、1週間後にはビュンビュン飛べるようになっているんですよ。それは本人が満足するまで、やり遂げるまで、先生が止めずにずっとやらせてくれるからなんですよね。
縄跳びを習得すると、長女は次に鉄棒に取り組んでいました。見守って最後までやらせてくださることで、子どもの能力は、伸びるんだってわかりました。これが嫌々だったら、それほど本人がヤル気になっていなかったかと思います。本人がやりたいと思った時に発揮される爆発的な力は、本当にすごいものだと思いました」
―全員が同じことをすることなく、自由にやりたいことができるということですか?
「“自由選択活動”というのですが、自分の意志で選択して、活動することを尊重しているんです。普通の幼稚園だと、先生からこれをやりましょう、と言われるまで園児は待っているわけですよね。何も考えることなく、ただ待つことになります。でも、モンテッソーリでは自分でやりたいことを朝から考えて、ワクワクしながら幼稚園に行くことができるんです」
―伊藤さんもその後、もっとモンテッソーリ教育を学ばれたそうですが…。
「はじめは、次女が卒園した時に幼稚園から働きませんか、と声を掛けられたことがきっかけでした。すでに次女が入園したと同時に私もモンテッソーリ教育の学校に学びに行っていたのですが、実習に行った幼稚園で本当に驚く経験がありました。ひとりだけ10時半頃にお弁当を食べ始める子がいたんですね。でも、先生は誰も注意をしない。勝手にお弁当を食べるのはおかしいことなんだ、と自分で気付くことが大事だから、という考え方なんです。
普通だったら、先生が他の先生の目を気にして、慌てて注意したり、たとえば、お母さんも自分の子どもが公園でおもちゃの取り合いをしたら、他のお母さんのことが気になって止めに入ったりしますよね。でも、大人の管理のもとで育ってしまうと、叱られるからいい子にしていようという発想になってしまうんです。全て指示されることを待ってしまう子どもになりがちだと思います」
―そういう教育のなかで、音楽が果たす役割というのはどういうものですか?
「まず私の著書『モンテッソーリ教育Xハーバード式 子どもの才能の伸ばし方』のハーバード式が提唱することに“9つの知能”というのがあります。いろんな分野にアプローチをして、子ども時代に土台を作るのが大切という考え方です。その9つのうちのひとつに音楽があります。受験に関係ない科目なので、日本ではどうしてもなおざりになりがちですが、音楽はとても大切な知能のひとつです」
―その知能というのは?
「これは私の考え方ではありますが、子ども達は、物語の世界というか、空想とか、想像とか、現実社会とは異なる世界で生きているもので、その想像力というのは大人では計り知れない、とても豊かなものです。そんな感性豊かな時期に音楽に触れることがとても大切で、感じる心がどんどん育っていくんです。
脳の神経回路は、年齢とともに淘汰されていくと考えられています。なので、この時期に音楽に触れていないと、成長してから急に聴きだしてもあまり興味が持てなかったりするので、音楽を聴いてリフレッシュしたり、元気をもらったりということが難しくなってしまいます」
―この時期というのは3歳頃ですか?
「実は3歳までが大事です。よく3歳からの英才教育と言いますが、実際は、3歳までが重要で、子ども自身が音楽を求めていると思っていただくといいと思います。無意識のなかで心地好くなる音楽を聴きながら眠りたいとか求めているので、それを与えてあげる環境を作っていくことが重要です」
―伊藤さんの家では音楽を流れているような環境でしたか。
「まず私の話からすると、父がモーツァルトを好きだったので、父が家にいる時は、いつもモーツァルトが流れていました。そのことに反発した時期もありましたが、子どもの頃に始めたピアノは、大学入学までは続けていました。
子育てをしている時は、年の近い子どもが3人もいたので、小さい頃は10分おきくらいにケンカが起きるような日常でした。それを聞くのが嫌で、私は止めるのではなく、自分のためにピアノを弾くことにしていたんですね。時にはピアノを弾きながら、歌ったりして。そうすると、子ども達がケンカをやめて、ピアノの周りに集まってきては一緒に歌ったり、踊ったりし始めるんです。私が楽しんでいると、子ども達も自然と楽しくなるみたいで、ピアノにはずいぶん助けられました。
他にもお風呂上りに裸のままで楽器を持って、私のピアノに合わせてリトミックのように歩いたり、止まったり、そんな遊びを毎日やっていましたね。私の気分転換というのもありましたが、子どもを叱ってばかりいるのは嫌なので、よかったと思います」
―でも、クラシックに対して敷居が高いと感じているお母さんはいるかと思いますが。
「今回のCDも子どもが遊びながら聴けるような編成になっています。1枚はリズムが楽しい15曲、もう1枚はメロディを楽しめる15曲を選んでいます。たとえば、「くるみ割り人形」の「花のワルツ」などをかけると、きっと子ども達はそれぞれの情景を浮かべて、楽しむと思うんですね。私もこの曲を聴くと、いろいろな映像が浮かんできます。そういう聴き方で全然いいと思います」
Interviewed & Written By 服部のり子(音楽ライター)
■伊藤美佳 プロフィール
(株)D・G・P代表取締役。0歳からの乳幼児親子教室「(社)輝きベビーアカデミー」代表理事。
幼稚園教諭1級免許。日本モンテッソーリ協会教員免許。保育士国家資格。小学校英語教員免許。NPO法人ハートフルコミュニケーションハートフル認定コーチ。サンタフェNLP/発達心理学協会・ICNLPプラクティショナー。日本メンタルヘルス協会認定基礎心理カウンセラー。自身の子どもがモンテッソーリ教育の幼稚園で素晴らしい成長を遂げたことに感銘を受け、モンテッソーリ教師の資格を取得。
伊藤美佳公式サイト「輝きベビーアカデミー」
■リリース情報
2021年4月7日発売
『モンテッソーリ教育×ハーバード式 子どもの才能を伸ばすクラシック』
CD / iTunes / Amazon Music / Apple Music / Spotify
収録予定曲:
Disc 1: リズムを楽しもう!
01. アイネ・クライネ・ナハトムジーク~第1楽章 (モーツァルト) / ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団、指揮:ヘルベルト・フォン・カラヤン
02. 歌劇《フィガロの結婚》序曲 (モーツァルト) / ベルリン・ドイツ・オペラ管弦楽団、指揮:カール・ベーム
03. 熊蜂の飛行 (リムスキー=コルサコフ) / スイス・ロマンド管弦楽団、指揮:エルネスト・アンセルメ
04. 弦楽セレナード~第1楽章 (チャイコフスキー) / ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団、指揮:ヘルベルト・フォン・カラヤン
05. ピアノ五重奏曲《ます》~第4楽章 (シューベルト) / アルフレッド・ブレンデル(ピアノ)
06. 剣の舞 (ハチャトゥリアン) / ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団、指揮:アラム・ハチャトゥリアン
07. 歌劇《セビリアの理髪師》序曲 (ロッシーニ) / ミラノ・スカラ座フィルハーモニー管弦楽団、指揮:リッカルド・シャイ―
08. ユーモレスク (ドヴォルザーク) / クリスチャン・フェラス(ヴァイオリン)、ジャン=クロード・アンブロシーニ(ピアノ)
09. ピアノ・ソナタ第11番~第3楽章 (モーツァルト) / アンドラーシュ・シフ(ピアノ)
10. 無伴奏チェロ組曲第1番~前奏曲 (J.S.バッハ) / ピエール・フルニエ(チェロ)
11. バレエ《くるみ割り人形》~序曲 (チャイコフスキー) / モントリオール交響楽団、指揮:シャルル・デュトワ
12. 協奏曲集《四季》第1番〈春〉~第1楽章 (ヴィヴァルディ) / イ・ムジチ合奏団、ピーナ・カルミレッリ(ヴァイオリン)
13. 《アルルの女》第2組曲~ファランドール (ビゼー) / ロンドン交響楽団、指揮:クラウディオ・アバド
14. ローマの松~アッピア街道の松 (レスピーギ) / ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団、指揮:ヘルベルト・フォン・カラヤン
15. バレエ《くるみ割り人形》~花のワルツ (チャイコフスキー) / モントリオール交響楽団、指揮:シャルル・デュトワ
Disc 2: メロディを楽しもう!
01. 《ペール・ギュント》第1組曲~朝 (グリーグ) / ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団、指揮:ヘルベルト・フォン・カラヤン
02. 別れの曲 (ショパン) / ヴラディーミル・アシュケナージ(ピアノ)
03. 亡き王女のためのパヴァーヌ (ラヴェル) / フィルハーモニア管弦楽団、指揮:カルロ・マリア・ジュリーニ
04. 聖母の御子 (リョベート) / エドゥアルド・フェルナンデス (ギター)
05. 歌劇《カヴァレリア・ルスティカーナ》~間奏曲 (マスカーニ) / ミラノ・スカラ座管弦楽団、指揮:ヘルベルト・フォン・カラヤン
06. 組曲《動物の謝肉祭》~白鳥 (サン=サーンス) / マルタ・アルゲリッチ、ネルソン・フレイレ(ピアノ)、ミッシャ・マイスキー (チェロ)
07. パッヘルベルのカノン (パッヘルベル) / イ・ムジチ合奏団
08. 子供の情景~トロイメライ (シューマン) / ヴラディーミル・アシュケナージ(ピアノ)
09. 愛の挨拶 (エルガー) / チョン・キョンファ(ヴァイオリン)、フィリップ・モル(ピアノ)
10. ピアノ協奏曲第21番~第2楽章 (モーツァルト) / フィルハーモニア管弦楽団、ヴラディーミル・アシュケナージ(ピアノ&指揮)
11. 月の光 (ドビュッシー) / ジャン=イヴ・ティボーデ(ピアノ)
12. 歌劇《カルメン》~第3幕への間奏曲 (ビゼー) / ロンドン交響楽団、指揮:クラウディオ・アバド
13. ピアノ・ソナタ第11番~第1楽章 (モーツァルト) / アンドラーシュ・シフ(ピアノ)
14. アイネ・クライネ・ナハトムジーク~第2楽章 (モーツァルト) / ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団、指揮:ヘルベルト・フォン・カラヤン
15. 春への憧れ (モーツァルト) / ペーター・シュライアー(テノール)、アンドラーシュ・シフ(ピアノ)
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