リヒャルト・シュトラウス作品ベスト:重要な10作品
『2001年宇宙の旅』に登場する《ツァラトゥストラはかく語りき》をはじめとする名曲10曲を中心に、リヒャルト・シュトラウスのベスト作品をご紹介する。
リヒャルト・シュトラウス(1864年6月11日~1949年9月8日)は、ドイツの優れたロマン派の作曲家である。彼には2人の音楽の神様がいた。まずはモーツァルトで、シュトラウスが19世紀のミュンヘンで成熟していく過程で、その音楽から穏やかな影響を受けておいる。
2人目はワーグナーで、シュトラウスの手本となり、保守的なルールから彼を解放した。シュトラウスの女性の声に対する素晴らしい理解は、55年間彼の妻であったソプラノのパウリーネ・デ・アーナによるものであった。
そしてシュトラウスの作品におけるもう1つの忘れられない影響は、彼の父であるフランツであった。彼はミュンヘン宮廷オーケストラの首席ホルン奏者であり、この楽器のドイツの第一人者として認められていた。
シュトラウスの音楽は、ポスト・ワーグナーの調性感、華麗なオーケストレーション、声(とりわけソプラノへの)に対する完全な理解、そして複雑なオペラのプロットが特徴である。リヒャルト・シュトラウスは、スタンリー・キューブリック監督の映画『2001年宇宙の旅』のメインテーマとして使用された交響詩《ツァラトゥストラはかく語りき》で最もよく知られている。
代表作には、オペラ《サロメ》《エレクトラ》《ばらの騎士》、リート(特に《4つの最後の歌》)、交響詩《ツァラトゥストラはかく語りき》《ドン・ファン》《死と変容》《ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら》《アルプス交響曲》、その他《メタモルフォーゼン》などの器楽作品がある。
リヒャルト・シュトラウス作品ベスト: 重要な10作品
ツァラトゥストラはかく語りき
シュトラウスは、交響詩《ツァラトゥストラはかく語りき》で最も知られている。この曲は、スタンリー・キューブリック監督の映画『2001年宇宙の旅』のメインテーマとして使用され、またBBCがアポロの月面着陸を報道する際にも使用された。
この作品は、シュトラウスがミュンヘンのバイエルン国立歌劇場の首席指揮者に就任した1896年に、ニーチェの同名の哲学小説に触発されて作曲されている。
アルプス交響曲
シュトラウスの傑作交響詩シリーズの最後の作品は、アルプスの山に登ったときの11時間(夜明け前の薄明かりから翌日の日没まで)の体験を描いている。《アルプス交響曲》が作曲された頃、シュトラウスは交響詩から脱却し、偉大なオペラ作曲家としての地位を確立していた。
死と変容
リヒャルト・シュトラウスの交響詩《死と変容》は、芸術家の死を描いた作品である。豊かで多彩なオーケストレーションは、成熟したシュトラウス特有のものだ。シュトラウスは亡くなる直前に、「死ぬということは、私が《死と変容》で作曲した通りのことだ」と語ったという。
ばらの騎士
《ばらの騎士》は、リヒャルト・シュトラウスの最高傑作の一つであり、現在も最も上演されているオペラだ。
《ばらの騎士》は、リヒャルト・シュトラウスと劇作家フーゴ・フォン・ホーフマンスタールとの初の共同制作作品であり、オペラにおける最も重要な芸術的パートナーシップの一つの始まりとなった。シュトラウスはスコアに多くのワルツを取り入れており、それがこのオペラを特徴づけている。
ドン・ファン
リヒャルト・シュトラウスは、交響詩《ドン・ファン》で国際的なキャリアをスタートさせた。この作品はすぐに成功を収め、まだ20代半ばの若い作曲家としては驚くべき成果を収めている。
シュトラウスによる伝説的な“女たらし”の物語は、鮮やかなオーケストレーション、強烈なリリシズム、短い動機の使用など、彼の音楽語法によって、印象的かつ永続性のあるものとして表現されている。
エレクトラ
シュトラウスの強烈な一幕のオペラ《エレクトラ》は、エレクトラが、父の殺害に使われた斧を掘り起こし、父を殺した犯人である母を殺害し復讐するという、暴力的な悲劇である。
シュトラウスが《エレクトラ》の原作となった戯曲を書いたのはフーゴ・フォン・ホーフマンスタールだが、《ばらの騎士》が二人の初めての共同作業となり、その後も数々の主要な作品で共演した。エレクトラという役は、ドラマティック・ソプラノのレパートリーの中で最も要求の厳しいものの一つである。
4つの最後の歌
リヒャルト・シュトラウスのソプラノ声への生涯にわたる愛情は、死の1年前に作曲され、彼のあらゆるジャンルの最高傑作の一つである《4つの最後の歌》で頂点に達した。
《4つの最後の歌》では、シュトラウスは自分の長いキャリアと初期の作品を振り返り、特に60年前に書かれた交響詩《死と変容》を取り上げている。この歌曲集はすぐに、シュトラウスの業績の中でも最高のものとして評価された。
メタモルフォーゼン―23の独奏弦楽器のための習作
第二次世界大戦末期、シュトラウスはベートーヴェンの《英雄》交響曲の〈葬送行進曲〉を引用して、弦楽の名曲《メタモルフォーゼン》を作曲した。ドイツ社会は絶え間ない爆撃によって瓦礫と化し、ミュンヘン、ウィーン、ドレスデンなどの大規模なオペラハウスは燃え尽きてしまった。その悲報に接したシュトラウスの絶望を表現したものが《メタモルフォーゼン》である。
サロメ
〈7つのヴェールの踊り〉で有名なシュトラウスの一幕のオペラ《サロメ》は、欲望や反発を題材と同様、その革新的なハーモニーが衝撃的であった。オスカー・ワイルドの悪名高い戯曲を題材にした《サロメ》は、1905年12月9日のドレスデンでの初演時に観客に衝撃を与えたが、現在では世界中で最も上演されているオペラの一つである。
ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら
リヒャルト・シュトラウスの代表作の一つである《ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら》は、2つのテーマで表現されるドイツの農民の伝説的な奇人、ティル・オイレンシュピーゲルと、彼の愉快ないたずらの話が語られる。
シュトラウスの見事なオーケストレーションによるスコアは、名人芸的な楽器演奏と色彩豊かな不協和音で、モダニストとしてのシュトラウスを示しており、彼の最も人気のある交響詩の一つとなっている。