協奏曲トップ10:バッハ、ベートーヴェンなどによる偉大なる名作
バッハ、ベートーヴェン、モーツァルト、ラフマニノフなどの作曲家による、名曲を収録したベスト・コンチェルトをご紹介する。
協奏曲(コンチェルト)は、大小すべての楽器のために、すべての形式と規模によって提供されているが、どれが最高なのだろうか?我々は議論に議論を重ね、偉大な協奏曲のリストを作成した。スクロールして、バッハからバルトークまでのトップ10の協奏曲のセレクションをご覧いただきたい。ただし必ずしもこの順序である必要はないのだが…
ベスト・コンチェルト:偉大なる名曲トップ10
10.シベリウス:ヴァイオリン協奏曲
このセレクションでは、ヴァイオリンの出番が多くなっているが、ベスト・コンチェルトのリストはシベリウスの作品なしでは完成しないだろう。作曲家は、自分自身がヴィルトゥオーソ・ヴァイオリニストになることを切望していたが、実現することはできなかった。
この身の毛もよだつような作品は、1904-05年に書かれた彼の唯一の協奏曲であり、彼の復讐であったと、少し意地の悪い言い方をする人もいる。終楽章はかつてドナルド・トーヴィーに「北極熊のためのポロネーズ」と評され、曲全体がシベリウスの生まれ故郷であるフィンランドの氷で輝いているかのようだが、この協奏曲の圧倒的な個性、独特の音世界、ソリストへの全面的な挑戦は、数ある協奏曲の中でも最も素晴らしいものの一つである。
9.ラフマニノフ:ピアノ協奏曲 第2番
基本的にラフマニノフのピアノ協奏曲第2番は完璧であり、非常に優れた協奏曲の一つである。最初の一音から最後の一音まで栄光に満ちている。ソリストとオーケストラの理想的な融合、ジェットコースターのように激しく揺れ動く感情、そして壮大な音楽的主張に織り込まれたインスピレーションに満ちたテーマはどういうわけか、あなたの心を奪い去る力があるのだ。
1900-01年に作曲されたこの作品は、不幸にもセルゲイ・ラフマニノフが交響曲第1番の初演に失敗し、数年にわたる創作活動の妨げとなっていたことから生まれた。ラフマニノフは医師のニコライ・ダーリ博士のもとで催眠療法を受けて立ち直ることができたため、作品を博士に捧げた。9位に甘んじているのは、あまりにも当然の選択だからであろう。
8.ヴィヴァルディ:四季
ヴィヴァルディの《四季》は、誰もがよく耳にしているがゆえに、この作品がいかに素晴らしいものであるかを忘れがちだ。4つの協奏曲が一つになったこの作品は、それぞれの協奏曲に季節が割り当てられており、各曲が3つの楽章を持っている。そしてそれぞれの楽章に、春の鳥のさえずり、夏の雷雨、真冬のアイススケート選手の緊張した滑りなど、音楽が示す情景を描いた詩が添えられている。
1725年にアムステルダムで出版されたが、その8、9年前にヴェネツィアで書かれた《和声と創意の試み(Il cimento dell’armonia e dell’inventione)》という協奏曲集の一部であり、和声、アイディア共に革新性に富んだ作品である。
7.ハイドン:トランペット協奏曲
太陽のように明るい作曲家によって最も明るい楽器が使用されたハイドンのトランペット協奏曲を好きでないという人がいるだろうか?1796年に書かれたこの曲は、ハイドンの友人であり当時高名なトランペット奏者であったアントン・ヴァイディンガーのために作られたものである。
ヴァイディンガーは名演奏家であると同時に楽器製作者でもあり、全音域で半音階的を演奏できる有鍵トランペットを開発している。彼の開発した楽器は、現在のバルブ(息の通り道を切り換える装置。演奏中に管の長さを変えることで半音階の演奏を可能とする)付きのトランペットの先駆的存在と言えるだろう。3楽章からなるこの協奏曲は、ハイドンらしい活気と叙情性をもっており、ハイドン特有の輝くような音色を最大限に発揮している。そしてそれは演奏者にトランペットの歌心と輝かしい音色を披露するための貴重な機会を与えているのだ。
6.エルガー:チェロ協奏曲
チェロの澄んだ音色と優れた表現力は、感情を高揚させる音楽を書く作曲家にしばしば大きな刺激を与えてきたが、エルガーも例外ではなかった。彼の哀愁を帯びた協奏曲は、チェロという楽器の多様性を最大限に発揮しているだけではない。壮大さや高貴さを見せる瞬間を、疑いや憧れ、苦悩によって相殺するという、作曲家独自の音楽的言語を象徴するものとなっている。
この作品は、1919年に作曲されたエルガー最後のオーケストラのための大作である。十分なリハーサル時間が取れなかったために初演は失敗に終わり、現在のような人気曲として定着するまでには数十年の歳月を要した。この曲の人気は、ジャクリーヌ・デュ・プレの有名な録音と、クリストファー・ヌーペンによるドキュメンタリー映画でのデュ・プレの演奏に負うところが大きい。
5.バッハ:ブランデンブルク協奏曲 第5番
バッハの6つのブランデンブルク協奏曲のどれもが、私たちのセレクトしたベスト・コンチェルトのリストにランク・インするのは当然のことである。それぞれの協奏曲が、オーケストラのトゥッティと、それぞれの曲で異なる編成の独奏楽器群(小協奏部ともいう)のためのものである。第5番では、ヴァイオリン、フルート、チェンバロが登場し、チェンバロが目まぐるしいカデンツァを奏でる。
このカデンツァはその後数十年、実際にはこの先何世紀もすべてのカデンツァの原型となっているように思える。作曲の時期は明らかになっていない。バッハは、1721年にブランデンブルク=シュヴェート辺境伯クリスティアン・ルートヴィヒに献呈するためにこの協奏曲を書き上げた(そのためにこのタイトルがついている)が、それよりも数年前、ヴァイマルで仕事をしていたときに書かれた可能性も指摘されている。
4.バルトーク:管弦楽のための協奏曲
この協奏曲にはソリストがいない。オーケストラのすべての楽器がそれぞれヴィルトゥオーソとして扱われており、オーケストラ全体の能力も、壮大で、雰囲気があり、時に驚くような発明がなされた5つの楽章の中で強調されている。バルトークは、オーケストラの各楽器セクションをソリストのように扱ったことから、このタイトルを用いたと語っている。
この作品は、彼にとって実用的な意味を持つものだった。バルトークは家族と共に1940年、戦争で荒廃したヨーロッパからアメリカに渡ったが、そこでの暮らしは苦しく、指揮者のセルゲイ・クーセヴィツキーからボストン交響楽団の委嘱作品として依頼を受けたことは、彼にとって大きな喜びであった。そしてクーセヴィツキーとボストン交響楽団によって、1944年12月に《管弦楽のための協奏曲》が初演された。それ以来、バルトークの最も人気のある作品の一つとなっている。
3.ブラームス:ヴァイオリン協奏曲
ロマンティックな協奏曲の「軍馬」の時代に到達したブラームスのヴァイオリン協奏曲は、基本的に無敵である。壮大なスケールと感情の幅広さを持つこの作品は、ヴァイオリンが可能とする名人芸的な技巧だけでなく、何よりも音色の美しさを引き出しているのだ。
第1楽章の展開部での深く豊かな重音奏法や、荘厳な緩徐楽章でのオーボエとのデュエットでの凝縮された歓喜に耳を傾けてみてほしい。この協奏曲は、ブラームスの親友で、1879年にライプツィヒで世界初演を行った当時最大のヴァイオリニスト、ヨーゼフ・ヨアヒムのために書かれた。躍動的なハンガリー風舞曲によるフィナーレは、ブラームスの親友の故郷に対する明確な賛辞である。
2.モーツァルト:クラリネット協奏曲
間違いなく、モーツァルトほどクラリネットのために華麗な曲を書いた作曲家はいないだろう(ブラームスやプーランクはそれに匹敵するが)。彼の手にかかると、この楽器はまるでホットチョコレートのようにその音色を溢れさせる。モーツァルトはあらゆる場面で楽器の特性を最大限に引き出し、まるでオペラ歌手の歌声のように(おそらくメッゾ・ソプラノのように)、泡立ち、混ざり合い、語る能力を強調するのだ。
モーツァルトのクラリネット協奏曲は、協奏曲の中でも最も偉大な作品の一つだが、もともとはバセットホルンのために作られたものであった。モーツァルトの《レクイエム》で際立って特徴的なその非常に暗い音を響かせていたこの楽器の名手、アントン・シュタードラーのために作られたもので、1791年10月にプラハでK.622として初演された(ただしバセットホルンではなくクラリネットで)。モーツァルトの遺作の一つで、死後に出版された。穏やかなアレグロ、穏やかで優しい緩徐楽章、そしてたまらなく楽しいフィナーレの3つの楽章で構成されている。
1.ベートーヴェン:《皇帝》協奏曲
ベートーヴェンの最後のピアノ協奏曲である《皇帝》は、どうしても本リストのトップに置かざるを得ない。この曲は刺激的で、独創的で、名人芸的で、挑戦的で、忘れがたいという、協奏曲に求められるものをすべて備えているのだ。1809年から1811年にかけて作曲されたこの曲は、ベートーヴェンの5つのピアノ協奏曲の中で唯一、ベートーヴェン自身が演奏していない曲である。
ちなみに、この曲は皇帝とは関係なく、当時のベートーヴェンの主要なパトロンであったルドルフ大公に捧げられたものである。カデンツァは珍しいことに、第1楽章のアレグロの冒頭に置かれている。緩徐楽章はソリストと柔らかい響きを奏でる弦楽器の後光が天上の交わりであり、フィナーレは「歓喜の歌」といえるほどの価値をもった春の歩みを感じさせてくれる。
おすすめの録音
アルトゥーロ・ベネデッティ・ミケランジェリと、カルロ・マリア・ジュリーニ指揮ウィーン交響楽団によるベートーヴェンの《皇帝》協奏曲の録音。
ピアニストのアルトゥーロ・ベネデッティ・ミケランジェリと、カルロ・マリア・ジュリーニ指揮のウィーン交響楽団という巨匠たちが、ベートーヴェンの《皇帝》協奏曲の史上最高の演奏を披露している。
「偉大なピアニストによる偉大な演奏」—グラモフォン・クラシックミュージックガイド(2010年)
Written By uDiscover Team
■リリース情報
2020年1月22日発売
ベートーヴェン: ピアノ協奏曲第5番《皇帝》
CD
カルロ・マリア・ジュリーニ指揮、ウィーン交響楽団
アルトゥーロ・ベネデッティ・ミケランジェリ(ピアノ)