年末の風物詩として親しまれている、ベートーヴェンの「合唱付き」交響曲第9番を知る

Published on

あらゆる交響曲の中でも最も偉大な作品の一つであり、「合唱付き」交響曲としても知られているベートーヴェンの交響曲第9番にまつわるストーリーをご紹介する。

ベートーヴェンの交響曲第9番ニ短調作品125は、ベートーヴェンの最高傑作の一つであり、あらゆる交響曲の中でも最高傑作の一つとして広く知られている。交響曲第9番は、シラーの詩である「歓喜に寄す」を4人のソリストと合唱団が歌う終楽章を持つことから、「合唱付き」交響曲とも呼ばれている。ベートーヴェンはこの交響曲の作曲中に着実に聴力を失っていき、1824年5月7日の初演時には重度の聴覚障害者となっていた。クラシックの常識を覆したベートーヴェンの「合唱付き」交響曲である交響曲第9番にまつわるストーリーをご紹介したい。

ベートーヴェンの「合唱付き」交響曲第9番を知る
名前の由来は?

ベートーヴェンの交響曲第9番は、第4楽章を4人のソリストと合唱のために作曲するという異例の方法をとったことから、「合唱付き」交響曲とも呼ばれている。これは、人類の普遍的な兄弟愛をテーマにしたシラーの高揚感あふれる詩「歓喜に寄す(An Die Freude)」の一部を用いたものである。

知っておくべきこと

この交響曲は、1823年にロンドンのフィルハーモニー協会から50ポンドで依頼されたものだが、その6年前、ベートーヴェンは別の交響曲の依頼を受け、失敗していた。1824年5月7日にウィーンで行われた初演の演奏の出来は芳しいものではなかったが(一方で大成功を収めている)、イギリスでの初演は1825年3月21日にロンドンのアーガイル・ルームで行われ、ロイヤル・フィルハーモニック協会が設置した青い額が目印となっている。現在も同協会は、このとき自分たちの手柄を誇りに思っており、現代作曲家への委嘱を続けている。

しかし、オーケストラ、合唱団、ソリストのために莫大な費用がかかったため、ベートーヴェンの利益はわずかなものとなり、借金の返済もままならなかった。

ベートーヴェンは、交響曲第9番が世界的に有名になった頃には、耳が遠くなって指揮ができなくなっていた。ウィーンでの初演では、彼は舞台の脇に座って拍子をとった。ベートーヴェンは演奏後、オーケストラより数小節遅れていて、アルト歌手のカロリーネ・ウンガーが彼を優しく振り向かせるまで、聴衆がスタンディングオベーションをしていることに気がつくことができなかった。

「合唱付き」交響曲では、ベートーヴェンは古典派の交響曲における構造を限界まで高めており、高尚な哲学的テーマである、人類の統一性と宇宙での我々の立場を表現している。従来の4楽章制の交響曲の型に沿っているように見えるが、大規模な合唱を伴う第4楽章は全く従来の交響曲にはないものであった。この曲は、前の楽章のテーマの回想から始まるが、バスのソリストのために書いた「おお友よ、このような音ではない、もっと楽しい、もっと歓びに満ちた音を奏でよう」というフレーズが示すように、ベートーヴェンはそれまでのことを全て否定しているように見える。続いて低声部が「歓喜の歌」の主題を歌い、やがて合唱が高らかに加わっていく。

ベートーヴェンの「合唱付き」交響曲は、後続の作曲家のインスピレーションの源となり、19世紀のロマン派運動の要となった。ブラームスは、交響曲第1番のフィナーレで「歓喜の歌」のテーマを持ち出していると非難された(彼は「どんな愚か者でもわかるだろう!」と臆面もなく反論している)。そしてワーグナーはそれを「音楽が自分の特殊な要素から普遍的な芸術の領域へと救済されること」と表現している。さらにベートーヴェンの交響曲第9番のスケールの大きさと野心は、ブルックナー、リスト、マーラーといった作曲家たちの、規模が大きく雄大な交響曲への扉を開くことにもつながっている。

この交響曲は、希望と結束の力強いメッセージとして使われ続けている。1951年、ヴィルヘルム・フルトヴェングラーとバイロイト祝祭管弦楽団は、この交響曲を演奏してバイロイト音楽祭を再開したが、これは第二次世界大戦後、連合国側が音楽祭を一時的に中断していたためである。また、1989年のベルリンの壁崩壊を記念して、レナード・バーンスタインが、ドイツの両国家と戦後のベルリンを占領していた4つの国の音楽家をオーケストラに迎え、ブランデンブルク門のそばでベートーヴェンの交響曲第9番を指揮した伝説的な演奏会が行われた。シラーの「歓喜に寄す(Ode An Die Freude)」の言葉が変更されたのが大きな特徴で、「歓喜(Freude)」が「自由(Freiheit)」になった。

演奏できるか?

オーケストラの楽器を演奏しない人は無理かもしれないが、歌手は第4楽章に力を入れることができるかもしれない。しかし、注意していただきたいのは、この合唱を伴う楽章は歌手にとって過酷なものであり、特にソプラノ歌手は小節ごとに非常に高い音を歌わなければならない。ベートーヴェンは、歌手の歌いやすさについては考慮していなかった。

どこかで聞いたことがある?

ベートーヴェンの「合唱付き」交響曲第9番は、今でも世界で最もよく演奏されるオーケストラ作品の一つである。この曲はBBCプロムスで毎年恒例となっており、伝統的にシーズンの最後の夜に演奏されている。また、BBCの『無人島レコード』で最もリクエストの多い作品の一つでもあるのだ。

「歓喜の歌」は、元旦に世界中で歌われ、多くのオリンピックの開会式や閉会式でも演奏されている。さらに「マペット・ショー」ヴァージョンの「第九」も忘れてはいけない。

ベスト・レコーディング

1960年代から1980年代にかけて、カラヤンとベルリン・フィルによるベートーヴェンの交響曲の録音は、一時代を築いた金字塔であった。カラヤンはベートーヴェンの交響曲第9番をステレオで3回録音しているが、その中でも1977年の録音が最も優れていると言えるだろう。ベートーヴェンの崇高な構想の力強さと壮大さを大きなエネルギーによって捉えており、ソリストのアンナ・トモワ=シントウ、アグネス・バルツァ、ペーター・シュライアー、ジョゼ・ヴァン・ダムは、個人としてもチームとしても素晴らしい。

Written By uDiscover Team



Share this story

Don't Miss

{"vars":{"account":"UA-90870517-1"},"triggers":{"trackPageview":{"on":"visible","request":"pageview"}}}
モバイルバージョンを終了