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マーヴェレッツの「Please Mr. Postman」はいかにしてモータウン初の全米No.1シングルに輝いたのか
シンプルなアイデアから着想を得た曲が、傑作と呼ばれることはしばしばある。マーヴェレッツ(The Marvelettes)のリード・ヴォーカル、グラディス・ホートン(Gladys Horton)は、遠く離れた場所にいるボーイフレンドからの手紙を待ちわびている。手紙ではなく、もしくはただのハガキなのか、とにかくどんなかたちにせよ、彼からの連絡を懇願しているのだ。不安、恐れ、孤独の中で、もしかすると待つだけ無駄なのかもしれないとさえ思わせるのだが、郵便配達員は持たされた物を配達することしかできないのだ。
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R&Bの傑作
1961年春、マーヴェレッツがモータウンのレーベル、タムラ・レコードによる2度目のオーディションで、この手紙を待つブルース・ソングを歌った当時の彼女たちはザ・マーベルズ(The Marvels)として知られていた。この曲は、彼女たちの友人であるウィリアム・ギャレットが書いたものを、当時のリード・シンガーだったジョージア・ドビンズ(Georgia Dobbins)が手を加えたものだった。
彼女はオーディション後にグループを脱退し、モータウンのボスであるベリー・ゴーディ(Berry Gordy)によってグループ名はより “少女的な”ものへと改名された。そうして誕生したマーヴェレッツは、当時のモータウンで作曲チームとして脚光を浴び始めていたブライアン・ホーランド、ロバート・ベイトマン、フレディ・ゴーマン(実際に郵便配達員だったキャリアを持つ)によるトリオによって手直しされた「Please Mr. Postman」を同年8月21日に録音した。
このレコードは紛れもなくR&Bの傑作だ。メッセージがダイレクトに伝わり、歌詞の節々に切望が感じられる。楽器による演奏が削ぎ落とされ、グラディス・ホートンがかすれ声で「手紙を届けて、できるだけ早くね」と唱えるように嘆願する孤独で絶望的な響きを持った歌詞を含め、非常に巧妙に作られた作品なのだ。
「あの頃の私たちはガチガチに緊張していました」
当時のアメリカは、ベトナム戦争への関与をエスカレートさせており、国内では、南部から多くのアフリカ系アメリカ人が仕事と解放を求め、シカゴやモータウンの故郷であるデトロイトといった北部の都市へと集団移動していた。その為、多くのガールフレンドたちが、故郷を離れたボーイフレンドからの手紙を待ち望んでいたのだ。
「Please Mr. Postman」は約半年間にわたって全米チャート入りを果たし、1961年12月には1位に輝いた。ミシガン州インクスター出身のガールズ・グループであったマーヴェレッツにとって初のスタジオ・レコーディングとなった同曲は、目覚ましい結果を収めた。
当時休息を必要としていたもうひとつのガールズ・グループ、シュープリームス(Supremes)のフローレンス・バラードは、セッションではリラックスするようにと彼女たちに助言したそうだが、後にグラディス・ホートンは、当時の自分たちを振り返り、「まさに、あの頃の私たちはガチガチに緊張していました」と語っている。ちなみにこのセッションに参加したドラマーは、まだ経験の浅いパフォーマーで、マーヴィン・ゲイ(Marvin Gaye)という名の希望に満ちた22歳の細身の青年だった。
「Please Mr. Postman」は、当時無名だったザ・ビートルズが、彼らの1963年のセカンド・アルバム『With The Beatles』のために録音したことによって予想外の再ブレイクを果たし、マーヴィン・ゲイの演奏を彷彿とさせるリンゴ・スターのドラムは、“ロック”世代の心に永久に刻み込まれた。
カーペンターズもまた「Please Mr. Postman」のファンであり、R&Bよりはカントリー・ポップに近いスタイルで録音されたこの曲のカヴァーで1975年に全米1位を獲得した。
「Please Mr. Postman」のヒットを受けて、さらなる郵便物に纏わる物語が展開されていった。マーヴェレッツの次のシングル「Twistin’ Postman」では、主人公の苦悩が晴らされた。エルヴィス・プレスリーの「Return To Sender」もまた、謙虚な郵便配達人にスポットライトを当てている。ケティ・レスターの1962年の大ヒット曲「Love Letters」は、この話題がまだまだ旬であることを証明し、ディー・ディー・シャープの「Mashed Potato Time」は、音楽的に類似しているのに加え、歌詞の中でこの曲に言及している。
しかし、「Please Mr. Postman」がもたらした最大の文化的影響は、モータウンをポップ・ミュージック界における中心的な存在へとのし上げたことだろう。この曲こそ、モータウン初の全米No.1シングルなのだ。
Written By Ian McCann
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