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ジュリア・マイケルズの魅力を解説:3時のヒロイン「アッハーン」ネタで話題の作曲家/シンガーとは?
2019年12月9日に日本テレビ系で放送された“一番面白い女性”を決める賞レース「女芸人No.1決定戦 THE W 2019」で優勝した「3時のヒロイン」。彼女たちが決勝で披露したネタにほぼ丸々1曲使用した楽曲「Uh Huh」で日本で注目が高まっているソングライターでありシンガーでもあるジュリア・マイケルズ。そんな彼女の経歴と魅力について、音楽ライターの松永尚久さんに解説頂きました。
とあるパーティに参加していた普段仲の良い女性3人のうちのひとりが、付き合っている男性の浮気を相談していたところ、他のひとりがその彼とキスしたことがあると告白。ちょっとした修羅場になりそうな場面で、急にバックに流れていた「アッハーン」というフレーズに浮気相手の女性が巧妙なダンスを繰り広げ、切り抜けるというネタで、2019年12月に開催された「女芸人No.1決定戦 THE W 2019」において、見事グランプリを獲得したトリオ、「3時のヒロイン」。
THE W、優勝しました!!!😭
ありがとうございました!!!!! pic.twitter.com/VXN6FWuQya— 3時のヒロイン 福田麻貴 (@fukudamaki) December 9, 2019
そのキレ味鋭いダンスとともに注目されたのが、バックに流れていた「アッハーン」の発信源となった楽曲だ。ネタ披露後、瞬く間にSNS上では話題を呼び、そしてこの楽曲はジュリア・マイケルズが発表した「Uh Huh」であることが判明。すると、楽曲のダウンロードが前日比132倍、ストリーミングでは22倍を記録。さらに動画サイトのコメント欄には日本語での投稿が相次ぎ、海外でも「日本で何が起こっているのか?」と、話題が話題を呼ぶ状況になった。
そもそもこの楽曲は、ジュリアが2017年にリリースした『Nervous System – EP』に収録されている楽曲なのであるが、実は彼女シンガーとしてだけではなく、シンガーソングライターとしても活躍し、注目される才能の持ち主。「アッハーン」というキャッチーなフレーズの裏に潜む、彼女の魅力について以前プロモーション来日をした際の本人コメントを織り交ぜながら、掘り下げてみたい。
1. ジャスティン・ビーバーなどを手がける「ヒット請負人」としてのキャリア
1991年にアメリカ・カリフォルニアにて生まれたジュリア。12歳の頃からシンガーになることを志し、16歳の頃からソングライティングを開始。やがて、その楽曲センスが認められるようになり、2010年代よりソングライターとしての音楽キャリアをスタートさせた。そんな彼女が一躍注目を集めたのが、2015年にジャスティン・ビーバーに提供した「Sorry」だ。
不誠実な態度をとってしまい、自分の元を離れてしまった恋人に対して、ひたすら謝りまくっている楽曲。当時、プライベート(特に恋愛関係)でお騒がせを起こしていた彼の状況を的確に、かつポップ・センスあふれる旋律で表現している仕上がりになっていると評判を呼んだのだった。またこの楽曲の他にもセレーナ・ゴメス「Good for You」、エド・シーラン「Dive」などにもクレジット。どれも歌い手の心境や現状を丁寧にかつ明快(モダン)に表現していると注目を集め、瞬く間にヒット請負人としての存在感を高めていった。
そんな彼女は楽曲を提供することに対して「とにかく『我慢』が大切。相手が納得するものを提示できるまで、ひたすらアイデアを考えていかなくてはいけないから」と語る。またヒット請負人的な存在になったことに関して「もちろんプレッシャーもある。だけど、その楽曲に関わる人みんながプレッシャーを抱えながら、同じ場所で向き合っているんだということに気づいてからは、過度に緊張することはなくなったかな」。
「ヒット曲」を量産してきた経験があるゆえ、「Uh Huh」においても聴き手の心を奪うあのフレーズが表現できたに違いない。
2. カメレオンのような表現力のあるヴォーカル
数多くのヒット曲を請け負ういっぽうで、ヴォーカリストとしても活動しているジュリア。その才能が注目されるきっかけを作ったのが2015年に発表された、ゼッドの「Daisy」である。片思いの相手をひなぎく(デイジー)に例え、届かない思いのせつなさを綴った楽曲。凛とした表情を見せながらも、その奥にはどうしても伝えられない気持ちを抱えた心情を丁寧に歌い上げる声に、多くの人が魅了されたのだった。
その後は、カイゴとともに2016年リオ・デ・ジャネイロ・オリンピックの閉会式でパフォーマンスをしたり、ショーン・メンデス、ファイヴ・セカンズ・オブ・サマーなど、そうそうたるミュージシャンの楽曲にフィーチャリングで参加。
時には圧倒的なインパクトを与えるストロングな印象を、また時にはすべてを包み込むような優しさを表現。楽曲ごとに異なる表情を描いている声は、まるでカメレオンのよう。だが、そこには必ず彼女らしいスパイス(ちょっとハスキーな部分や、あっけらかんとしたキャラクター)も散りばめていて、その絶妙なバランス感覚が、多くのミュージシャンが共演したがる要因になっているのかもしれない。
3. 失恋経験など、ネガティブを武器にした歌詞
他のミュージシャンの楽曲提供や参加などでキャリアを磨いてきたジュリア。次第に「自分が感じていることを素直に音楽として表現したい」と思うようになり、シンガーソングライターとしての活動を2016年から本格的にスタートさせ、翌年には初シングル「Issues」をリリースする。恋人との関係の中で巻き起こる「問題の数々(イシューズ)」をどのようにして乗り越えていけばいいのかを、美しいメロディと春風のように軽快なサウンドで表現したこの曲で、第61回グラミー賞においても、主要部門である「最優秀楽曲賞」と「最優秀新人賞」にノミネートされるなど、たちまち多くの称賛を獲得したのだった。
ゆえに、その後リリースした楽曲はどれも大きな話題を呼んでいるが、彼女の楽曲は巧みな音楽センスだけが人気の理由なのではない。「失恋」をベースに、人前であんまり語りたくないネガティブな感情を「これでもか」とばかりに、楽曲の中で吐き出している部分もあるのだ。彼女は「失恋」がいい音楽を作るための最大のモチベーションだと語る。
「そのためだったら、何度だって振られてもいいくらい(笑)。いろんな人生経験を積むことで、ミュージシャンとしてだけでなく人間としても成長できるからね」
また、彼女は楽曲に「結論」や「結末」を提示しない。リスナーと共に、恋愛や人生に悩みながら生活していることが伝わってくる部分が、多くの支持を得ている要因のひとつなのかもしれない。
「音楽を制作するにあたって、決して独りよがりになってはいけないと思っている。自分の楽曲に対しても、必ず第三者の意見を聞いてリスナーにも届くような音楽にしたいとも思っている」
4. ほろ苦い「恋愛」と、ヒットの「方程式」が生み出した「Uh Huh」
ソングライターとして得た表現力と、ジュリアの人生の中で経験したビタースウィートな出来事(恋愛)を融合して完成したのが、この「Uh Huh」という楽曲だ。お互いに相手のことが気になっているのに、肝心の向こうはキスさえ戸惑うほどにシャイで、自分から積極的にアプローチをかけて、何とか相手にアクションを起こして欲しいという「恋の駆け引き」を表現した楽曲(「3時のヒロイン」のネタで例えるなら浮気をする側の女の子の視点で描かれたものかも)。
アコースティックギターをメインとしたシンプルなサウンドと、ソフトなジュリアの歌声は最初心地いいBGMのような雰囲気なのであるが、サビの「アッハーン」で強烈な(ある種パンク・ロック的な)パンチを放ち、それまでの雰囲気をガラリと変え、一瞬にして楽曲の世界に引き込まれる。ちなみに、この部分では「キスする前の胸の鼓動」を表現しているという。徐々にではなく、一瞬だけ伝えたい感情を爆発させて強烈なインパクトを残す発想力。これがソングライターとして、シンガーとして人気を獲得できる彼女の理由なのであろう。
5. 時代の流れを意識しない、自分らしくあり続けるエネルギー
「Uh Huh」によって、日本でも一躍注目される存在になったジュリアだが、この楽曲は約3年前にリリースされた作品。その後もコンスタントに作品を発表し続け、2019年には『Inner Monologue』というタイトルで2作にミニ・アルバムをリリースしている。
セレーナ・ゴメスや、ワン・ダイレクションのメンバーとしても知られるナイル・ホーランなどとの共演曲なども収録された内容は、タイトル通り彼女の心の内側にあるものを表現したものだ。
「この作品は、私がどういうミュージシャンで人間であるのかを、純粋に表現した内容。聴いてくださった皆さんが、どういう感情を抱いてくれるかも考えないでね」
最新作には、「Uh Huh」のようなパンチの効いたナンバーは少ないかもしれないが、何度も聴くごとに彼女の内面、もしくは誰もが抱えるもどかしい思いに響く仕上がりになっていると思う。今後は、自身の楽曲においては自分の感情に誠実でありたいと語る。
「だって、リリースしてどうなるのか?とか先のことを考えたってストレスにしかならない。だったら、完成して自分が『後悔しない』楽曲を作りたいの。そうしたらどんな結果が出ようが満足できるから。だから、今と真剣に向き合うだけなの」
「アッハーン」の先にあるジュリアの「インナー・スペース(内なる宇宙)」への旅は、これからさらなる広がりを見せそうだ。
Written By 松永尚久
ジュリア・マイケルズ「Uh Huh」
好評配信中 / EP『Nervous System』収録曲
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