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10/13,14東京・豊洲ピットで開催のソウル/R&B系フェス「SOUL CAMP」出演者紹介

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ソウル/R&B系のアーティストが一同に集う音楽フェス「SOUL CAMP」の2年ぶりの開催が決定。豊洲ピットにて2019年10月13日(日)、14日(月・祝)に開催されるこのフェスに出演する海外アーティスト勢を音楽ライター林 剛さんが解説。そちらをまとめて掲載します。

*当日券あり 詳細はこちら
*台風の影響を受け、10月13日(日)の開始時間が変更になっています。

*KARYN WHITEとWRECKX-N- EFFECTのアキル・ダヴィッドソンが、台風の影響による搭乗便の欠航により出演キャンセルになっています。WRECKX-N- EFFECTはマーケルのみの出演。
*SWV、MUSIQ SOULCHILDも台風の影響による搭乗便の欠航により出演キャンセルになっています。
*最新情報は公式サイト公式SNSをご覧ください。


RBRM

〈SOUL CAMP 2019〉初日のヘッドライナーとなるRBRM。この名前を聞いてピンとくる人はまだ少ないかもしれないが、その正体はロニー・デヴォー、ボビー・ブラウン、リッキー・ベル、マイケル・ビヴンズというニュー・エディションの4人によるユニットだ(ファースト・ネームの頭文字をとった名前)。つまりボビー・ブラウン&ベル・ビヴ・デヴォーであり、ラルフ・トレスヴァントとジョニー・ギルがいないニュー・エディションということになる。これまでに何度か分裂や合体を繰り返してきた彼らだが、現在はこのRBRMが実質的にニュー・エディションとして活動している。

ニュー・エディションは、彼らがお手本にしたジャクソン5〜ジャクソンズに匹敵するスター性と実力を備えたソウル/R&Bのボーイズ・グループ。2017年には米BETにて伝記映画『The New Edition Story』も放送された。出世曲となった「Candy Girl」をはじめ、「Cool It Now」、「Mr.Telephone Man」といった80年代前半の甘酸っぱいキッズ・ソウル。少年から大人への成長を謳った「Boys To Men」(マイケル・ビヴンズが後見人となったボーイズIIメンの名前はここから拝借)を含む『Heart Break』(1988年)からのヒットとなった「If It Isn’t Love」や「Can You Stand The Rain」といったジャム&ルイス制作によるアップやスロウ・バラード。初の6人揃い踏みとなった再始動アルバム『Home Again』(1996年)から誕生した「Hit Me Off」のようなヒップホップ・ソウル。楽曲のスタイルやヴォーカルは時代によって異なるが、どの時代もニュー・エディションであり、彼らの歴史を語る上で避けて通れない名曲ばかりだ。

New Edition – If It Isn't Love (Official Music Video)

 

そして、RBRMの構成員であるボビー・ブラウンとベル・ビヴ・デヴォーといえば、ともにニュー・ジャック・スウィング全盛期に、そのムーヴメントを代表する名曲を生んだことも語り草となっている。ボビー・ブラウンは、このたび同じく〈SOUL CAMP 2019〉に出演するベイビーフェイス(とL.A.リード)らのバックアップによる『Don’t Be Cruel』(1988年)から「My Prerogative」や「Every Little Step」などがヒット。一方のベル・ビヴ・デヴォーはイントロから熱狂へ誘い込む「Poison」や「Dope!」などで90年代の幕開けを飾った。特に「Poison」はカーディ.Bの客演(リミックス)版で大ヒットしたブルーノ・マーズ「Finesse」の着想源としても注目を集めただけに、今回ここで彼らのパフォーマンスを観ることの意義は大きい。少し前の話になるが、ビヨンセ「Love On Top」(2011年)のミュージック・ヴィデオがニュー・エディション「If It Isn’t Love」のMVに対するオマージュであったことも含め、昨今はR&Bの世界において彼らがいかにビッグな存在であるかを改めて思い知らされる場面が多い。

RBRMは今夏、ニュー・エディションの再始動においても重要な現場となったEssence Festivalに出演。そこでのライヴを観る限り、ニュー・エディション、ボビー・ブラウン、ベル・ビヴ・デヴォーの代表曲は〈SOUL CAMP 2019〉でもひと通り歌ってくれるだろう。同フェスに出演経験のある80年代デビューのアーティストとしてはLLクール・Jと同じくらい爆発的に盛り上がるニュー・エディション、改めRBRM。今回のライヴではどうなるかわからないが、ボビー・ブラウンがステージに登場する際の“俺様ぶり”にも注目したい。昨年は米BETにて『The Bobby Brown Story』が放送され、それに合わせてテディ・ライリーとベイビーフェイスが制作した新曲「Like Bobby」を発表。「俺の時代が戻ってきた!」とでも言いたげなボビーの、大見得を切るようなパフォーマンスもオーディエンスを興奮させてくれるのではないか…と考えるだけでも楽しい。

KARYN WHITE
(⋆台風の影響で搭乗便が欠航のため出演キャンセル)

〈SOUL CAMP 2019〉初日の紅一点となるのがキャリン・ホワイトだ。キャリンといえば、おそらく多くの人が「Superwoman」(1988年)を歌っていた女性シンガーとして親しんできたのではないかと思う。3週間にわたってR&Bチャート1位の座をキープしたこのバラードは、同じく今フェスに登場するベイビーフェイスがソングライターとしての名声を確立した曲としても知られている。「Superwoman」は、かつてミスコンの常連だったキャリンの美貌も相まって、タイトルだけ見ると、“強い女”や“キャリア・ウーマン”について歌われたかのような印象を受けるが、実際は「私はスーパーウーマン…ではない」という歌。「あなたが望むような完璧な女にはなれないけれど、私には私なりの時間、生き方があるからわかってほしい」といったリリック(大意)は女心を解するベイビーフェイスならではのもので、フェイスがLAリードやダリル・シモンズとペンを交えたこれをキャリンは、切々と、大きなスケールで歌い上げた。

Karyn White Superwoman

 

もともとキャリンは80年代半ばにジェフ・ローバーのアルバムにフィーチャリング・シンガーとして参加し、そこから「Facts Of Love」(1986年)などがヒットしたのを機にソロ・デビュー。「Superwoman」は紛れもなく彼女の代表曲だが、それと前後してアップの「The Way You Love Me」とスロウの「Love Saw It」もR&Bチャート1位を記録している。いずれもベイビーフェイス、LAリード、ダリル・シモンズによって書かれ、制作を手掛けたLA&ベイビーフェイスは、キャリンの出世に貢献しながら、これらの仕事でR&Bプロデューサーとしてトップ・ポジションを獲得した。

一方、同じ頃にジャネット・ジャクソンを世界的なスターにするなどしてLA&ベイビーフェイスと鎬を削っていたのがジミー・ジャム&テリー・ルイスのコンビ。そこでキャリンは2作目のソロ・アルバム『Ritual Of Love』(91年)のメイン・プロデューサーにジャム&ルイスを起用し、煌びやかでアッパーな「Romantic」をR&B/ポップ両チャートの1位に送り込んでいる。セクシーなアルバム・ジャケットを含め、強めの香水が漂ってくるような華やかなイメージは、ニュー・ジャック・スウィングで賑わっていた当時のR&Bを象徴していた。その後、彼女はテリー・ルイスと結婚(後にプロデューサーのボビー・Gと結婚)。1994年にソロ3作目『Make Him Do Right』を出して以降は、子育てなどもあり表舞台から遠ざかっていたが、今振り返れば、“ソウル”や“ブラック・コンテンポラリー”が新しい感性とアティティードを持った“R&B(アール・アンド・ビー)”として進化を遂げた時代に、実力と美貌を備えた女性シンガーとしてシーンの中心にいたのがキャリンだった。今回の〈SOUL CAMP 2019〉で披露されるのも、おそらくこの時代のヒット曲が中心になるだろう。

だが、2012年に18年ぶりとなるアルバム『Carpe Diem』で自身のレーベルから復帰していたことも気に留めておきたい。R&Bとゴスペルを跨ぐ名匠デレク“DOA”アレンがプロデュースした同作は、キャリンいわく“レトロ・アコースティック”な、ネオ・ソウル~オーガニック・ソウル系の楽曲が中心。かつてのイメージとは異なるが、古代ローマの詩人ホラティウスの詩から名付けたアルバム・タイトル(英語でSeize The Day、今を精一杯生きようという意味)よろしく、現代に生きるシンガーとしての前向きな姿勢が感じられる好作だ。また、2017年には、キャリンが共同で脚本を手掛け出演もした映画『Gale & The Storm』が公開され、ジェイ・キング(クラブ・ヌーヴォーの首謀者)などの楽曲を含むサウンドトラックもリリース。2012年の復帰時に来日して以来7年ぶりとなる〈SOUL CAMP 2019〉でのステージは、往時のヒット曲が連発されるのに加えて、近年のそうした活動も反映されるのではないかと期待している。

Wreckx-N-Effect
(⋆アキル・ダヴィッドソンが台風の搭乗便が欠航のため出演キャンセル。マーケルのみの出演)

〈SOUL CAMP 2019〉の海外勢では唯一のラップ・アクトとなるレクスン・エフェクト。紛れもなくラップ/ヒップホップのアーティストだが、それ以上に彼らはニュー・ジャック・スウィングを体現したグループと言ったほうがしっくりくる。なにしろ1989年にモータウンからリリースしたシングルは「New Jack Swing」というタイトルだったのだ。当時、日本のダンス番組で頻繁に流されていたことを知るリスナーもいるだろう。しかも、この曲をメインでプロデュースしたメンバーのマーケル・ライリーは、ニュー・ジャック・スウィングの生みの親であるテディ・ライリーの弟だった。

A・プラスことアキル・ダヴィッドソン、KCことキース・ハンス、ブランドン・ミッチェル、そしてマーケル・ライリーの4人組としてNYのハーレムから飛び立った彼らは、1988年にアトランティックからデビュー。やがてKCが脱退、サウンド・オブ・ニューヨーク/モータウンに移籍し、トリオ体制でファースト・アルバム(1989年)を発表するが、1990年にブランドンが銃弾に倒れ、デビューから2年ほどでA・プラスとマーケル・ライリーのデュオとなった。グループ名のスペルも当初は〈Wrecks-N-Effect〉だったが、ブランドンの他界を機にWrecksをWreckxに変え、〈Wreckx-N-Effect〉として再出発している。

そんな紆余曲折を経て誕生したのが、全米ポップ・チャート2位の大ヒットとなった「Rump Shaker」(1992年)だった。イントロから鳴り響くラファイエット・アフロ・ロック・バンド「Darkest Light」のサックスや〈All I wanna do is zooma-zoom-zoom-zoom in a poom-poom〉というフレーズが頭にこびりついて離れない同曲はサンプリングにまつわる話題も多数。デバージ「I Like It」のラインを引用してラップで客演したテディ・ライリーのヴァースを、当時テディの門下生だったファレル・ウィリアムスが書いていたことは今ではよく知られたトリヴィアだろう。これを含むMCAからのアルバム『Hard Or Smooth』(92年)には「New Jack Swing II (Hard Version)」も収録され、「Rump Shaker」などのヒットとともにニュー・ジャック・スウィングのブームに止めを刺した。

Wreckx-N-Effect – Rump shaker (original video)

 

80年代後半から90年代前半のニュー・ジャック・スウィング全盛期を、ガイやボビー・ブラウン、キース・スウェットらとともに当事者として駆け抜けたレクスン・エフェクト。MCライトの「Ruffneck」(1993年)をプロデュースしていたことも忘れ難い。1996年リリースのアルバム『Raps New Generation』以降はシーンから遠ざかっていたが、近年はチームでの活動を再開しているようで、2018年のEssence Festivalではテディ・ライリーが主宰したステージ「New Jack Swing Experience」に出演、「Rump Shaker」などで会場を盛り上げてくれた。ニュー・ジャック世代が中心となる今回の〈SOUL CAMP 2019〉、その景気付けのパフォーマンスに彼らほど相応しいアーティストもいないだろう。

BABYFACE

〈SOUL CAMP 2019〉2日目のヘッドライナーとなるベイビーフェイス。今回の出演者では最長となる40年以上のキャリアを持つ彼は、シンガーであると同時にソングライター/プロデューサーとしてもソウル/R&Bのフィールドを越えて活躍。ボーイズIIメン、TLC、ホイットニー・ヒューストン、マライア・キャリー、ビヨンセ、マドンナ、マイケル・ジャクソン、セリーヌ・ディオン、ジョニー・ギル、アッシャー、アリアナ・グランデ、ブルーノ・マーズなど、数々のスターがベイビーフェイスと組んでメロディ強度の高い名曲を送り出してきた。

今回〈SOUL CAMP 2019〉に出演するキャリン・ホワイトやボビー・ブラウンもベイビーフェイスのバックアップでソロとしてブレイク。彼がいなければキャリンもボビーもこのステージに立つことはなかったかもしれない。SWVも映画『ため息つかせて』のサウンドトラックでベイビーフェイス作の曲を歌っていた。メロディにもリリックにも非凡なセンスを発揮するベイビーフェイスは、間違いなく20世紀後半以降のポップ・ミュージックを代表する音楽家として後世に名を残すひとりだ。

もちろん歌い手としても多くの実績を残している。古くはマンチャイルド、そして後に音楽/ビジネス・パートナーとなるアントニオ“LA”リードらと組んだディールといったバンドを経て、1986年にソロ・デビュー。特に1989年リリースの『Tender Lover』からはベイビーフェイス流のニュー・ジャック・スウィングとでも言うべき表題曲や「It’s No Crime」が大ヒットし、彼独特の優美な旋律と甘くテンダーなヴォーカルが光るスロウ・ジャムの名曲「Whip Appeal」も誕生している。以降、ソングライター/プロデューサーの活動と並行して、「When Can I See You」(1993年)のようなフォーキーな曲を歌い、ネプチューンズがプロデュースした「There She Goes」(2001年)では裏声を交えてアグレッシヴに迫るなど、シンガーとしての幅広さもアピール。近年、トニ・ブラクストンとの再会的な共演アルバム『Love, Marriage & Divorce』(2014年)を出してからは、兄たちがいるアフター7の復活に尽力しながら、1989年作のセルフ・オマージュとなるソロ・アルバム『Return Of The Tender Lover』(2015年)で最前線に復帰している。

Babyface – Every Time I Close My Eyes (Official Video)

 

ライヴ活動も精力的に行っており、来日公演を含めた近年のステージでは、自身のヒット曲のほか、ミッドナイト・スター「Slow Jam」、ウィスパーズ「Rock Steady」、ディール「Two Occasions」、テヴィン・キャンベル「Can We Talk」、アフター7「Ready Or Not」、ジョニー・ギル「My My My」、ボーイズIIメン「End Of The Road」など、80年代から90年代前半に他アーティストに提供した曲のセルフ・カヴァーも披露。ボビー・ブラウン曲のメドレーでは軽快にステップを踏む姿も見られた。

一方で、エリック・クラプトン「Change The World」のプロデュースに関わったことを思い出させるようなアコースティック・ギターの弾き語りもある。〈SOUL CAMP 2019〉でのステージも、そうしたシンガー/ソングライターとしてのキャリアを総括したものになるだろう。そこで聴けるのは、2005年作のタイトル通り〈Grown & Sexy〉なR&Bだ。

本名ケネス(ケニー)・エドモンズ。ブーツィ・コリンズに「童顔!」と言われ、それをアーティスト・ネームにしたベイビーフェイス。その顔だけでなく、音楽もヴォーカルも常に若々しい。同じ年に生まれたマイケル・ジャクソンもプリンスもこの世にいないが、今はベイビーフェイスがいる世界を喜びたいところだ。

SWV
(台風の影響による搭乗便の欠航により出演キャンセル)

〈SOUL CAMP 2019〉の出演者で唯一の女性グループとなるSWVことSisters With Voices。アン・ヴォーグを起点とする90年代ガールズR&BグループのブームにおいてTLCとともに頂点に立ったのが、NY出身の彼女たちだった。メンバー(デビュー当時の名前)はシェリル“ココ”ギャンブル、タマラ“タージ”ジョンソン、リアン“リリー”ライオンズの3人。テディ・ライリーにデモ・テープが渡ってRCAとの契約を掴んだこともあり、ニュー・ジャック・スウィングの女性版的なニュー・ジル(Jill)・スウィングの代表格ともされたSWVは、華々しい活躍の後、90年代後半に一旦は解散という形をとったが、現在は復帰して、かつてのイメージをキープしながら活動を続けている。若手アーティストによるカヴァーやサンプリング、オマージュなどで90年代の楽曲が話題になることも多い。

とにかく1992年のデビュー・アルバム『It’s About Time』の衝撃が大きかった。名匠ブライアン・アレクサンダー・モーガンがブレーンとなった同作からは「Right Here」や「I’m So Into You」、そして90年代屈指のスロウとして名高い「Weak」などが立て続けにヒット。ココのピンと張った伸びやかで透明感のある歌声を中心とするヴォーカル・ワーク、ヒップホップ世代らしい路上感覚を持ちながらゴスペルの出自も忘れないエレガントな佇まい…。マイケル・ジャクソンの名曲を引用したリミックス「Right Here (Human Nature Mix)」も大ヒットとなり、イントロに挿まれた男声が無名時代のファレル・ウィリアムスであったことも後に話題となった。このリミックス版をベースにしてクリス・ブラウンが「She Ain’t You」という曲を作ったこともよく知られているだろう。

SWV – Weak

 

もちろん、デビュー作だけではなく1996年のセカンド『New Beginning』からはヒップホップ・ソウルな「You’re The One」やファレルを含むネプチューンズが手掛けたドリーミーなスロウ「Use Your Heart」、当時の人気ラッパーがこぞって参加した1997年作『Release Some Tension』からはミッシー・エリオット客演のミッド「Can We」やスロウ・バラードの「Rain」といった名曲が誕生している。

その後、サントラ参加などを経て解散。ココはロドニー・ジャーキンズと組んだソロ・アルバム『Hot Coko』(1999年)から「Sunshine」などをヒットさせ、数年後には夫のマイケル・クレモンズとともにルーツのゴスペルに回帰。他のメンバーも結婚などでそれぞれの道を歩んでいたが、2000年代半ばからは復帰に向けてライヴ活動をこなし、2012年にはSWVとしては約15年ぶりのアルバムとなる『I Missed Us』をリリース。往時の甘酸っぱい雰囲気でファンの懐古趣味を刺激しつつマチュアに迫った理想の内容となっていた。それから約4年ぶりに発表した『Still』(2016年)も、「様々な経験を経ながら“まだ”音楽をやり続けている」ことを謳った快作で、それに伴ったツアーでもかつてのイメージを損なわないパフォーマンスを見せてくれた。

近年のライヴでは、サントラ『Hav Plenty』(1998年)で披露したマイケル・ジャクソンの「I Wanna Be Where You Are」、『I Missed Us』で披露したココの十八番でもあるパティ・ラベルの「If Only You Knew」、そしてフージーズ版の「Killing Me Softly」といった名曲カヴァーも披露。先日チャンス・ザ・ラッパーの新作に客演していた彼女たちは今もデビュー時の輝きを失っていない。今回のステージでもファンが期待するSWVを心ゆくまで見せてくれるはずだ。

MUSIQ SOULCHILD
(台風の影響による搭乗便の欠航により出演キャンセル)

〈SOUL CAMP 2019〉2日目に登場するミュージック・ソウルチャルド。本名タリブ・ジョンソン。米フィラデルフィア出身で、2000年にデビューした彼は今や20年選手のヴェテラン・シンガーとなった。DJジャジー・ジェフ率いるア・タッチ・オブ・ジャズ(ATOJ)やクエストラヴ率いるザ・ルーツを黒幕としてフィラデルフィアで起こったネオ・ソウル・ムーヴメントをジル・スコットらとともに盛り上げたひとりで、2000年代後半以降はアトランタの住人となってR&Bを歌い続けている。

初期にはデフ・ジャムの傍系レーベルとなるデフ・ソウルに所属。ファースト・アルバム『Aijuswanaseing』(2000年)からはサウンドトラックにも収録されていたメロウなヒップホップ・ソウル「Just Friends (Sunny)」やラヴ・バラード「Love」などがヒットし、温もりのあるソウル・ミュージックを誠実に歌うシンガーとして注目を集めた。とりわけATOJのアイヴァン・バリアス&カーヴィン・ハギンズと結束を強め、フランシス・レイ「パリのめぐり逢い」のメロディを引用した「Halfcrazy」やスロウ・バラード「Dontchange」がR&Bチャートで高順位をマーク。これらを含むデフ・ソウルからのセカンド『Juslisen』(2002年)、およびサード『Soulstar』(2003年)では名前から一時的に〈Soulchild〉を取ってミュージック(Musiq)名義で活動。理由は「ソウルチャイルド(ソウルの申し子)と名乗るほど自分はソウルに精通していないから」というものだったが、こんな謙虚な姿勢からも彼の人柄が伝わってきたものだ。

Musiq – Love (Official Video)

 

ミュージック・ソウルチャイルドという名義に戻し、アトランティックに移籍した2007年以降も「Buddy」を筆頭にヒットを飛ばし、特に「Teachme」やメアリー・J.ブライジとのデュエット「IfULeave」は“ソウルチャイルド”を名乗るに相応しい名バラードとなった。フィラデルフィアを離れ、アトランタに移住してからの2008年作『Onmyradio』では制作陣の顔ぶれも賑やかになり、先行シングル「Radio」ではクランク・サウンドに挑戦するなど音楽的な幅も広げていく。また、インディア.アリーの作品に客演するなどしていた彼はアトランティック退社前後から外部での共演も増やし、ロバート・グラスパー・エクスペリメント『Black Radio』(2012年)などに参加。2013年にはシリーナ・ジョンソンとレゲエ・アルバム『9INE』を作ってファンを驚かせた。2014~2015年には、ザ・ハッスル名義で覆面ラッパー的な活動を行い、パープル・ワンダーラヴを名乗ってオルタナティヴな楽曲をリリースしていたこともある。

近年リリースしたミュージック・ソウルチャイルドとしてのアルバムもクオリティが高い。名匠ウォーリン・キャンベルが主宰するマイ・ブロックに所属しての『Life On Earth』(2016年)、自身のソウルスター・ミュージックにおけるプロジェクトとなった現時点での最新作『Feel The Real』(2017年)は、ともにe-Oneの配給でリリース。アトランタの仲間と組んでトラップ調の曲などに取り組む一方でデフ・ソウル時代を思い出させるようなフィラデルフィア系のジャジーでメロウなサウンドもキープし、新しさと懐かしさを同時に運んでくれる彼の作品は全方位にアピールするものだろう。

そして、スティーヴィー・ワンダーに通じる歌声。デビュー前に地元のストリートでラップをやっていたこともある彼は、ラップするように歌う、いわゆるラップ・シンギングを得意とするが、テナーとバリトンを行き来するような滋味深いヴォーカルはリスナーの心を穏やかにしてもくれる。

近年のライヴではメドレーに近いスタイルでヒット曲が連発されることが多いが、これはヒップホップ世代のソウル・シンガーらしい作法とも言える。〈SOUL CAMP 2019〉では、また違ったスタイルで過去の名曲群を披露してくれるかもしれない。

 

Written By 林 剛


SOUL CAMP 2019
会場: 東京・豊洲PIT

10/13(日) 16:00 OPEN / 16:30 START  ⇒台風の影響で開始時間変更に
10/14(月・祝) 13:00 OPEN / 14:00 START
公式サイト / Facebook / Twitter

当日券情報
1日券 一般チケット ¥14,000(税込)
1日券 小中学生チケット ¥4,000(税込)
※オールスタンディング整理番号付
※入場時別途1D代¥500(各日)
※未就学児は保護者同伴に限り入場無料

販売開始(予定)
13日(日)16:00
14日(月祝)13:00



 

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