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ディラン、ボウイらによる歴史的瞬間を記録した映画監督D・A・ペネベイカーが94歳で逝去
2019年8月1日、映画監督のドン・アラン・ペネベイカーこと、D・A・ペネベイカーが老衰のため94歳で逝去した。この訃報は、彼の息子フレイザーによって米メディア“ハリウッド・リポーター”に届けられた。2012年にドキュメンタリー作家として初の快挙となるアカデミー名誉賞を受賞したD・A・ペネベイカーは、映像と音響を同時録音できるハンディカメラによって、自分の目の前で起こっている出来事をシンプルに映し出す“シネマベリテ”のスタイルを切り開き、史上最も重要な1960年代カウンターカルチャーの記録者のひとりとして知られていた。
おそらく彼の作品の中で最も記憶されているのは、ボブ・ディランが1965年に敢行したイギリスでの最後のアコースティック・ツアーに密着した1967年の映画『Don’t Look Back』だろう。「僕は人々にボブ・ディランについて知ってもらおうなんてことには全く興味がありませんでした」と後に彼は語っていた。「僕はただ、彼が生きている場所に居合わせて、彼がどんなことと向き合い、何が彼を掻き立てるのか、ということを記録したかっただけなんです」。
D・A・ペネベイカーが手掛けたその他の名高い作品として、『モンタレー・ポップ フェスティバル’67』、そして1973年にデヴィッド・ボウイが“5年後に滅びようとする地球の救世主”という架空のロックアイコン“ジギー・スターダスト”として英ロンドンのハマースミス・オデオンで行った歴史的コンサートの模様を収録した『ジギー・スターダスト』などがある。
ドン・アラン・ペネベイカーは、1925年7月15日、イリノイ州のエバンストンに生まれた。1967年に機械工学の学位と共にイェール大学を卒業後、映画作家フランシス・トンプソンと親しくなる。1953年、彼にとって初の映画作品となる、デューク・エリントンの同名曲を挿入し、タイトルとしても起用した5分間のショートフィルム『Daybreak Express』を製作した。
リチャード・リーコックとロバート・ドリューと共同設立した会社“ドリュー・アソシエイツ”では、ABCニュースやTime-Lifeといったクライアントのために、数々のドキュメンタリー作品を生み出していった。彼らが最初に共同製作した映画が、1960年のジョン・F・ケネディとヒューバート・ハンフリーがウィスコンシン州で行なった大統領選挙の模様を描いた映画『プライマリー』である。
1963年にD・A・ペネベイカーとリチャード・リーコックが二人の共同会社設立のため“ドリュー・アソシエイツ”を退社するまでの期間にも、若き日のジェーン・フォンダを紹介する映画『Jane』を含む、多くの作品が“ドリュー・アソシエイツ”で製作された。ボブ・ディランやモンタレー・ポップ フェスティバルなどの作品は、ノーマン・メイラーやジャン=リュック・ゴダールらとの共同製作期間を経て、作られたものである。
彼の3番目の妻、クリス・ヘジダスとの共同製作による晩年の作品には、スポーツ・カー起業家ジョン・ザッカリー・デロリアンに密着した1981年の『DeLorean』や、ビル・クリントンの大統領選挙戦 の舞台裏を追った1992年の『クリントンを大統領にした男』なども含まれる。その他音楽関連のプロジェクトとしては、1989年のデペッシュ・モードのパサデナでのコンサートに密着したライヴ・ドキュメンタリー『101』、ブランフォード・マルサリスの音楽活動を描いた1992年の『Branford Marsalis: The Music Tells You 』、全米で700万枚を超える大ヒットを記録したコーエン兄弟監督による映画『オー・ブラザー!』のサウンドトラックに曲を提供しているアメリカン・ルーツ・ミュージックのアーティストたちにフォーカスした2000年のドキュメンタリー兼コンサート・フィルム『Down From The Mountain』などがある。
2007年には、映画『Don’t Look Back』のために撮影した映像を元に編集し、同映画のDVDに収録された新たなドキュメンタリー作品『65 Revisited』を製作した。その後、1990年に入ってからもD・A・ペネベイカーは、フランス人パティシエを密着した2010年の『Kings of Pastry』や動物の法的権利に迫る2016年の『Unlocking The Cage』をはじめ、妻クリス・ヘジダスと共作を続けた。
米ウェブメディア“filmcomment.com”が2017年に行ったインタビューの中で、自身の制作スタイルについて質問された彼はこう答えていた。「ただ見てるいるだけ、本当にそれに限るんです。解釈も説明もすることなくね。僕はこのアイデアを、以前に一度だけ会ったことのあるロバート・フラハティから得たんです。彼とは個人的に親しかったわけではありませんが、彼の作品に関してはもちろん知っていた。リチャード・リーコックが彼のカメラマンだったんです」。
「この手の撮影に関して私が理解していたのは、これもまたロバート・フラハティから学んだことでもありますが、とにかく全てを一から始めなければならないということ。物語がいつもそうであるように。ただ誰かに事の成り行きを語ってもらったりすることで完結することではないのです」。
Written By Paul Sexton
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