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ジャネット・ジャクソンのベスト20曲:ダンスと歌で世界を魅了した女性アーティストのパイオニア
ジャネット・ジャクソンは、1982年にソロ・アーティストとしての活動を開始して以来、1億枚以上のレコードを売り上げたと言われている。そんなジャネット・ジャクソンの偉業を讃えるため、ここでは彼女のベスト・ソング20曲を挙げていこう。
<関連記事>
・ジャネット・ジャクソン『Rhythm Nation 1814』制作秘話
・ジャネットとジャム&ルイスのケミストリー、『Control』から『janet.』
・賛否両論を呼びながら大成功となったジャネットの『The Velvet Rope』
20位:「No Sleep」(2015年)
2015年にリリースされた11作目のアルバム『Unbreakable』は、ジャネット自身のレーベル、リズム・ネイションからリリースされ最初の作品だった。ほぼ10年ぶりにジミー・ジャム&テリー・ルイスと組んで制作されたこのアルバムは、アメリカでたちまち大ヒットを記録した。「No Sleep」はジャネットが一番得意とする曲調。夜を思わせる雰囲気のグルーヴに乗せて、魅惑的なヴォーカルが披露される。この曲には、アメリカのラッパー、J・コールも参加している。米アダルトR&Bチャートで首位を獲得。
19位:「The Pleasure Principle (愛の法則)」(1986年)
元タイムのキーボード奏者モンテ・モア(アレクサンダー・オニールのバラード「If You Were Here Tonight」の作者)が作ったこの曲は、シンセを中心としたダンス・グルーヴで構成されている。こちらのスタイルは、ジャム&ルイスがプロデュースした『Control』のダンス・トラックよりも抑えめで繊細なものになっていた。ここでは、タイムのジェリービーン・ジョンソンがロック調のギター・ソロも演奏している。これは『Control』からの6枚目のシングルとして発売され、米R&Bチャートで首位を獲得。ジャネットの代表曲のひとつになった。
18位:「Alright」(1989年)
激しいスウィング・ビートのグルーヴとサンプリング音に彩られた「Alright」は、アルバム『Rhythm Nation 1814』からの4枚目のシングルとしてリリースされている。至福のロマンスを歌ったこの曲は、ジャム&ルイス時代の典型と言える内容で、魅力的なコーラスと甘いハーモニー・ヴォーカルを強烈なリズム・トラックと融合させている。
17位:「I Get Lonely」(1997年)
R&Bのスーパーグループ、ブラックストリートのすばらしいバック・ヴォーカルが聴ける「I Get Lonely」も、ジャネットが得意とする物語風のロマンティック・バラードのひとつ。こちらはゴスペル色の強い曲調で、よりピュアなR&Bサウンドになっていた。共作者にはジャム&ルイスとジャネットに加えて、彼女の当時の夫レネ・エリゾンド・ジュニアも名を連ねている。
この曲はアルバム『The Velvet Rope』の第3弾シングルとなり、1998年に全米R&Bチャートの首位に立った。さらにこの曲は全米ポップ・チャートのトップ10にも入り、ジャネットのトップ10入り記録は連続18枚に更新された。女性アーティストがこうした大記録を打ち立てるのは前代未聞のことだった。
16位:「Scream」(1995年)
兄マイケル・ジャクソンとのデュエット曲を発表するころには、ジャネット本人も既にスーパースターになっていた。この「Scream」では、マイケルはジャネットのプロデューサーであるジャム&ルイスと共にスタジオ入りし、ジャネットも加えた4人で曲を共作している。「Scream」という曲名からもわかるように、この曲は賑やかなスウィング・ビート・スタイルのグルーヴが中心。この「Scream」は、マイケルの1995年のコンピレーション『HIStory: Past, Present & Future, Book 1』にも収録された。
15位:「Any Time, Any Place」(1997年)
1997年に米R&Bチャートの首位に立った「Any Time, Any Place」は、雰囲気たっぷりのクワイエット・ストーム・バラード。ここでジャネットは、きらめくようなキーボードの上品な演奏に乗りながら、より官能的な一面を見せている。これもジャネットと彼女の名曲の多くを手がけたジャム&ルイスの共作曲。この曲は、ヴァージン・レーベル移籍後の第1弾アルバム『janet』からリリースされ5枚目のシングルだった。
14位:「The Best Things In Life Are Free」(1992年)
アルバム『Rhythm Nation』を出してから『janet』を発表するまでのあいだに、ジャネットは艶やかな声のソウル歌手ルーサー・ヴァンドロスとデュエットを吹き込んでいる。ジャム&ルイスがプロデュースしたこの明るい曲は、コメディ映画『モー・マネー』の挿入歌だった。作曲はジャム&ルイス、さらに元ニュー・エディションのマイケル・ビヴンスとロニー・デヴォーの4人(当時このふたりはベル・ヴィヴ・デヴォーというグループを結成していた)。この曲はグラミー賞にノミネートされたほか、米R&Bチャートの首位も獲得している。
13位:「Together Again」(1997年)
これは1997年のアルバム『The Velvet Rope』の第2弾シングル。これは、ジャネットが鬱との戦いを率直に告白した曲だった。また歌詞の中では、DVや性的アイデンティティといったテーマも採り上げられている。とはいえ曲調は軽やかで、モータウンやハウス・ミュージックの影響も感じさせるポップなダンス・ナンバーに仕上がっている。この「Together Again」は全米R&Bチャートで最高8位を記録し、ポップ・チャートでは首位を獲得。またイギリスのチャートでも最高4位というヒットになった。
12位:「Control」(1986年)
1986年のプラチナ・アルバム『Control』のタイトル・トラック。ここでジャネットは「17歳のころ、私は人から言われた通りにやっていた」と歌っていた。歌詞はさらにこう続く「父から言われた通りのことをして、母が作った鋳型の中に嵌っていた……でもそれはもうずっと昔のこと」。この「Control」は「Nasty」ほど挑発的ではなかったが、それでも強烈な音のパンチを放っている(ある意味、女性ヴォーカルが入ったタイムの曲のようにも聞こえる)。これは独立を讃える歌であり、自らを自由に表現したいというジャネットの意欲を反映した曲だった。またアルバム『Control』の第4弾シングルとなり、ジャネットに米R&Bチャートで3度目の首位をもたらすことになった。
11位:「Whoops Now」(1993年)
懐かしのモータウン風味がふんだんに感じられるこの曲は、ジャネット・ジャクソンが出した中でも特にキャッチーな曲のひとつ。アルバム『janet』の英国盤や日本盤ではトラックリストに載っていたが、米国盤CDでは隠しトラックになっていた。この「Whoops Now」はアメリカではシングル化されなかったが、その他の国ではシングルとして発売され、好成績を挙げている。ニュージーランドではポップ・チャートの首位を獲得。またフランス、オーストリア、ベルギー、イギリスでもトップ10入りを果たしている。
10位:「Got Til It’s Gone」(1997年)
この曲の題名はジョニ・ミッチェルの1970年のプロテスト・ソング「Big Yellow Taxi」がヒントとなっており、「Big Yellow Taxi」のサビ(「You don’t know what you’ve got until it’s gone」)もサンプリングされている。メロウなヒップホップ風のグルーヴのこの曲には、ア・トライブ・コールド・クエストのラッパー、Qティップもゲスト参加している。全米R&Bチャートでは最高3位、全英チャートでは最高6位を記録した。
9位:「Miss You Much」(1989年)
『Control』から3年後、ジャネットは再びジャム&ルイスと組み、アルバム『Rhythm Nation 1814』を録音する。これはテーマの面では『Control』よりも深いアルバムとなり、切迫した社会・政治問題に焦点を当てていた。とはいえ第1弾シングルとなったのは、恋い焦がれるようなラヴ・ソング「Miss You Much」だった。強烈なダンス・グルーヴに乗ったこの曲は、『Control』の挑発的なスタイルや音作りの延長線上にあった。このシングルで、ジャネットは1989年9月に全米ポップ・チャートとR&Bチャートの首位に再び返り咲くことになる。
8位:「All For You」(2001年)
このキャッチーなダンス・ナンバーは、ディスコ・グループのチェンジが1980年に出したヒット曲「The Glow Of Love」をサンプリングしている。これはジャネットが2001年に出したダブル・プラチナ・アルバムのタイトル曲となり、第1弾シングルにもなった。
「All For You」の明るく楽天的な曲調は、アルバム全体の雰囲気を暗示するものだった(賛否両論を呼んだ前作『The Velvet Rope』は、もっと暗い色彩が強く出ていた)この曲には、新しいものに積極的に挑戦するジャネットの姿勢もよく表れていた。全米ポップ・チャートでは1位に到達(全英チャートでは最高3位)。またジャネットがR&Bチャートの首位を獲得するのは、この曲で14回目となった。
7位:「Escapade」(1989年)
アルバム『Rhythm Nation 1814』は社会派のメッセージが中心となっていたが、収録曲の中には軽めの内容の曲もいくつかあった。強烈なバック・ビートに支えられた屈託のないラヴ・ソング「Escapade」もそのひとつ。「When I Think Of You」の場合と同じように、ジャネットはR&Bのエッセンスを失わなずに、弾むようなポップ・ソングを作り上げることができた。アメリカでは、ポップ・チャートとR&Bチャートの両方で1位となっている。
6位:「Rhythm Nation」(1989年)
「Rhythm Nation」は、6枚目の全米R&Bチャート首位獲得シングル。ここでは、当時アメリカのR&Bで流行していたニュー・ジャック・スウィング風の執拗なシンコペーション・リズムが導入されている。また、サンプリング・ビートやオーケストラ・ヒットが盛り込まれたおかげで、ヒップホップ色も濃厚に出ていた。この「Rhythm Nation」は、音楽を通じて団結し、「肌の色の違いを乗り越えよう」と訴えるプロテスト・ソングだった。全米R&Bチャートで首位を獲得しただけにとどまらず、ポップ・チャートでも最高2位に到達している。
5位:「Nasty」(1986年)
「私のファースト・ネームは”ベイビー”じゃない。私は”ジャネット”……。”ミス・ジャクソン”と呼んでくれてもいい。あなたがステキな人ならね」。この「Nasty」で、ジャネットはイライラした口調でそう歌っている。前のシングルに続いて全米R&Bチャートの首位を獲得したこの曲は、単にジャネット・ジャクソンの代表曲というだけでなく、あの時代を代表する名曲のひとつとなった。
ここでのサウンドは実に特徴的であり、ドラム・マシンによるインダストリアル系のリズムとメタリックなシンセがキャッチーなフレーズを奏でていく。こうした耳障りでほとんど機械的な伴奏とは対照的に、ジャネットの女の子っぽいヴォーカルは人間味たっぷりで非常に魅力的。プロモ・ビデオでは、ジャネットが男性ダンサーたちを引き連れて凝った振り付けのダンスを繰り広げるという内容で、曲の人気をさらに引き立てた。
4位:「When I Think Of You」 (1986年)
『Control』に収録されているその他のアップテンポな曲と同じように、「When I Think Of You」は典型的な80年代ダンス・ビートの曲。しかし挑発的な部分は、先にシングルとしてリリースされ「Nasty」よりもかなり少ない。この「When I Think Of You」は、基本的には幸福感あふれるラヴ・ソング。繰り返されるふたつのピアノ・コードと弾むようなベース・ラインが軸となっている。
シンセ・ブラスで区切られたジャネットのヴォーカルは甘いトーンだが、過剰に甘ったるくなることはない。『Control』の中でもとりわけキャッチーな曲のひとつだが、全米R&Bチャートでは首位に到達せず、最高2位にとどまった。しかしこれは、ジャネットにとって米ポップ・チャートでの初の首位獲得曲となった。
3位:「Let’s Wait Awhile」(1986年)
ジャネットがジャム&ルイスと共作したすばらしいバラード。『Control』はノイジーなビートが印象に残るアルバムだったが、この曲はやはりスローな「Funny How Time Flies (When You’re Having Fun) (ファニーなひととき)」と共にアルバム中のオアシスとなっていた。耳障りな「Nasty」のあとでは、「Let’s Wait Awhile」の穏やかさは一服の清涼剤のように感じられた。これは『Control』からリリースされ5枚目のシングルとなり、ジャネットにとって4度目となる米R&Bチャート首位を獲得。イギリスのチャートでも最高3位に達している。
2位:「What Have You Done For Me Lately (恋するティーンエイジャー)」(1986年)
ジャネットが内気な純情娘から生意気でセクシーな女に変身したのは、元タイムのジミー・”ジャム”・ルイス&テリー・ルイスと組んだ1985年ごろのことだった。この顔合わせから生まれたのが、ジャネットがA&Mレーベルで出した3作目のアルバム『Control』である。この曲は『Control』からリリースされ最初のヒットとなった。噂によれば、歌詞はジェームズ・デバージとの離婚について歌ったものだという。
一方サウンドは、魅力的なサビが入った強烈なリズムのテクノ・ファンク。そこにジャズ・ピアノの細かいフレーズが散りばめられている。「What Have You Done For Me Lately」は、ジャネットにとって全米R&Bチャートでの初の首位獲得曲となった。またイギリスでの初ヒットにもなり、全英チャートで最高3位を記録。『Control』はプラチナ・アルバムとなり、米ポップ・チャート、R&Bチャートの両方で1位に達した。
1位:「That’s The Way Love Goes (それが愛というものだから)」(1993年)
ジャネットは1991年にA&Mからヴァージンに移籍。この際、彼女は4,000万ドルの契約金を得たが、ヴァージンは、移籍第1弾シングル「That’s The Way Love Goes」の売り上げで早速利益を得ている。今回のベスト・ソング・ランキングの1位に入ったこの曲は、米R&Bチャートの首位を4週間維持。全米ポップ・チャートには2カ月ランク入りした。移籍第1弾シングルは従来通りの激しいダンス・ナンバーになるだろう……という一部の予測は裏切られ、これはソフトでメロウなバラードとなった。
聴く者をとりこにするようなグルーヴと繊細なジャズ・サウンドが実に特徴的。この曲は、ジャム&ルイスと組んだ3作目のアルバム『janet』からのファー・スト・シングルに採用。イギリスのヒット・チャートでは、1987年の「Let’s Wait Awhile」以来、久々にトップ10入りを果たしている(最高位2位)。
Written By Charles Waring
『リズム・ネイション1814』リリース30周年記念!名盤 5タイトル一挙リイシュー!
『Rhythm Nation 1814』『The Velvet Rope』『All For You』『janet』『Control: The Remixes』
ドキュメンタリー『ジャネット・ジャクソン 私の全て』
放送局:「CSヒストリーチャンネル」
放送日時:2022年6月12日20時から第1話が放送(全4話)
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