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“レゲエの貴公子”と呼ばれたデニス・ブラウン、1981年の『Foul Play』
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レゲエ・ファンが最初に学ぶ大切なルールとは、アルバム・ジャケットのアーティスト名が例え聞いたことのないものでも、その人が一緒にコラボレーションをした人たちの名前を見なくてはいけないことだ。レゲエ・アーティストは何人ものプロデューサーたちと幾つものスタジオでレコーディングをし、同じアーティストでもトラックによってはサウンドが全く違ってくる。シンガー(レゲエではDeeJay)やDJ(レゲエではセレクター)がそのパフォーマンス・スタイルを変えている訳ではなく、全く異なる音楽環境に置かれているのだ。場合によってはそれは良いことばかりではない。アーティスト自身がヴォーカリストとしての強いアイデンティティがないと、アルバムはヒットか失敗のどちらかの結果を迎える。しかし、デニス・ブラウンはそれに当てはまらない。どんな状況に置かれようとデニス・ブラウンがマイクを握れば、最高の結果が生まれる。
1981年に発売された『Foul Play』に参加したコラボレーターたちは、デニス・ブラウンにとってはぴったりのメンバーだった。アルバムは、70年代にデニス・ブラウンの成功した作品の多くを手掛けたジョー・ギブス、そして最高のルーツ音楽を手掛けてきたことで知られるプロデューサーのクライヴ・ハントが共同プロデュースした。70年代前半にロック・スタイルで知られていたデニス・ブラウンだったが、その頃のレゲエもロック・スタイルに移行しつつあり、デニス・ブラウンもその流れに乗った。『Foul Play』は、ジョー・ギブスとデニス・ブラウンが手掛けた当時の傑作『Words Of Wisdom』や『Joseph’s Coat Of Many Colours』から比べるとわずかに変化している。
オープニング・トラック「On The Rocks」は、エキサイティングなエレクトロ・レゲエで、ニューヨークで多くの時間を過ごしていたクライヴ・ハントの影響が明らかなブラック・ミュージックの要素が大きい。ディーン・フレイザーが80年代ポップ特有のサックスを吹き、デニス・ブラウンはつらいことを吹き飛ばすためにブギーにしようと楽しそうに歌う(彼は当時のソウル・グラブで流行っていたブギーという言葉を使った。レゲエではほぼ前代未聞のことだ)。
昔ながらのファンたちを安心させるかのように次には「The Existence Of Jah」が収録されており、ゆっくりとした真面目なメッセージの込められた曲はライヴで人気の曲となった。自身で作曲したこのトラックは、彼のキャリアのどの時点で書かれても驚かない曲で、デニス・ブラウンは甘いスモーキーな声で悪魔を呼んでいる。そして再びエレクトロ・スキャンクへと戻り、ハントのアップビートでスカ調の「Come On Baby」へと続く。それは二元性のある独特なトラックだ。
しかしその時点からアルバムは落ち着き始める。当時の作品の多くはジャマイカで流行り始めていたラバダブ・スタイル寄りなものだったが、この作品はもっと“レゲエの貴公子”と呼ばれるデニス・ブラウンらしいサウンドに仕上がっている。「The World Is Troubled」は彼のロック時代の傑作「Troubled World」のリメイク版で、新しいヴァージョンでは鳴り響くクラビネットとラバダブ・リズムが使用され、少しだけアップデートされている。ホーンが指揮を執る「I Need Your Love」(またの名を「Rasta Children」)は、真面目なルーツ・レゲエだ。タイトル・トラックはそのジャマイカのアイデンティティを失うことなくナイトクラブで流行りそうで、「Your Man」はノリの良いラヴァーズ・ロックで、それまでの6年間のどのタイミングで発売されていてもおかしくないトラックだ。
最後の3曲は古いデニス・ブラウンの楽曲をアップデートしている。「If I Had The World」はプリンス・バスターとコラボレーションを行っていたまだ青年だった70年代初期のトラックで、デニス・ブラウンは美しく曲を表現している。「If I Follow My Heart」は1971年発売のセカンド・アルバムのタイトル・トラックで、今回はラバダブ・ビートでとても優しく暖かく、デニス・ブラウンがそのメロディを愛しているのが伝わってくる。1972年にシングルとして発売された「Cheater」は、オリジナルと同じアプローチ・スタイルを取っているが、物悲しいギターが追加され、ドラム・パターンが軽く更新されている。干している洗濯物を盗まれるという変わった曲だ。確かにそれはfoul play(反則)と言えるだろう。
言うまでもないが、A&Mから発売した3作品の1枚目となるこの作品のデニスの声は最高だ。2枚目ではもっと滑らかになりヒット・シングルも出すことになるが、『Foul Play』はもっとルーツっぽい要素が多い。彼の70年代の作品が高く評価されたためにこの作品を見落としてしまった人にはぜひ聴いてもらいたい。
Written By Reggie Mint
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