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マーティン・ルーサー・キング牧師に捧げた最高の10曲

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1968年4月4日、テネシー州メンフィスにあるロレイン・モーテルに滞在していたマーティン・ルーサー・キング・ジュニアことキング牧師が2階のベランダで暗殺された事件は世界に衝撃を与えた。10年以上にわたって、公民権運動の先頭に立ってきたキング牧師はミュージシャンにも大きな影響を与え、彼が亡くなって以来、ニール・ダイアモンドやパブリック・エネミー、U2ニーナ・シモンといったさまざまなミュージシャンたちがキング牧師について曲を発表してきた。

Martin Luther King, Jr. I Have A Dream Speech

キング牧師の有名な演説「I have a dream / 私には夢がある」は、ボビー・ウーマックの「American Dream」、グランドマスター・フラッシュ・アンド・ザ・フューリアス・ファイヴの「The King」、マイケル・ジャクソンの「History」など多数のシンガーたちによってサンプリングされてきた。エルヴィス・プレスリーは、暗殺直後にW・アール・ブラウンによって書かれた曲「If I Can Dream」に感動して涙を流している。

キング牧師自身はジャズとゴスペルのファンだった。歌手マヘリア・ジャクソンは「Precious Lord, Take My Hand」をキング牧師の葬儀で歌った。なぜなら、その曲は彼が生前にリクエストした最後の曲だったからである。

Mahalia Jackson sings April 1968 Martin Luther King Funeral

とりわけ、キング牧師はビバップの大ファンだった。「ジャズは人生を物語る」と、キング牧師は1964年に開催されたベルリン・ジャズ・フェスティバルの開会の辞に書いているほどだ。彼の友人、サンプソン・アレキサンダー牧師は、トランペット奏者のクリフォード・ブラウンとマイルス・デイヴィスの功績について議論しながら彼らを思い出す。

「トランペッターだと、キング牧師はマイルス・デイヴィスのことが大好きでした。しかしマイルスよりも素晴らしいと思っていたのはバード、つまりチャーリー・パーカーだと思っていたようです」とアレキサンダー牧師は記憶を遡った。1963年8月、リンカーン・メモリアルでのスピーチの中で、キング牧師はチャーリー・パーカーの1945年の代表曲「Now’s The Time」のタイトルを引き合いに出しながら、「Now is the time / 今がその時です」とフレーズを繰り返した。

1929年1月15日の彼の誕生日を祝うマーティン・ルーサー・キング・ジュニア・デイ(キング牧師記念日)は現在、アメリカ合衆国の国民の祝日となっている。このキング牧師記念日と没後50周年を記念して、我々は公民権運動の象徴を称える最高のキング牧師への歌10選を紹介する。もしあなたのお気に入り曲がリストに入っていなかったら、コメント欄で教えて下さい。

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1. ニーナ・シモン「Why (The King Of Love Is Dead)」(1968年)

「私たちはキング牧師のために、この時間のために作られた曲を披露したいと思います。この曲は彼について歌ったもので、彼のための曲です」と、ニーナ・シモンはキング牧師が暗殺された3日後、ニューヨーク州のロング・アイランドで行われたウエストベリー・ミュージック・フェアの観客に向かって、キング牧師に捧げた史上最高の曲のひとつである「Why (The King Of Love Is Dead)」を紹介した。

“この偉大な人” の勇気と思いやりを称えたこの曲は、ニーナ・シモンのベーシスト、ジーン・テイラーによって書かれたものだった。キング牧師が暗殺された翌日には、「Blues For Martin Luther King」と「Hotel Lorraine」という2曲のブルース・ソングをオーティス・スパンが作曲。この曲はブルースのピアニスト、マディ・ウォーターズのバンドのメンバーが演奏した。

Nina Simone Why The King of Love Is Dead (live)

 

2. マーヴィン・ゲイ「Abraham, Martin And John」(1968年)

「いい奴ほど早く死ぬ気がする」という言葉は、リンカーン大統領、ケネディ大統領、そしてキング牧師といったアメリカの暗殺について歌ったディック・ホーラーの曲の印象的な一行だ。

この心を打つ曲は最初、ディオンによってレコーディングが行われ、その後、スモーキー・ロビンソンレイ・チャールズ、エミルー・ハリス、さらにはスター・トレックのレナード・ニモイといった数多くのアーティストたちにカヴァーされてきた。ほぼ間違いなく、最もベストなカヴァーは全英でトップ10ヒットとなったマーヴィン・ゲイの1970年のシングルだ。

Abraham, Martin & John

 

3. ニール・ダイアモンド「Dry Your Eyes」(1976年)

ニール・ダイアモンドとザ・バンドのロビー・ロバートソンは「Dry Your Eyes」をアルバム『Beautiful Noise』のために作曲した。ロビー・ロバートソン曰く、この曲は「キング牧師が暗殺された後にどれほどの人が同情したか」というところから着想を得たものである。

2017年、ニール・ダイアモンドはマーティン・スコセッシが監督して映画となった1976年ザ・バンドの解散コンサート『ラスト・ワルツ』にゲスト出演した際に披露して以来、演奏をやめていたこの曲を彼のワールド・ツアーで再び披露した。ニール・ダイアモンドは言った「屋根裏にしまい込んでいたんだが、40年経った今、世に出すタイミングが来たかなとおもうんだ」と。

Dry Your Eyes (Live At Winterland Ballroom / 1976)

 

4. スティーヴィー・ワンダー「Happy Birthday」(1981年)

スティーヴィー・ワンダーがキング牧師を知ったのは、彼が既に人気を得ていた10代のころである。ミシガン州の盲学校から自宅に戻る途中の車のラジオで、キング牧師の暗殺のニュースを聞いて泣いたことをスティーヴィー・ワンダーは覚えている。1980年、スティーヴィー・ワンダーはアメリカ合衆国議会の連邦議会黒人幹部会のメンバーとなり、キング牧師の誕生日を称えるべきだと訴えてきた。

ギル・スコット・ヘーロンと共に全米ツアーに向かったスティーヴィー・ワンダーは、キング牧師の誕生を記念した祝日を定める支援を行うため、これからも最高のキング牧師の曲のひとつであり続ける「Happy Birthday」をインストルメンタルで演奏。キーボードの上に乗せて、スティーヴィー・ワンダーはこう歌った。

There ought to be a time
That we can set aside
To show just how much we love you
きっと時間があったはずだ
僕たちが残しておける時間が
どれほど私たちがあなたを愛しているかを証明するための

Happy Birthday

5. U2「Pride (In The Name Of Love)」(1984年)

ステファン・B・オーツが書いたキング牧師の伝記『Let The Trumpet Sound』に影響を受けたボノは「Pride (In The Name of Love)」を作曲した。最高のキング牧師の曲のひとつであるだけでなく、このヒット曲は、プリテンダーズのクリッシー・ハインドがバック・ヴォーカルを務めた80年代を象徴するU2のロック・ソングのひとつである。この曲の歌詞にはひとつ事実誤認がある。ボノは

Early morning, April four / Shot rings out in the Memphis sky
4月4日の早朝 / メンフィスの空に銃声が鳴り響く

と歌詞にしたが、実際に暗殺が行われたのは夕方6時1分である。

U2 – Pride (In The Name Of Love) (Official Music Video)

 

6. クイーン「One Vision」(1985年)

最初にシングルとして1985年11月にリリースされ、その後、ベストセラーとなったアルバム『A Kind Of Magic』にも収録された「One Vision」はエネルギッシュなロック・ソングだ。「キング牧師の有名なスピーチを半分パクったような曲」と、後にロジャー・テイラーが認めている。フレディ・マーキュリーはあとになって、エビ、車海老、チキンについて少しふざけた歌詞を加えている。

Queen – One Vision (Extended) 1985 [Official Video]

 

7. パブリック・エネミー「By The Time I Get To Arizona」(1991年)

パブリック・エネミーはヒップ・ホップを代表するグループのひとつであり、論争を生んだ「By the Time I Get to Arizona」とさらに物議を醸し出すこの曲のビデオ映像は、キング牧師の誕生日を祝日として定めることに反対していた米国の知事2人のうちの1人だった元アリゾナ州知事エヴァン・メカムを批判するために作られたものだった。2011年、どうしてこのようなタイトルにしたのかと尋ねたところ、チャック・Dはこう答えた。

「俺はアイザック・ヘイズの大ファンなんだ。ジミー・ウェッブとグレン・キャンベルの曲 “By The Time I Get to Phoenix” をアイザックがカヴァーした曲があるんだ。それでタイトルが先に決まった。いつもタイトルから先に作るのが好きなんだ」

Public Enemy – By The Time I Get To Arizona

 

8. ジェイムス・テイラー「Shed A Little Light」(1991年)

ジェイムス・テイラーの穏やかで感動的なキング牧師へのトリビュート・ソングは、20世紀の巨匠を称えたいという彼の願いで作られた。ジェイムス・テイラーはこの曲についてこう語っている。

「僕にとって、キング牧師は本当に重要なヒーローの一人なんです。20世紀において、やるべき時にやるべきことを行った類い稀な人です。僕の両親は公民権運動に強く共感していて、キング牧師を通して世の中で何が起こっているかという意識を持たせてくれた。僕にもそれが残っていたと思います。常に僕の頭の中にキング牧師の存在がありました。だから曲にしたんです」

James Taylor – Shed a Little Light (Video)

 

9. パティ・グリフィン「Up To The Mountain (MLK Song)」(2007年)

キング牧師に捧げた最高のカントリー・ミュージックのひとつは、パティ・グリフィンのアルバム『Children Running Through』に収録された「Up To The Mountain」だ。

パティ・グリフィンは、キング牧師が暗殺される前の日に行った1968年のスピーチ「I’ve been to the mountaintop / 私は頂に達した」からタイトルを取っている。この感動的でソウルフルな21世紀のトリビュート・ソングは、キング牧師が暗殺された時、パティ・グリフィンはまだ4歳の子供だった。

Up To The Mountain (MLK Song)

 

10. ポール・サイモン「So Beautiful Or So What」(2011年)

ポール・サイモンは現代の優れた作曲家のうちの一人である。この曲「So Beautiful Or So What」の中で、キング牧師暗殺後の絶望と “鳴り響くサイレンのメロディー”について語っている。

この曲はエルヴィス・コステロによって最高のキング牧師の歌として支持された。エルヴィス・コステロはポール・サイモンのこの曲を「流行のダークネスなサウンドを受け入れていない代わりに、精神的な忍耐と愛の持続性を称えた曲だ」と評した。

Written by Martin Chilton



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