Join us

Columns

「今やレディー・ガガのいない世界なんて考えられない」等身大でファンを励まし続けるアーティスト

Published on

アクセス総数5億ページ超の大人気サイト「ABC振興会を運営しながら、多数のメディアで音楽やセレブに関する執筆やインタビューなどをこなす米国ハリウッド在住の「D姐」さんの連載コラム「D姐の洋楽コラム」第7回です(末尾に2020年3月追記あり)。コラムの過去回はこちら

<関連記事>

レディー・ガガ、3年半ぶりの新作アルバム『Chromatica』発売決定
レディー・ガガの20曲:アートとポップと狭間で生み出された楽曲たち
レディー・ガガ『Born This Way』:「誰かに認めてもらう必要なんてない」


 

レディー・ガガは、2018年3月28日に32歳の誕生日を迎えた。そして2018年は『The Fame』でデビューしてから、ちょうど10周年にも当たる記念の年でもある。今やガガのいない世界なんて考えられない、と言い切ってしまってもいい。この10年、ガガはポップスターにとどまらず、時代のカリスマとして進化し続けてきた。

ガガのデビューはあまりにもセンセーショナルで社会現象となったため、彼女はいわゆる「鳴り物入り」でデビューして、いきなり大ヒットを連発したかのように思っている人も多いかもしれない。しかし実際は22歳の誕生日から約10日後の2008年4月8日にリリースした先行シングル「Just Dance」が、クラブダンスシーンからじわじわとヒットし、ようやく総合シングル・ランキングで2位に上り詰めたのは発売から9ヶ月後の翌年1月。つまりこの最初のヒットを勝ち取るまで、大掛かりなプロモーションやマネージメントのプッシュなどに頼らずに、ガガのアーティストとしての実力で認知されるに至ったのだ。

それにガガといえば、バブルドレス、生肉ドレス、30cmヒールなどと、アートとオートクチュールファッションをミクスチャーした斬新なファッションや、大道具と一体化したかのようなアウトフィットを“普段使い”するようなインパクト推しのルックスのおかげで、注目され始めたと思う人もいるかもしれないが、これも正しいとは言い難い。ガガがデビュー直後に米MTVの人気音楽番組「TRL」に最初で最後のスタジオ生出演をしたとき、当時22歳のガガは「これ(真っ赤なレオタード)にフードを自分でつけて、ベルトをしてみたわ」と説明したように(ちなみにこの時のファッションは、セカンドシングル「Poker Face」のUS版ジャケ写と同じ)、衣装は自前で手作り。

アイドルとは一線を画すハイレグレオタードに黒いパンブス姿とはいえ、スターダムを駆け上った後の大胆なファッション・センスの片鱗は見せてくれているが、度肝を抜かすほどではない。お手製であれハイエンドブランドのデザイナーによるものであれ、ガガのファッションはデビュー時からあくまでもアーティストとして“表現する”手段であることには変わりない。

冒頭で「今やガガのいない世界なんて考えられない」と言い切ったが、それは彼女が才能溢れるアーティストであると同時に、単に異彩を放つ唯一無二の存在をしているだけではなく、楽曲やアクティビティを通して周囲に「常に影響力を持つ」等身大の一人の女性だから。

スーパースターでありながら、等身大の人間でもあることを常に感じさせてくれるガガに、多くの若者が励まされている。たくさんの人々が抱えながらも、誰とも分かち合えない悩みや痛みがある。ガガは自身の辛い体験を告白し、その勇気とメッセージにファン=リトルモンスターは共感する。ガガは辛さを乗り越えただけではなく、時に今もなお克服しようと闘っているという、もしかしたら一番告白するのが辛いかもしれない状況さえも明かす。これもまた等身大のガガが愛されている理由でもある。

昨年10月に、友人の娘が学校でいじめを受けていると聞いたガガは、そのクラスメートたちへのメッセージ動画をインスタグラムで公開して話題になった。このポストは30万以上のいいね!がつけられたが

「私はみんなに他人に優しくなってもらいたい。そして勇気を持ってもらいたい。(いじめをしている)クラスの人気者に歯向かうのは、大変なことだというのはわかるわ。でも自分が大きな器の人間になることが必要よ。もっと優しくなって。勇気を持って。誰もやらないことをやる人になれるのが大切」

と語り、コメント欄には「ガガの言葉に励まされた」と「素晴らしい」といった意見や、同じような境遇の子供や親からの感謝のメッセージで溢れた。

Lady Gagaさん(@ladygaga)がシェアした投稿

今から7年前、ガガは高校時代にいじめを受けていたことを明かした。

「見た目が可愛くないとか、変わっているとか、色々からかわれて笑われた。“クソ”と呼ばれたこともあったし、学校に行きたくない時もあった」

と吐露した。さらに

「いじめられたことは生涯まとわりつくことなの。成功すればするほど、(いじめられた体験が)呼び起こされる。有名になって、自分がお手本にならなきゃいけないというプレッシャーを感じ始めた。それまでいじめの体験に自分にこんなに深く影響されているなんて気がつかなかった」

という。

その頃、同級生からいじめを受けていた14歳のゲイ少年が、大好きなガガに残したツイートを最後に自殺した件を深刻に受け止めたガガは、青少年のいじめ問題について当時のオバマ大統領と会談した。そして、サード・アルバムでタイトル曲の「Born This Way」(2011)で「誰もがスーパースター、生まれたままのあなたのままで素晴らしい。自分を愛して」と歌ったように、悩みを持つティーンエイジャーをサポートするチャリティ団体「Born This Way Foundation」を設立し、企業や社会を巻き込んでセクシャリティや様々な問題で学校やコミュニティから阻害されたりいじめを受ける悩みを持つ青少年たちの心の支えになった。

Lady Gaga – Born This Way (Official Music Video)

 

2017年秋からハリウッドをきっかけに女性へのセクハラ問題に対して女性自らが声を上げるという世界的なムーブメント#MeToo が起ったが、ガガはすでに2014年19歳で性的暴行を受けた経験とその克服の過程を公に語っている。大学内で横行する性的暴行に関するドキュメンタリー映画「ハンティング・グラウンド」のために書き下ろした「Til It Happens to You」がアカデミー賞の楽曲賞にノミネートされ、2016年3月に行われた授賞式でのパフォーマンスは世界中に大きな感動を与えた。

Lady Gaga Oscar Performance | 2016 "Til It Happens to You"

 

「自分が性的暴行を受けたことを恥に思い、自分を責めた。カソリック教徒の私は、それ(性的な行為)が邪悪だと思っていたから、私が悪いんだと思った。それから10年、私のせいだとずっと自分を責めた」

というガガの言葉は同じ被害を受けた女性に大きな共感を呼ぶ。大きな心の傷となって不安症やうつ症状を伴うPTSDであると診断されメンタル面とフィジカル面でのセラピーを受けたことも明かした。

そして2015年にはイエール大学で行われた公開のパネルディスカッションで「自分が被害者だと思う必要はないし、そう思うべきではない。自分を救えるのは自分自身だけなんだから」と、積極的に自らの体験談を交えて語り励ますことで、同じ被害女性の心の傷を癒した。

「私はレディー・ガガという私自身を創り上げた。自分の痛みを表現し私の生き様をあからさまにした。これが私のうつ病を克服する術。自分より強い人間を創り出すということ。でもキャリアが成功すると全てが変わり、孤独になった。遺伝学的には何も変えることができない。つまり生まれたままの自分を受けいれる事が大切なの」と、”I was born this way”の境地に至った理由も語った。

最新アルバム『Joanne』(2018年10月発売)は、ガガのミドルネームの元となり、ガガが生まれる前に若くして亡くなった叔母の名前をつけたことからもわかるように、ガガの内面やプライベートを最も反映した内容だという。アルバムの制作の過程で「たくさんの涙とたくさんの痛み、そして自分のことを知るために多くのことを学んだわ」だったと語り、それはつまりステファニー・ジョアン・アンジェリーナ・ ジャーマノッタとしてニューヨークに生まれた一人の女性としての表現でもある。

「一歩でも家の外を出ると自由を失って、私は世間の所有物になってしまう。私を追いかけ回すのは合法だし、ビーチにいる私を付きまとうのだって合法。警察を呼んだり、つきまとわないでと言うこともできない。私は自分の家から一歩出たら自由がなくなってしまうのならば、私は『ここ(心)の中では自由でいなきゃ。』と決めたの」として、自分があるがままで自分のしたいようにすることで、“もっとも正直な作品”が完成したのだという。スーパースターのレディー・ガガであることで、彼女自身の心の自由と本来の自分を取り戻した。

「私は音楽やライブ、アートをクリエイトする仕事をしている以上、できる限りのポジティブなメッセージを伝えて、インスパイアできるようにして行くことが私の使命だと思うの」と語るガガ。これからもファンを励まし、インスパイアして行くことになるだろう。Happy Birthday! (2018年3月・D姐記)

 

 

………こう書いてからほぼ2年の年月が過ぎた。この間、ガガはハリウッド大作に主演で女優デビューを飾っただけではなく、主演女優としてアカデミー賞ノミネートされ、共演・監督でもあるブラッドリー・クーパーとの共作サウンドトラックである珠玉のバラード「Shallow」でアカデミー賞を初受賞するという快挙を成し遂げている。そして待望のソロとしての新作『Chromatica』が5月29日に発売されることが発表されたばかりだ。

すでに世界で1位を獲得しまくっている先行シングルの新曲「Stupid Love」は、直球ど真ん中のガガらしい一曲。2月に行われたゼーン・ロウとのインタビューでガガはLG6 aka『Chromatica』のレコーディングは主に自宅で行われたと明かしたが、自宅といっても2016年に5億5千万円あまりで購入した故・フランク・ザッパの自宅兼レコーディングスタジオというそれだけで神がかった聖地のような場所だ。

一回聞いただけでガガとわかり、一回聞いただけで脳を刺激し耳から離れないキャッチーさはこれもまたガガという才能の塊の現れだが、ジャズ、カントリーポップ、ハリウッド女優という引き出しの多さを見せつけてきた後に、サウンド面であえてこの原点回帰とも言えるシンセ・ダンス・ポップという方向性はある意味で意外性とアーティストとしての自信を感じさせられる。

Lady Gaga – Stupid Love (Official Music Video)

 

「Stupid Love」のMVでは部族同士の抗争で混沌とした世界の中、平和を安らぎを祈る“スピリチュアル”なりし者たちの一人であるガガが率いる”カインドネス(親切な)・パンク”が闘うというシチュエーションが『マッド・マックス』や日本の特撮を彷彿とするタッチで描かれているが、最近のSNSからのメッセージでも「カインドネス(他人に親切に)」という言葉が発せられている。このコンセプトは既にアルバム製作中から構想されていたものであるだろうが、奇しくも世界的なパンデミック下の現在において最も必要とされる「他人を思いやる、という究極の人類がすべき愛」を既に訴えて、常にポジティブなメッセージを訴え続けているガガのブレなさ、に改めて圧倒される。時代を追わず、時代を作ってきたガガの新たな幕開けに全力で期待したい。

Written by D姐

Lady Gaga, Ariana Grande – Rain On Me (Official Music Video)


レディー・ガガ約3年半ぶりの最新アルバム

レディー・ガガ『Chromatica』
2020年5月29日発売
CD / iTunes / Apple Music


■著者プロフィール / ABC振興会D姐(Dane/あね/ねえ)

米国ハリウッド在住。セレブやエンターテイメント業界のニュースを独自の切り口で紹介する、アクセス総数5億ページ超の大人気サイト「ABC振興会」を運営。多数のメディアで音楽やセレブに関する執筆、現地ロサンゼルスでのテレビやラジオ、雑誌用のセレブやアーティストのインタビューやレッドカーペット等の取材をこなす。

ABC振興会:http://abcdane.net
Twitter:https://twitter.com/Dane_ABC

連載『D姐の洋楽コラム』 バックナンバーはこちら

 

Share this story
Share
日本版uDiscoverSNSをフォローして最新情報をGET!!

uDiscover store

Click to comment

Leave a Reply

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

Don't Miss