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『Cooleyhighharmony』と“ヒップホップ・ドゥーワップ”を生み出したボーイズIIメンの天才ぶり
1988年にフィラデルフィアの芸術系高校で結成したボーイズIIメンの成功への道は、その翌年、彼らがフィラデルフィアでニュー・エディションのマイケル・ビヴィンズの楽屋に忍び込んだことで始まった。急遽その場でオーディションとして、ニュー・エディションの「Can You Stand The Rain」を歌い、マイケル・ビヴィンズはあまりに圧倒され、その場でマネージメント契約を結ぶことを快諾した。マイケル・ビヴィンズが舵をとってからボーイズIIメンは間もなくモータウンと契約、そして1991年、デビュー・アルバムであり彼らのキャリアを桁違いの成功へと導く『Cooleyhighharmony』に取りかかった。
多くの楽曲はバンドが書き下ろしだった。プロデューサーには、のちにTLCの大ヒット曲にも携わることとなるダラス・オースティンを迎え、『Cooleyhighharmony』はオールドスクールなR&Bと1991年の影響を融合した作品となり、そのアルバムのリード・シングル2曲「Motownphilly」と「It’s So Hard To Say Goodbye To Yesterday」はまさにグループの多様性を表している。
マイケル・ビヴィンズとの共作「Motownphilly」でマイケル・ビヴィンズはラップでも参加し、フィラデルフィアの楽屋で初めてボイーズⅡメンに会ったことを詳細にラップし、その年のチャートを独占していたアップビートでヒップホップに影響されたニュー・ジャック・スウィングをサウンドを駆使した。一方で「It’s So Hard To Say Goodbye To Yesterday」は、G.C.キャメロンの1975年のヒット曲の背筋がぞくぞくするようなアカペラのカヴァーで、クラシックのトレーニングを受けていたメンバーのヴォーカルと密集したハーモニーが披露された。両シングルともにチャートを駆け上がり、全社は全米3位、後者は2位のヒット曲となった。
また「Please Don’t Go」や「This Is My Heart」などのスローな楽曲もあり、繊細な一面はシルクのようにスムースな「Uhh Ahh」で表現されている。そしてもう1曲アップビートなニュー・ジャック・スウィングに影響されたアンセムで、一度聞くと好きにならずにいられないジェームス・ボンドをサンプリングした「Sympin’」も収録されている。そして、強いヒップホップのビートの上にかぶせた完璧な音程の密集したハーモニーである「Under Pressure」は、もしかするとボーイズIIメン自身が称した“ヒップホップ・ドゥーワップ”を最も純粋に表現した曲かもしれない。
ボーイズIIメンの良家の出身のようなクリーンなイメージは新鮮で、当時のR&Bの大半のストリート・タフなイメージを払拭し、『Cooleyhighharmony』は1991年2月14日のリリースと同時に大成功し、全米アルバム・チャートで3位を記録すると瞬く間にマルチ・プラチナを達成した。翌年には、映画『ブーメラン』のサウンドトラックに収録され、ボーイズIIメンにとって初のNo.1シングルとなった「End Of The Road」も収録して1993年にリイシューし、アルバムはさらなる商業的な成功を得て、900万枚以上ものセールスを達成した。さらにアワード・シーズンの到来とともに、さらなる成功が彼らを待ち受けていた。『Cooleyhighharmony』は1992年のグラミー賞で最優秀R&Bパフォーマンス(ヴォーカル・デュオ/グループ)を受賞し、のちにチャートのトップに輝き、マルチ・プラチナを達成した次作のスタジオ・アルバム『II』のお膳立てとなった。
Written by Paul Bowler
ボーイズIIメン『Cooleyhighharmony』