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“パーティー・アルバム・オブ・ザ・イヤー” キャプテン・ビーフハートの『Shiny Beast (Bat Chain Puller)』
1978年に発売されたキャプテン・ビーフハートの4年ぶりのアルバム『Shiny Beast (Bat Chain Puller)』は未来を向きながらも過去にもうなずいている。それ以前にリリースされた1974年の『Unconditionally Guaranteed』と『Bluejeans & Moonbeams』ですでにファンたちに抽象的な不思議な体験を提供したので、新作アルバム『Shiny Beast (Bat Chain Puller)』は快く受け入れられた。
この作品はお蔵入りした『Bat Chain Puller』のセッションから始まる。『Bat Chain Puller』はキャプテン・ビーフハートがフランク・ザッパのレーベル、ディスクリート用に作ったものだったが、すぐに法的な争いに巻き込まれてしまった。そのセッションから主要となる楽曲(タイトル・トラック「The Floppy Boot Stomp」、ダンスホール調の「Harry Irene」、そして落ち着きのない「Owed T’Alex」)をキャプテン・ビーフハートが新しいヴァージョンとして、新メンバーのマジック・バンドと共にレコーディングし直した。その他にもずっと前に行われた『Strictly Personal』と『Clear Spot』のセッションまでさかのぼり、「Ice Rose」や「Suction Prints」を録り直し、さらに新曲も収録している。
場合によってはそのような異なる多数の音源は理解しにくい複雑な寄せ集めになったかも知れない。しかしキャプテン・ビーフハートはそれまでに様々な混沌としたものをセンス良く扱ったり、まとめることを上手くこなしてきた。最初1978年10月にアメリカでワーナー・ブラザーズから発売された『Shiny Beast (Bat Chain Puller)』では(海外ではヴァージンからリリース)、キャプテン・ビーフハートがトレードマークである原始的ブルースからシンセやマリンバまで様々な要素を詰め込んでいるが、それにも関わらず50分間一貫性をすばらしく保ち続けている。いつも慎重なキャプテン・ビーフハートが作った愛を失い悲しみ嘆く「Love Lies」ではアート・トリップ3世のマリンバが際立っており、トム・ウェイツの『Swordfishtrombones』の影響がわかる。
キャプテン・ビーフハートの作品の殆どが時代を超越したものであるが、「Tropical Hot Dog Night」は1978年という年を象徴している。みんなが『サタデー・ナイト・フィーバー』で盛り上がっている中でこの曲は突然変異によるマンボとして登場し、それは非常にダンスに適したトラックとなった。一応は、そうだと言えるだろう。そして「When I See A Mommy I Feel Like A Mummy」は軍隊のようなブードゥー的なトラックで、「Owed T’Alex」はキャプテン・ビーフハートと新しいマジック・バンドの最も『Trout Mask Replica』寄りな曲だと言えるかも知れない。
しかしキャプテン・ビーフハートが前進しながら採餌活動を行っているのに、そんなものは必要ないのかも知れない。フィーチャー誌でアルバムをレヴューしたのは後にマジック・バンドのギタリストとなるゲイリー・ルーカスで、彼は『Shiny Beast (Bat Chain Puller)』はキャプテン・ビーフハートのキャリアの中で“最も意味があり、冒険心のある楽しい”音楽と評し、その他にも“パーティー・アルバム・オブ・ザ・イヤー”と書いている。
どんなパーティーが好きかにもよるが、「Candle Mambo」は恐らくディスコに通う普通のダンサーたちにとっては求められるスキルが高過ぎたのかも知れない。ゲイリー・ルーカスが言うキャプテン・ビーフハートの“お決まりのジグザグするスライド・ギター、飛び跳ねるベース、そして少しだけ卑劣な不調のパーカッション”は、どんなにベテランなダンサーにとっても踊るのは難しい。しかし、キャプテン・ビーフハートが海で遭難してしまったのではないかとファンたちが心配した4年の沈黙の後にリリースされた『Shiny Beast (Bat Chain Puller)』は、祝福すべき作品であることは間違いない。
By Jason Draper
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