アルバムの「革命」的な側面は、「War」で最も顕著に表れている。1963年の国際連合でハイレ・セラシエが行った著名なスピーチを基に作られた曲だ。「Until the philosophy which holds one race superior and another inferior(ある人種が優位、ある人種が劣位という思想が) / Is finally and permanently discredited and abandoned (最終的かつ永久的に信憑性を失い、捨て去られるまで)/ Everywhere is war(至るところで戦いは続いていく)」とマーリーは歌っている。同曲の歌詞にあるイデオロギー的説得力は、誌的というよりも論争的だ。
音楽、マリファナ、ジャーが世界の問題を解決するというマーリーの信条は、決してぐらつくことはなかった。彼の哲学は、厳しい宗教的規範に支えられていた。「The wages of sin is death (罪の報いは死)/ The gift of Jah is life(ジャーの贈り物は命)」と彼は「Johnny Was」で歌い、息子がゲットーのストリート・ファイトに巻き込まれて銃殺された母親の痛ましいストーリーを気品を持って語っている。マーリーは、全ての人々に平和と愛を信条とする政治システムを支持していたが、革命的な熱意で底辺層の人々を擁護したため、時に気まずさを生み出した。例えば、「We’re gonna chase those crazy baldheads out of town」と彼は「Crazy Baldheads」で歌っている(「baldheads」は白人を意味するラスタの軽蔑語だ。その白人がレゲエ・ファンか否かは関係ない)。
アルバム全曲が、宗教的な教義や社会政治的なイデオロギーを多分に含んでいたにもかかわらず、『Rastaman Vibration』は商業的なメインストリームの世界にも精力的に宣伝された。1曲目の「Positive Vibration」は、「Live if you want to live(生きるなら、思いきり生きろ)」、「Make way for the positive day.(ポジティヴな日に道を譲れ)」といった陽気で心地良いスローガンが、穏やかかつ軽快に謳われている。甘美なコーラスと爽やかなサクソフォン・アレンジを持つ「Roots Rock Reggae」は、アメリカのラジオ・プログラマーに対し、マーリーの曲をラジオでかけてほしいと臆面もなく訴えている曲だ。「Play I on the R&B(R&B局で俺をかけてくれ)/Want all my people to see(同胞みんなに見てほしいんだ) / We bubblin’ on the Top 100(俺たちがトップ100を賑わしてるところ) / Just like a mighty dread.(ドレッドロックの男らしく)」。1966年のウェイラーズの曲を再レコーディングした「Cry To Me」は、甘やかでソウルフルな楽曲だ。豪華なハーモニーと軽快な雰囲気を持つ同曲は、あらゆる悩みの種に対し、赦しと安らぎを与えてくれる。
過去作同様、『Rastaman Vibration』の楽曲の大半で、誤ったソングライティング・クレジットが記載されている。マーリーがかつて契約していた音楽出版社、ケイマン・ミュージックとの争議が続いていたためだ。今回、曲のクレジットを手に入れたのはヴィンセント・フォード(車椅子に乗り、キングストンで貧困者のための無料食堂を運営していたマーリーの友人。「No Woman, No Cry」の作者としてもクレジットされている)、リタ・マーリー、バレット兄弟だ。1987年、同アルバムそしてその他のアルバムでも全曲が実際はマーリーによって書かれてたものであるという判決が出たことで、その時点から音楽出版のクレジットはボブ・マーリー・エステートに再譲渡された。
パンクで揺れる激動のロンドンで録音された後期の重要アルバムにして、アイランド第6作。
1999年にタイム誌により、「20世紀最高の音楽アルバム (the best music album of the 20th century)」に選ばれた本作が40周年を迎える今年6月に3枚組豪華エディションで登場!!
オリジナル・ヴァージョンに加え、長男のジギィ・マーリーがセッション・テープを丹念に精査、これまで使われてこなかったヴォーカルや演奏、聴いたことのない歌詞を含めて再構築した”エクソダス40″をDisc 2に、更には7曲の未発表トラックを含む1977年6月1~4日のロンドン・レインボー・シアターでのエクソダス・ライヴをDisc3に収録。
Exodus[輸入盤][UNIVERSAL MUSIC STORE限定盤][Gold Vinyl][40th Anniversary Limited Edition] 【アナログ】