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メンバー脱退を乗り越えたフェアポート・コンヴェンションの『Angel Delight』
フェアポート・コンヴェンションには様々な局面があったが、幾度のメンバー・チェンジにもその度に順応してきた。1971年7月3日、バンドの6作目、リチャード・トンプソン脱退後に初めてリリースしたアルバム『Angel Delight』が全英チャート入りを果たした。メンバーチェンジを見事に乗り越えただけでなく、イギリスで自己最高位の8位を獲得したのだ。
このアルバムはジョン・ウッドとの共同プロデュース作品で、フェアポート・コンヴェンションはこの時4ピースとして活動、彼らの輝かしい歴史の中でも最も賞賛される4人のメンバー、サイモン・ニコル、デイヴ・マタックス、デイヴ・ペッグとデイヴ・スウォーブリックというライナップだった。トラディショナルな5曲、新しいバンドの作曲が5曲というバランスのとれたLPだった。
1970年に発売された5枚目のアルバム『Full House』の後にリチャード・トンプソンは円満にバンドを離れたが、彼の名前はデイヴ・スウォーブリックとの共作という形でニューアルバムにも登場しており、その曲が「The Journeyman’s Grace」と「Sickness & Diseases」だった。メンバー4人全員が歌い、リード・ヴォーカルのほとんどはデイヴ・スウォーブリックとサイモン・ニコルが担当した。
フェアポート・コンヴェンションのファンに崇拝されている『Angel Delight』は全英8位にランクイン、5週間チャートにい続けた。当時のテレビ番組『Top Of The Pops』の新作紹介のコーナーへの出演による影響もあった。ちなみにこの番組名は、自伝的なアルバム・タイトル曲「Angel Delight」の歌詞にも取り入れられていたりもしている。
「当時、俺達はリチャードと仲違いしていたんじゃなくて、彼は自分の道を進んでいきたかったんだ」とデイヴ・ペッグは振り返る。「その頃には彼はエンジェル(バンドが生活していたハートフォードシャーのパブ、アルバムのタイトルをインスパイアした場所)を離れてロンドンに住んでいたけど、まだ部屋もエンジェルにあったからよく帰ってきていたよ」
「“もうこれでバンドはおしまいだ”と思ったんだ、リチャードなしにみんなが続けたいと思わないだろうって。リチャードはバンドを離れても必ず成功すると思っていたし、彼の門出をみんな喜んでいた。でも僕たちにとっては終わりになるんだろうなと。俺は新入りだったから俺が決めることではなかったけど、俺自身は続けていきたいなと思っていた」
「スウォーブがババコム・リーという人の古い新聞記事を発見した時に、バンドを続けていく刺激になった。スウォーブはリーの話をLPの土台にして、全員が貢献しながらそれを曲にしていこうって。“たしかに、全員でできるよ、これならいけるかも”という思いになって。それで出来上がった楽曲がアルバム『Babbacombe Lee』だ、そして『Angel Delight』のわずか5ヶ月後にリリースしたんだ」
「みんなで座って曲作りを始めたんだ」とデイヴ・ペッグが続ける。「みんなで乗り越えるものが具体的にあったからこそ『Angel Delight』の制作も続けていこうと思ったし、エンジェルでの生活を語った楽しいタイトル・トラックを書くこともできた。やっとバンドを続けていく勢いがついたんだ」。
『Angels Delight』の楽曲は、フェアポート・コンヴェンションの50年の歴史の最初の10年を称えた『Come All Ye: The First Ten Years』にも収録。2017年7月28日リリース。