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12週連続全英1位を記録したボブ・マーリーのベスト盤『Legend』が持つ伝説的記録の数々
1984年5月19日、伝説(Legend)が生まれた……というのは決して大袈裟なハッタリではない。この『Legend』というのは、ボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズの偉業を讃えるためにアイランド・レーベルがまとめたベスト盤の題名だ。この日、イギリスのアルバム・チャートで、『Legend』は初登場1位を記録(上の写真は『Legend』の発売当時にイギリスで制作された広告)。
当時の人間は知るよしもなかったが、この『Legend』は世界でも類を見ない歴史的な大ベストセラーのベスト盤となった。もしかすると時代の雰囲気をとらえたレコードの典型例だったと言っていいのかもしれない。あの頃、偉大なるレゲエの伝道師、ボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズの存在に気づいていた音楽ファンは世界中でかなりの人数にのぼっていた。しかしその大半は、彼らのレコードをまだ手に入れてなかったのだ。こうして『Legend』は決定盤となった。とはいえNME誌のような一部のメディアは、アルバムの内容がウェイラーズよりもボブ・マーリーのほうに偏り過ぎていると批判していた。
同誌掲載のレコード評で、リチャード・クックは次のように述べている。「これは、大多数の人が抱いているボブ・マーリーのイメージに違わないアルバムだと思う。「Jamming」や「Three Little Birds」ではニヤニヤ笑うシャーマンが、「Waiting In Vain」や「Is This Love」では、ざっくばらんな色男が、「Exodus」では平和を好む大人物。こういった人気者のボブの歌を聴いていると、彼は人生の大半を費やして、何もかもじきに丸く収まるよ、と説いていたように思えてしまう。今のイギリスでは、ボブのそういう側面ばかりが幅を利かせている」。
レコードを買う側は、こうした懸念を抱いていなかった。このベスト盤は5月から8月まで12週連続でイギリスのアルバム・チャートの首位に留まった。トップ10圏内から外れたのはさらにその8週間後のことだ。そしてチャート入りの期間は、1985年10月までの実に74週間に及んでいる。その後もこの『Legend』は全英チャートに何度も返り咲いており、1991年には最高11位を記録。1994年にもトップ20入りを果たし、1999年、2003年、2012年にはトップ40圏内に入っている。また2014年9月には、ディスカウント・キャンペーンのおかげでトップ10にも1週間入った。
2017年5月の時点で、このアルバムの全英チャートでの成績は、トップ75入りの期間が合計529週間、トップ100入りの期間が合計772週間となっている。これは年に換算すれば約15年間に相当する。また全英チャートで首位に達してからわずか9日後に、このアルバムはダブル・プラチナ・ディスクに認定された。さらに1985年にはトリプル・プラチナ、1991年には4xプラチナ、1993年には5xプラチナ、1994年には6xプラチナに認定されている。また全世界でも『Legend』は抜群の人気を保っており、総売り上げ枚数は2,500万枚と推計されている。
2014年の再ヒットは、Google Playの特別セールによってもたらされたものだった。約9ドルという通常価格が99セントにまで大幅に引き下げられたのである。その結果、全米アルバム・チャートでは順位が100位から5位に急上昇した。これは、ボブ・マーリーの作品がアメリカのアルバム・チャートで記録した順位の中では最高記録となった(それまでは、1976年に『Rastaman Vibration』が記録した8位が最高だった)。ちなみに発売当初の『Legend』は、全米チャートでは最高54位に留まっている。
このアルバムは、華々しい記録をいまだに更新中だ。2016年は1年を通じて全英チャート入り(2015年の大部分もランク入りしていた)。そして2017年もチャート入りを継続中。この「伝説」はこの先も決して絶えることがないだろう。
Written By Paul Sexton
ボブ・マーリー『Legend』
ボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズ SHM-CD/紙ジャケット全11タイトル
2020年6月24日発売
【Amazon.co.jp】特典:メガジャケ(サイズ24㎝×24㎝)
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