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オールマイティ、オリジナルメンバー初の来日公演:英国屈指のライヴ・バンドの熱量と興奮

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Photo by Yuki Kuroyanagi

デビューから35周年を経て、オリジナルメンバーでは初となる来日公演が2025年1月29日から実際中のオールマイティ(The Almighty)。このツアーの中から、川崎クラブチッタの初日公演となった1月30日のライヴレポートを掲載。音楽評論家の増田勇一さんによるレポートです。

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2023年にオリジナル・ラインナップでの復活を果たした英国屈指のライヴ・バンド、オールマイティーがファン待望のジャパン・ツアーを実施中だ。1月30日には、前夜の大阪・BIG CATでの公演を経て、彼ら自身と所縁の深い川崎・CLUB CITTA’のステージに立ち、約1時間45分に及ぶ熱演を披露。会場に詰め掛けたさまざまな世代のオーディエンスとの一体感も含め、きわめて熱量の高いライヴとなった。

開演定刻の午後7時を5分ほど過ぎた頃に「まもなく開演です」というアナウンスが流れると、ほぼ同時に手拍子とともに「オール・ファッキン・マイティー!」というコールが発生。場内には実際の演奏がスタートする以前から熱気が渦巻き始めていた。そして、さりげなくステージ上の配置に就いた4人が繰り出す抜群の切れ味を伴った大音量のリフが聴こえてきた瞬間、一気に場内の温度が上がったかのような興奮をおぼえた。

ショウの幕開けを飾ったのは1989年発表のデビュー・アルバム『Blood, Fire&Love』に収められていた「Power」だった。昨年11月に行なわれたUKツアーの際は2ndアルバム『Soul Destruction』(1991年)のオープニング・チューンだった「Crucify」が1曲目に据えられていたが、彼らはその際とは異なった新たなセットリストを組んできたようだ。

以降の具体的な演奏曲目/曲順については、本日、1月31日にも同会場での公演が控えているだけに、必要最小限の記述にとどめておきたいと思うが、この夜のトータル演奏曲数は3曲のアンコールを含めて全21曲というボリューム感。そのうち先述の1stアルバムからは3曲、2ndアルバムからは6曲、さらに第3作『Powertrippin’』(1993年)から4曲、第4作『Crank』(1994年)から7曲、そして第5作『Just Add Life』(1996年)から1曲という選曲バランスとなっていた。まさに至れり尽くせりの演奏内容である。

オーディエンスが求める曲を惜しみなく提供するという意味においてはサービス精神旺盛な彼らだが、そのライヴ・パフォーマンスは凝った演出や派手さとは無縁のものだ。ロゴとシンボルマークが描かれたバックドロップとマーシャルの壁を背にしながら、黒い衣服でステージに立つ4人が演奏するのは、シンプルきわまりない直球型ロックンロール。良い意味で、愚直という言葉が似つかわしい。各メンバーの見せ場となるような長いソロ・パートが設けられているわけでもなく、むしろ淡々と曲が繰り出されていく。照明についても色とりどりのカラフルさはなく、ほとんどの曲では赤と白が基調とされていて、哀愁味を帯びた曲で青みがかったライトが用いられているくらいのものだ。

そうした意味においては実のところ変化に乏しいライヴではあるのだが、それでも一瞬たりとも退屈を味わうことがなかったのは、猪突猛進型で一本調子のバンドのようでありながら、彼らなりの緩急というものがあり、往年のような向こう見ずなパワーや若々しいエネルギー/テンション感のみならず、すでに50代後半になっている彼らならではの深み、円熟味といったものが伝わってきたからだろう。

また、興味深かったことのひとつに、フロントマンであるリッキー・ウォリックがかつて解散を経てソロ活動をしていた時代に得てきたものが、オールマイティーの音楽をいっそう味わい深いものにしていた点がある。このバンドの音楽は基本的にはパンク・ロックをルーツとするものだが、爆音で繰り出される装飾要素とは無縁のロックンロールがメタル層からも大いに支持され、モーターヘッドやシン・リジィがそうだったように、どちらの支持層からも愛されてきた。

実際、リッキーのパフォーマンスやたたずまいには、レミーやフィル・ライノット、あるいはソーシャル・ディストーションのマイク・ネスといったカリスマたちを思い起こさせるところがある。そして筆者自身が今回のライヴを通じて感じさせられたのは、ことにアコースティックな響きやメランコリックな感触のある楽曲においての、ジョン・メレンキャンプに通ずるような味わいだった。彼にはカントリー・ミュージックをはじめとするアメリカのアーシーな音楽に傾倒していた時期があるが、そうした時代に掘り下げられたものが、そもそものパンク的なルーツと相まって、独特の説得力を生み出しているように感じられたのだ。

そうした新たな発見も伴ったこの夜のライヴにおいて、リッキーが今回の復活劇や日本への帰還についてストーリーテラーのように長々と話すようなことはなかったが、彼の言葉の端々からは、感謝と喜びがストレートに伝わってきた。

このバンドの初来日公演が行なわれたのは1993年のことで、その時点ですでにオリジナル・ギタリストのアンディ“タントラム”マッカーフィーは脱退しており、彼を含むオリジナル・ラインナップでの来日は実は今回が史上初となる。しかもタントラム個人としても、今回が正真正銘の日本初上陸。そんな彼を紹介するリッキーの言葉と表情からは素直な嬉しさが伝わってきたし、どの時期の楽曲をプレイしても途切れることのないオーディエンスからの熱烈な反応に対しても、満足げな笑みを浮かべていた。

最後の最後はステージ中央で肩を組み、深々とお辞儀をして感謝の意を示し、再会を約束したうえでステージから去っていった4人。その後ろ姿を追うように、オーディエンスは手を叩きながら「オール・ファッキン・マイティー!」と声をあげ続けていた。

今回の来日公演はきっと、これから彼らと日本のファンが新たな何かを築いていくうえでの起点となるはずだと感じずにはいられなかった。そして、この短いジャパン・ツアーは今夜、CLUB CITTA’で幕を閉じることになる。次の来日の機会を待つ前に、まずはこのライヴを見逃さずにおきたいところである。

Written By 増田勇一 / All Photo by Yuki Kuroyanagi


初期3タイトル 2CDエディション日本盤初発売ジ・オールマイティ『Blood, Fire and Love』『Soul Destruction』『Powertrippin’』
2025年1月22日発売
CD



 

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