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【発売50周年】10ccの名曲「I’m Not In Love」解説:本当にこれはラヴ・ソングなのか?

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Photo: Richard E. Aaron/Redferns/Getty Images

ロック界を代表するラヴ・ソングの一つである10cc(テンシーシー)の「I’m Not In Love」は、誰からも愛される1曲である。1974年の後半から制作が始まり1975年に入って完成した同曲は、グループの革新的なアルバム『The Original Soundtrack』に収録された。

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10cc – I'm Not In Love

 

レコーディングの様子

エリック・スチュワートを中心とするオリジナル・メンバーたちは、丹精を込めてこの1曲を完成させた。エリック・スチュワートが、グレアム・グールドマン、ケヴィン・ゴドレイ、ロル・クレームというメンバー3人による“アー”という声の録音に3週間を費やしたという事実は、その力の入れ具合を象徴しているといえよう。

彼は、半音階を構成する12音すべてを3人に16回ずつ歌わせることで、のべ48人分の“コーラス隊”を作り上げたのだ。最終的にクレームはスチュワートに対し、複数のテープ・ループを作ることを提案。だがその長さは12フィート (約3.7m) にも及び、技術面での制作の難易度はさらに高まることとなった。

エリック・スチュワートは、彼の妻が不意に発した言葉にヒントを得て「I’m Not In Love」を作詞したときのことをこう語る。

「グロリアにあるとき“愛してるって言わなくなったわよね”って言われたんだ。僕は“そうだね。でも言い続けていたら、価値がなくなってしまうだろう”と返した。これは二人のあいだでの何気ない会話だったんだけど、その考えが僕の頭にずっと残っていた。それからしばらくして、作曲のパートナーにアイデアをぶつけてみたんだ。“僕は恋なんかしていない (I’m not in love)”というフレーズで始まったあと、その主人公が間違いなく恋をしていると分かる曲のアイデアをね。すると、彼はそれを気に入ってくれたんだ」

この曲を共作したスチュワートとグールドマンはもともと、「The Girl From Ipanema (イパネマの娘) 」のようなラテン調のサウンドに、シャッフル・ビートを組み合わせたトラックにするつもりだったという。だが完成したトラックはそれと大きく異なるものだった。

そのバック・トラックは、“ウォール・オブ・サウンド”の手法に近い仕上がりになったのだ。また曲の中盤に、“大の大人は泣かないものよ、静かにして、大の大人が泣いちゃだめ (Big boys don’t cry, be quiet, big boys don’t cry)”というスタジオの事務員の声を加えたとき、メンバーたちは特別な1曲が出来たことを確信したのだという。

I'm Not In Love (Live From London/1982)

エリック・スチュワートはさらにこう話している。

「この曲の魅力は何か、と聞かれれば簡単だ。誰もが愛する人に伝えたいと思うことが歌われているのさ。だからこの曲は、数え切れないほどのカップルにとって“私たちのレコード”になったんだ。それに、この曲からはどういうわけか、レコーディングをしていたときの僕ら4人の喜びが伝わってくるのさ」

 

楽曲の成功

アルバム『The Original Soundtrack』は、1975年3月にイギリスで発売。シングル「I’m Not In Love」は、5月の前半にアメリカで先にリリースされ、5月17日にはビルボードのホット100チャートに入った。それ以降、同曲はチャートを順調に上昇していき、7月26日に最高位となる2位を記録。そのまま3週間に亘ってこの順位にとどまった。

なお、この3週に同曲の1位獲得を阻んだのはそれぞれ、ヴァン・マッコイの名ディスコ・ナンバー「The Hustle」、イーグルスの「One Of These Nights (呪われた夜)」、そしてビー・ジーズの「Jive Talkin’」だった。一方のイギリスでは、同シングルは5月末に全英チャート入りを果たすと、その1ヶ月後には2週に亘り首位に立った。

Written By Richard Havers



10cc『The Original Soundtrack』
1975年3月11日発売
iTunes Store /Apple Music / Spotify / Amazon Music / YouTube Music




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