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ボン・ジョヴィ「I’ll Be There For You」解説:“彼らにしか書けない真のパワー・バラード”
かつてクラシック・ロック誌は「I’ll Be There For You」について、「ボン・ジョヴィにしか書けない真のパワー・バラード」と表現した。確かに、この言葉に反論するのは難しい。結局のところ、ニュージャージー出身のベテラン・ロック・バンドである彼らは、このほかにも感動的で色褪せないスタジアム級のアンセムを数多く生み出してきたのだ。「Never Say Goodbye」、「Living In Sin」、「Thank You For Loving Me」、「This Ain’t A Love Song」などはその好例といえよう。
しかし「I’ll Be There For You」には、いつだってそれらの楽曲とは一線を画す魅力がある。ロマンティックな楽曲を集めたミックステープの定番曲となっている同曲は、6分近くに及ぶ壮大な楽曲だ。そしてジョン・ボン・ジョヴィと、グループのオリジナル・リード・ギタリストであるリッチー・サンボラが共作したこの曲は、いま聴いてもこの上なくアンセムらしい。
また、ボン・ジョヴィが懇願するように歌う次の歌詞
I’d live and die for you/I’d steal the sun from the sky for you
俺はきみのために生き、きみのために死ねる
きみのためなら、空から太陽を盗んでこよう
は、誰かを愛し、恋に破れた経験のあるすべての人の心を揺さぶるのである。
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この曲の特徴は、リッチー・サンボラのブルージーなギターを前面に据えたダイナミックなサウンドや、卓越したハーモニー、大スケールのコーラス・パートに向けて徐々に盛り上がる構成などにある。そうした点からも「I’ll Be There For You」が大ヒット曲になり得ることは明白だった。
そして同曲は、ボン・ジョヴィの4thアルバム『New Jersey』からの3rdシングル (同作からは全部で4作のシングルがリリース)に順当に選ばれた。なお、1988年発表の『New Jersey』は、全米アルバムチャートの1位を4週連続で獲得したのち、米国内の売上だけで7xプラチナに認定されたグループ屈指の重要作である。
また、目を引くMTV向きのビデオも「I’ll Be There For You」の評判を高める上で大いに役立った。デフ・レパード、ジャネット・ジャクソン、ザ・ローリング・ストーンズらのプロモ・ビデオも手がけているウェイン・アイシャムが監督したその印象的な映像には、単色の青いライトに照らされた薄暗いステージで演奏するメンバーたちの姿が映し出される。後半には白黒のステージ映像が劇的に挿入されるが、これはその当時に行われたロンドンのウェンブリー・アリーナでの3夜に亘る公演で撮影されたものだ。
この「I’ll Be There For You」のビデオには、絶大な人気を誇った80年代後半のグラム・メタル期における、ボン・ジョヴィの最高にクールな姿が捉えられている。そのおかげもあって、同曲は文句なしにチャートを上昇。先にリリースされたシングル「Bad Medicine」に続いて、1989年の春にビルボード・ホット100とキャッシュ・ボックス・トップ100の両チャートで1位を獲得した。
そののち、ボン・ジョヴィの歴史における「I’ll Be There For You」の地位は揺るぎないものになった。同曲は『New Jersey』のリリース後に行われた長期の”ジャージー・シンジケート・ツアー”を通して、グループのライヴの定番として定着したのである。
2年をかけて世界中を回ったこの歴史的なツアーで彼らは、北米のバンドとしていち早くソ連時代のロシアで演奏したグループにもなった。「I’ll Be There For You」はその全日程で取り上げられただけでなく、現在に至るまでライヴでの人気曲として高い頻度で披露され、新たな世代のファンも楽しませているのだ。
Written By Tim Peacock
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