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BBCが90年の歴史を誇るスタジオをハンス・ジマーらに売却

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8月 16, 2023

Hans Zimmer - Photo: Tristan Fewings/Getty Images for EON productions and Prime Video

BBCが、ロンドンにある歴史的サウンド・スタジオ、メイダ・ヴェール・スタジオ（Maida Vale Studios）を、数々のアカデミー賞受賞歴を誇る作曲家のハンス・ジマー、映画プロデューサーのティム・ビーヴァン、エリック・フェルナーらによるビジネス・パートナーシップに売却したことを、イギリスの放送局が報じている。

Slipknot – Duality at BBC Maida Vale Studios for the Radio 1 Rock Show

1930年代から数々の音楽録音に使用されてきたこの名高いスタジオは、アデルからデヴィッド・ボウイ、ザ・ビートルズに至るまで、名だたるアーティストたちの制作の拠点として、また伝説的DJジョン・ピールのラジオ番組“Peel Sessions”に出演した多くのバンドがセッションを繰り広げてきた場所としてその長い歴史を誇っている。BBCは2018年に同施設を閉鎖し、新たな局専用音楽拠点への移転計画を初めて発表していたが、メイダ・ヴェール・スタジオは公式に売りに出されたのは昨年11月になってからだった。

ハンス・ジマーや彼のビジネス・パートナーであるスティーヴン・コフスキーを含む新たなオーナー陣は、元々ローラースケート場で、現在は第二級指定建築物となっている同スタジオを、今後も音楽制作の拠点として運営しつつ、同時に、次世代の作曲家、プロデューサー、編集者、エンジニアのための“ワールドクラスのスタジオ・スペース”に生まれ変わらせるために数百万ポンド規模のリフォームを行うことを発表している。

契約条件は明らかにされていないが、昨年の不動産広告でメイダ・ヴェール・スタジオが1050万ポンド（約19億円）以上のオファーで売りに出されていたことが報じられていた。

Radiohead – Bloom (From the Basement)

BBCの音楽ディレクターであるローナ・クラークは、今回の売却成立の発表時に、「この象徴的な建物での音楽制作の輝かしく活気ある未来に繋がる売却に漕ぎつけたことを嬉しく思っています」と述べている。

ハンス・ジマーは、45年前に同スタジオでBBCと初めて仕事をした当時を「私はいまだにその強い引力と、その壁に触れてみたいという願望を抱いたことを記憶しています。そうすることで、これらの壁に日々響き渡っていた素晴らしい音楽を創り出すアーティストたちと繋がれるような気がしたのです」と振り返り、また自身の経験を未来へと繋ぐために、「メイダ・ヴェール・スタジオを、次世代の人々に、私が与えられたのと同じ、創作を続け、諦めない機会を与えることができる刺激的な場所にしたいと思っています」と語った。

Setting up a session recording at Maida Vale studios

前述のアーティストやバンドに加え、レッド・ツェッペリン、ダスティ・スプリングフィールド、ビヨンセ、そして1977年に亡くなる数日前に最後の録音を行ったビング・クロスビーなど、メイダ・ヴェール・スタジオはその90年に及ぶ歴史の中で、数知れないロックやポップのスターたちの制作の拠点として機能してきただけでなく、BBCの先駆的なレディオフォニック・ワークショップ（電子音楽の研究所）の拠点でもあった。

BBCが2018年に同スタジオの売却計画を発表した際、レディオヘッドのプロデューサーとして知られるナイジェル・ゴッドリッチは、建物の保存を求める一人として、同施設について「非常に重要な文化遺産の一部であり、その価値はアビイ・ロード・スタジオに匹敵する」と述べていた。

現在、このスタジオは、BBC交響楽団の拠点として、BBCのラジオおよびオンライン・ネットワークで放送される多くの音楽やドラマのレコーディング・セッションに頻繁に使用されている。BBCは新たなオーナーに建物を売却後も新しい複合施設が完成するまで、賃借契約のもと同スタジオを使用し続ける予定だという。BBCの新しい複合施設は現在、東ロンドンに建設中で、2025年後半にオープンする予定だ。

Written By Tim Peacock