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スパークス『Kimono My House』解説:本国を離れて録音、ジャケに日本人女性を起用した名作
アイランド・レコードから1974年5月1日に発表されたスパークス(Sparks)3枚目のアルバム『Kimono My House』は彼らの初の成功作であり、今ではグラム・ロックのベスト・アルバムの1つであると考えられている。
彼らの作品として初めて英米両国でチャート入りを果たしたこのアルバムはアメリカでの最高成績は101位止まりだったが、彼らが当時拠点としていたUKでは大きな話題を呼んだ。マフ・ウィンウッドがプロデュースを手がけた同作は全英4位をマークし、収録曲である「This Town Ain’t Big Enough For The Both Of Us」や「Amateur Hour」も大ヒットを記録している。
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アルバム制作について
このアルバムでスパークスのメイル兄弟はアイランド・レコードと契約。それまで一緒にやってきたバンド・メンバーたちと袂を分かち、兄弟だけでロンドンに移り住んだ。
ピンク・フロイドやザ・キンクスのような先駆的なブリティッシュ・ロック勢を敬愛するロン・メイルとラッセル・メイルにとって、UKは最高の環境であり、完成したアルバム『Kimono My House』は同国のヒット・チャートで大ヒットを記録。
マフ・ウィンウッドがプロデュースを担った『Kimono My House』のレコーディングは、兄弟がメロディー・メイカー誌の投稿欄で見つけた新たなバック・バンドとともに行われた。同作のリリース当時、UKではグラム・ロック・ブームが絶頂期を迎えており、スパークスは実験性と演劇性が融合した彼らならではのグラム・ロックを展開してみせている。
『Kimono My House』のハイライトは、なんといってもオープニング・トラック「This Town Ain’t Big Enough For The Both Of Us」だ。妥協を排して続くられたこの曲では、オペラのようなスケールのトラックに乗せて、ラッセルがファルセット・ヴォーカルを披露している。風変わりなサウンドだったにもかかわらず、「This Town Ain’t Big Enough For The Both Of Us」は1974年の春に全英シングル・チャートで2位にまで達するヒットを記録。それを追い風にアルバムも同4位を記録している。
アルバムタイトルとジャケット写真
アルバム収録曲「Hasta Mañana, Monsieur」の一節にも登場するアルバム・タイトル『Kimono My House』は、ローズマリー・クルーニーのヒット曲「Come On-a My House」の曲名にかけたダジャレだ。
二人の女性が日本の着物を着ているアルバム・ジャケットのコンセプトは、ロン・メイルが戦時中に刊行された雑誌『ライフ』で見た、第二次世界大戦中の日本のプロパガンダ写真にインスパイアされたものだ。その写真には、英国の首相ウィンストン・チャーチルの写真を持ちながら、片手で鼻をつまむ着物姿の日本人女性2人が描かれていた。そこから影響を受けたロン・メイルの自作による仮デザインには、チャーチルの写真の代わりに、スパークスの前作『A Woofer in Tweeter’s Clothing』(1973年)のジャケットを代用していた。
最終的なジャケットは、スパークスのレーベルメイトであるロキシー・ミュージックの初期ジャケットと同じチーム、アイランド・レコードのマーケティング・ディレクター、ティム・クラーク、写真家のカール・ストエッカー、スタイリストのニコラス・デ・ビルによって制作された。
着物姿で写っているのは、日本人女優のミッチ広田とクニコ・オカムラだ。ちなみに右で扇子を持っているミッチ広田はデヴィッド・ボウイが1980年に発売したアルバム『Scary Monsters And Super Creeps』に収録されている「It’s No Game (Part 1)」にナレーションとして参加している。
彼女たちは、当時ロンドンで公演していたツトム・ヤマシタ 率いるグループ Stomu Yamash’ta’s Red Buddha Theatreのメンバーだった。2014年の取材で、ミッチ広田はこう振り返っている。
「私たち夫婦は、ヨーロッパとアメリカを回っていた女優でした。夫のジョージ広田は音楽監督をしていました。日本人女性を探しているレコード会社(アイランドレコード)のディレクターから声がかかり、私たちにモデルの依頼があったんです。右の女性(扇子を持っている)が私です。特にポーズに指定はなく、自由に動かされました。髪の整え方も、着物の着付けもわからない。着付けをしてくれる人もいなかったですね。撮影には4、5時間かかりました。インパクトはありましたが、ちょっと変かな、と当時は思っていましたね」
40周年を祝ったオーケストラとの共演
2014年12月19日にスパークスは、ロンドンのバービカン・センターにて『Kimono My House』の全曲を披露した。彼らとともにステージに上がるのは、35人編成のヘリテイジ・オーケストラだ。アルバムの収録曲にはネイサン・ケリーによるオーケストラ・アレンジが新たに施され、スパークスは長年に亘るキャリアを代表するその他の人気楽曲も演奏された。なお、ヘリテイジ・オーケストラは音楽への型破りなアプローチで知られ、これまでも新進気鋭の実験的アーティストと共演してきた経歴を持つ。
開催前、メイル兄弟はこうコメントを寄せていた。
「僕たちのアルバム『Kimono My House』の40周年を一緒に祝ってほしい。その一夜を最高に特別なものにするため、僕たちは35人編成のヘリテイジ・オーケストラと一緒にアルバムの全曲を演奏します。僕らは完全なお祝いムードになるだろうし、焦って家に帰る必要もないから、ほかの22作のアルバムから厳選した楽曲も、華々しいオーケストラの演奏とともに披露したいと思う。40年待ち続けていてくれたと思うけど、ようやくそのときが来たんだ!」
Written By uDiscover Team
スパークス『Kimono My House』
1974年5月1日発売
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最新アルバム
スパークス『The Girl Is Crying In Her Latte』
2023年5月26日発売
日本盤CD 6月23日発売
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