News
メタリカによる“ロックの殿堂入り”受賞スピーチ
2023年4月14日に発売されるメタリカ(Metallica)にとって12枚目、そして6年4か月ぶりとなるスタジオ・アルバム『72 Seasons』(予約はこちら)。
この久しぶりのアルバムの発売を記念して、2009年にメタリカがロックの殿堂(Rock and Roll Hall of Fame)入りを果たした際のバンドの受賞スピーチの全文を掲載。
*レッド・ホット・チリ・ペッパーズのフリーによる、メタリカの“ロックの殿堂入り”祝福スピーチはこちら。
<関連記事>
・メタリカ、6年4か月ぶりの新作アルバム『72 Seasons』2023年4月に発売決定
・『ストレンジャー・シングス』と音楽たち:リバイバルヒットを生むドラマ
ラーズ・ウルリッヒ
いいかい、忘れちゃいけないのは、これが2階席に腰掛けているみんなのおかげだってことだ。それを忘れないでくれ。2階席にいるみんなこそ、俺たちがここに立っている本当の理由だ。そうだろう?(編註:2階席は一般のお客さんの席=自身ファンのこと)
俺が思うに ———— 俺はいま考えながら話している。何も準備してきていないんだ。即興で喋るから、2分だけ時間をくれ。俺が思うに、ロックンロールに肝心なのは可能性だ。あとは夢を持つことと、俺たち6人がこうしてここに立てているということかな。生意気なガキに、落ちこぼれ、一匹狼、そんな集団さ。俺たちはみんな、育った場所も、環境も全然違う。それなのに、この最高の夜に、これだけの人たちの前で顔を揃えている。
目の前を見ると、前列にはすばらしいミュージシャンたちや才能ある人たちも座っているし、2階席のみんなだっている。ロックンロールに肝心なのは、可能性や夢を持つことだと心から思う。可能性があれば何でも実現し得るし、夢を持てばその夢に近づけるんだ。信じる勇気さえあれば、不可能なんてない。いつだってそこにあるものを信じて、身を任せて、笑顔で楽しめばいいんだ。俺たちを見てくれよ。メタリカがロックの殿堂に入るんだ。マジで信じられないだろう?すごいよ。
昨日の夜、俺たちはこの週末を一緒に祝ってくれる人たちを150人くらい招いたんだ。彼らは世界のあらゆるところから来てくれて、この会場のあちこちに座っている。いまメタリカがここにいられるのは、少なからずみんなのおかげだ。
そのひとりひとりに感謝を伝えたい。みんな自分のことはわかっているだろうから、ひとりずつ名前を言う必要はないだろうけど、全員が様々なところから駆けつけてくれて、このすばらしい週末を俺たちと過ごしてくれている。心から感謝するよ。俺たち全員、みんなのことが大好きだ。ありがとう。
最後に、もう少しだけ時間をもらいたい。そこの、32番テーブルだったかな。マイルス、レイン、ブライス、セバスチャン、スカイラー、マリオ、コニー、モリー。そこにいる仲間たちのことだ。みんなが揃ってくれて嬉しいよ。でも居てくれて特に嬉しいのは、白い髭を長く伸ばしたそこの紳士だ。彼は81歳だけど、この会場で一番髪が長いんじゃないかな。マジでクールだよ。
俺は信じられないような、豊かな家庭で育った。俺が寝るときも音楽が流れていたんだ。デクスター・ゴードンから、マイルス、ヘンドリックス、ジャニスまで本当に色んな音楽が流れていた。俺が朝7時に起きて学校の支度をするときも、ずっと流れていたよ。
とにかく信じられないような、豊かな幼少期だった。親父は、人生のあらゆる可能性に触れることや、色んなジャンルの音楽に触れることを俺に教えてくれた。親父がここに来てくれて、俺や、俺の後ろにいる生意気なガキたちとこの瞬間を分かち合ってくれていることは、親父の思っている以上に意味があることなんだ。だから、俺に豊かな幼少期を過ごさせてくれたことに感謝するよ。本当にありがとう。ほかのみんなもありがとう。大好きだ。メタリカが本当にロックの殿堂ってやつに入るんだ。みんなのおかげだよ。
ジェイムズ・ヘットフィールド
みんなの声を聞かせてくれ!声を聞かせてくれよ!ああ、思ったよりも大きかったな。この会場はロックに対する愛情と情熱、それに才能で溢れている。そんな空気が漲っている。まったくゴキゲンだよ。今夜殿堂入りするほかのアーティストたちにもお祝いの言葉を伝えたい。みなさん、おめでとう。
その話のついでなんだが、俺たちも多少はヘヴィなバンドだ。ここで何組かの名前を読み上げて、できればちょっとだけ未来への種を蒔きたいと思っている。そのバンドっていうのは、ディープ・パープル、シン・リジィ、ラッシュ、キッス、テッド・ニュージェント、アリス・クーパー、アイアン・メイデン、ジューダス・プリースト、それからモーターヘッドだ。できればみんな、いますぐこの会場に迎え入れたいところだよね。いいかい?
それから、俺に宿る偉大な力に心の底から感謝したい。その偉大な力が、俺に音楽の才能をもたらしてくれた。そして、人生の早いうちから自分の運命に気づかせてくれた。音楽は俺の心を癒してくれる。俺には音楽をやるってことが必要なんだ。妻のフランチェスカにも感謝の気持ちを伝えたい。俺の命を何度も救ってくれてありがとう。そして子どもたち ―― 3人ともそこにいるね。人を愛するっていうことがどんなことか、俺に教えてくれてありがとう。それとスポンサーやスタッフたちにも感謝を。俺が堕落しないように、ステージという居場所にいさせてくれて、どうもありがとう。
兄貴のデヴィッド。ドラム・キットの鍵をそのへんに転がしておいてくれたこと、それからレコードのコレクションを漁らせてくれたことをありがたく思っている。あとは、ターンテーブルをつけっ放しにしてくれたこととか、ほかにもいろいろと……ありがとう。
それ以外に、これまでに俺たちと出会ってきて、俺たちを成長させてくれた人たちにも感謝したい。本当にたくさんのバンドが、トラブルに苛まれて消えていった。それもこれも、バンドの力を決定づける多くの要素のひとつなんだ。俺たちは幸運なことに、しかるべきときに、しかるべき人たちと出会うことができた。クリフ・バーンスタインとピーター・メンチ、そしてQプライムのみんなには特に深い感謝の気持ちを伝えたい。知識と助言を与えてくれて、俺たちを最高に強力なメタリカにしてくれてどうもありがとう。
恐れを知らないファンのみんなにも感謝したい。怯むことなく俺たちと人生をともにしてくれたことに心から感謝している。きみたちは俺たちを信じて、どんなときでもサポートしてくれる。本当にありがとう。
俺はこの栄誉を ―― 俺に与えられたこの栄誉を、今の若いミュージシャンたちに捧げたい。彼らは次世代の音楽業界を担う存在で、持てる情熱を音楽に注ぎ込んでいる。その逆に、俺は行き詰まっている人たちにもこれを捧げたい。イメージにとらわれている人や、正直になること、そして大きな夢を抱くことを恐れて動けずにいる人たちだ。夢は大きく持って、当たって砕けるくらいの思いでいてほしい。とにかくやってみるんだ。だってこの瞬間は、夢を叶えられることの何よりの証拠だからさ。そうだろう?そうとも。
そして、この場にいるかどうかにかかわらず、メタリカのすべてのメンバーに感謝したい。みんながいてくれて、俺の人生に関わってくれて本当によかった。おかげで、俺の人生はすばらしい冒険になった。最後に、一番大切な感謝を伝えたい。ラーズ、あのとき俺に電話をくれてありがとう。あれがあったから、世界最高のヘヴィ・メタル・バンドになるという夢を一緒に追いかけてくることができた。ありがとう。
メタリカ『72 Seasons』
2023年4月14日発売
CD / iTunes Store / Apple Music / Spotify / Amazon Music / YouTube Music
- レッチリのフリーによる、メタリカの“ロックの殿堂入り”祝福スピーチ
- メタリカ、6年4か月ぶりの新作アルバム『72 Seasons』2023年4月に発売決定
- メタリカの“ブラック・アルバム”はなぜ怪物アルバムになったのか?
- メタリカ『Metallica / ブラック・アルバム』解説:引き算の美学で生まれた名作
- 発売当時の日本担当者が語る、大爆発寸前のメタリカと名盤“ブラック・アルバム”
- 『ストレンジャー・シングス』と音楽たち:リバイバルヒットを生むドラマ