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アンドリュー・ロイド・ウェバーはいかにして『オペラ座の怪人』で劇場を根底から覆したか

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伝説的な作曲家アンドリュー・ロイド・ウェバーは、1986年の『オペラ座の怪人』にてそれまで誰も到達したことのない高みに到達した。

1970年の『ジーザス・クライスト・スーパースター』、1976年の『エビータ』、1981年の『キャッツ』といった作品の成功に続く『オペラ座の怪人』はアンドリュー・ロイド・ウェバーに、それまでなかった、そして念願だったロマンス劇を書く機会を与えてくれた。

アンドリューと共作制作者である作詞家チャールズ・ハートと作曲家リチャード・スティルゴーは、作家であるガストン・ルルーが1910年に発表した同名の小説をもとにして、パリのオペラハウスが舞台となった奇形の天才とそのミューズとの悲恋の物語をゆるやかに展開させていった。アンドリュー・ロイド・ウェバーはThe Belfast Telegraph紙にこう語っている。

「私は基本的にこの原作本からかなり多くの要素を取り入れました。しかし、基本的には、時代遅れの音楽を書き、作曲していた人についての私自身の物語を書いたんです」

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'The Phantom of The Opera' | The Phantom Of The Opera

大ヒットとなったミュージカル

アンドリュー・ロイド・ウェバーの当時の妻サラ・ブライトマンが、オペラ座の怪人に寵愛されるソプラノ歌手クリスティーン・ダーエの役を演じ、オペラ座の怪人役はテノール歌手のマイケル・クロフォードが担当した。サラ・ブライトマンとマイケル・クロフォード、そしてオリジナルのウエストエンドによる音源は、1987年にアルバムとして収録され、米国では4プラチナ認定(400万枚の売上)を受け、史上最も売れたキャスト・レコーディングとなった。

1988年にブロードウェイで上演されたこの作品は、大きな影響力を持つアメリカの演出家ハロルド・プリンスが担当し、たちまち批評家と興行界の両側面にて大ヒットを記録するだけではなく、ロンドンとニューヨークの両都市で多くの演劇ファンを魅了する過程でローレンス・オリヴィエ賞とトニー賞を受賞した。しかしその音楽は、キャスト・レコーディングによるアルバムによって、世界中の人々がその豊かで質感のある、情熱的なスコアに魅了されることになったのだ。

 

その音楽の魅力

オペラに近いミュージカル『オペラ座の怪人』は、ストレートなセリフがほとんどないため、キャスト録音を聴くと、その臨場感を味わうことができる。目を閉じると「Masquerade」では大階段で仮面をつけた人々が、「Music of the Night」ではキャンドルが点在する煙の立ち込める地下街が、「All I Ask of You (Reprise)」の最後ではシャンデリアが落ちてくるのを想像できる。

また、オペラの要素や、80年代後半に流行したエレクトロニカを取り入れることで、自分がミュージカルファンとは思えないような観客にも受け入れられるような内容になっている。

Masquerade

作曲家仲間のウィリアム・ボルコムは1988年に『オペラ座の怪人』についてニューヨークタイムズにこう語っていた。

「ポップスとオペラの世界には、本当に分裂が存在していた。この種の演劇は、この両者を近づけようとしていたんです」

タイトル曲の派手なギターリフから、オペラ座の怪人がモダンなオペラのために作曲する音楽の不協和音まで、『オペラ座の怪人』はロジャース&ハマースタインが支配したミュージカルの黄金時代、さらには70年代や80年代の冒険的で実験的なショーとも一線を画していた。

しかし、その一方で、「Think of Me」「All I Ask of You」「The Music of the Night」では、観客を魅了するソフトな音楽も提供している。後者2曲は、このジャンルでは珍しい全英シングルチャート入りを果たし、数え切れないほどカバーされている曲だ。どの家庭にも2枚組CDがステレオの近くにあるように思えたとしたら、それは記録的な売り上げ枚数だったからだ。

Andrew Lloyd Webber, Michael Crawford – The Music Of The Night

 

終わらない熱狂

このミュージカルは、世界的な規模で観客と結びついている。世界6大陸のほぼ全域で、何十もの団体によって上演された。2004年には、ジェラルド・バトラー、エミー・ロッサム、パトリック・ウィルソンがオペラ座の怪人、クリスティーヌ、ラウルを演じる待望の長編映画も公開された。

2010年、ロンドンで初演された続編となるミュージカル『ラヴ・ネヴァー・ダイズ』は、『オペラ座の怪人』から10年後、まったく異なる状況に置かれた登場人物たちの物語であった。その1年後、ロイヤル・アルバート・ホールで、ラミン・カリムルー、シエラ・ボージェス、ハドリー・フレイザー主演の25周年記念公演が開催。この公演は各地の映画館に中継され、キャストによる録音も行われた。

その間、ウエストエンドとブロードウェイのプロダクションは、何百もの他のショーがファンファーレの半分もなく終演を迎える中で、うっとりした観客によって劇場の座席は埋め尽くされ続けた。ロンドンのプロダクションは2020年まで続いたが、新型コロナウイルス蔓延により長期間の中断を余儀なくされ、その後2021年にやや縮小されて公開が再開となった。

2012年、ニューヨーク公演は、それまでロイド・ウェバーの作品である『キャッツ』が保持していたブロードウェイ史上最長のロングラン公演を上回った。2023年4月、グレート・ホワイト・ウェイで前人未到の35年間上演された後、最後の幕が下ろされる予定だ。44丁目にあるマジェスティック劇場の5番ボックスからオペラ座の怪人が退場する頃には、このショーは14,000回近くも上演されていることになる。

アンドリュー・ロイド・ウェバーと『オペラ座の怪人』は、ミュージカル界の軌跡を変えたといっても過言ではないだろう。この作品は、ミュージカル界に新たなファンを生み出し、その後に生まれた多くのミュージカルは、この世界的な大ヒット作のおかげで、スケール感やスペクタクルが向上したと言っても過言ではない。

ブロードウェイでの上演が終わり、キャストによる録音が35年目を迎えても、このショーは文化的な時流にしっかりと乗っている。『オペラ座の怪人』の音楽はTikTokでも熱狂的に支持されており、最近では日本のプロデューサー2118とスペインの伝説的なDJ、Superminiがショーの名曲を再解釈したリミックスの新しいパッケージが公開されている。

The Phantom of the Opera (Supermini & 2118 Remix)

このミュージカルは、オペラ座の怪人が観客に「It’s over now, the music of the night」と語りかけ、終わりを告げる。しかし、音楽史の中で、そしてファンの心の中で不滅の存在となった『オペラ座の怪人』にはまだまだ終わることはないようだ。

Written By Sage Young



オリジナル・ロンドン・キャスト『The Phantom Of The Opera』
1987年発売
CD / iTunes Store / Apple Music / Spotify / Amazon Music / YouTube Music



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