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ディープ・パープルのイアン・ペイス:第一線で活躍するロック界の”ペイス・メーカー”
彼はあらゆる意味で、ディープ・パープル(Deep Purple)を後方から支え続けている屋台骨だ。ドラマーのイアン・ペイス(Ian Paice)は、ブリティッシュ・ロックの牽引役である同グループにおいて、1968年の結成から一貫してメンバーであり続ける唯一の人物である。彼は1948年6月29日、イングランドのノッティンガムに生まれた。
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名門バンドを支える縁の下の力持ち
イアン・ペイスは決して自分から脚光を浴びようとはせずに、音楽業界でも多大な尊敬を集めている。ブリティッシュ・ロックの名門といえる大物グループにおいて、彼は喜んで縁の下の力持ちに徹している。結成当初から、彼の堅実なプレイ・スタイルはディープ・パープルの成功に欠かせない要素だった。そしてそれは、2021年のアルバム『Turning to Crime』やツアーからも明らかな通り、現在まで少しも変わっていない。
イアン・ペイスによる疲れ知らずのリズム・キープに支えられた2017年のアルバム『Infinite』は、ディープ・パープルにとって過去33年で最高の全英チャートとなる6位を記録。ドイツやスイスでは首位を獲得したほか、ヨーロッパ中の国々でトップ10入りを果たした。
さらに、2020年8月に発表された21作目のスタジオ・アルバム『Whoosh!』は、リード・トラックである「Throw My Bones」と「Man Alive」が話題となった勢いのまま、力強い楽曲の並ぶ同作は全英チャートに4位で登場したが、これはグループにとって実に46年ぶりの高順位となった。
デビュー・アルバムの評価
反体制派の新聞社であるインターナショナル・タイムズのマイルズ氏は、彼らのファースト・アルバムについてこのように評価していた。
「ジョン・ロードのオルガンは非常に豊かなサウンドで、イアン・ペイスは他のメンバーが付いて来られるよう道に線を引いているかのようだ。彼はスキップして、ジャンプして、時にはひとブロック丸々スライディングして進んでいくかのようである」
32ポンドのドラム・セット
イアン・ペイスが初めて触れた楽器がドラムではなく、ヴァイオリンだったというのは少々驚きだ。1971年のメロディ・メイカー誌の記事によれば、彼はヴァイオリンを上手く弾けず、裏返しにして叩き始めたのだという。彼はこう話している。
「ヴァイオリンを叩いていると、タムと古いビスケットの缶を見つけたんだ。それからは繰り返しそれらを叩いていたんだ。その後、32ポンドでドラム・セットを買って、ピアニストだった父に付いて回ったんだ。ワルツやクイックステップなんかを演奏していた。ちょっと面白味には欠けたけど、始めの頃はそんなものさ」
ディープ・パープルが活動していなかった時期にペイスは、ペイス・アシュトン・ロードを結成したほか、1980年代前半にはホワイトスネイクの一員として3枚のアルバムに参加。また、ゲスト出演や他のアーティストとのコラボレーションも多くこなす一方で、イアンと妻のジャッキーは、サンフラワー・ジャムのチャリティー活動に力を入れるようになった。その組織は「資金提供や、研究・治療・教育の支援によって、ガンやその他の病と闘うすべての人びとが、平等かつ優遇された治療を受けられるようにするため」に活動している。ペイス、そしてパープルは、世界中にいる数多くのファンにとって重要な存在であり続けているのだ。
Written By Paul Sexton
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