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クリスマスの定番曲「赤鼻のトナカイ」ができるまでとその影響
世界で最も有名な架空のトナカイである“真っ赤なお鼻のトナカイさん”ことルドルフは、レジナルド、ロロ、ロメオ、ロドニーという名前になる可能性もあった。これは、原作者のロバート・ルイス・メイがサンタをお手伝いをするトナカイの名前の候補として最初に考えた4つだ。デパート、モンゴメリー・ウォードの社員だったロバートは、自社が配るための絵本を書いていたときに、どの名前がふさわしいか悩んでいたのだ。
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1930年代に全米で620店舗を展開していたモンゴメリー・ウォードは、クリスマス商戦の売り上げを伸ばすために、自社のコピーライターであるロバート・ルイス・メイに動物をモチーフにした「明るいクリスマスの物語」の制作を頼んだ。ロバート・ルイス・メイの娘バーバラは、シカゴのリンカーンパーク動物園の鹿が大好きだったことから、その鹿たちがルドルフのモデルとなり、1939年にデンバー・ギレンが描いた発光する赤い鼻を持つ作品のモデルとなった。
ロバート・ルイス・メイによるサンタを手伝う赤鼻のトナカイ、ルドルフの物語は、デパートのモンゴメリー・ウォードから240万部が配布され、ルドルフの仲間であるダッシャー、ダンサー、プランサー、ヴィクセン、コメット、キューピッド、ドナー、ブリッツェンの物語は、読者の心に永遠に残るものとなった。
ロバート・ルイス・メイの義理の兄弟である作曲家のジョニー・マークスが、曲のアイデアを書き留めていたノートに赤鼻のトナカイがでてくるこの絵本のタイトルを書き留めていた。第二次世界大戦での戦いから帰還した彼は、この曲を書き上げた。
マークスは「赤鼻のトナカイ」の成功を確信し、2万ドルを投じて自分の会社「セント・ニコラス・ミュージック・インク」を設立し、マンハッタンのブリル・ビルの6階にオフィスを構えた。最初にこの曲をレコーディングしたのは、カントリー歌手のジーン・オートリーだ。彼は当初子供向けの曲を歌うことを嫌がったが、妻に説得されて歌うことになった。1949年6月に録音されたオートリーによるバージョンは、200万枚のセールスを記録した。
ジーン・オートリーの録音から約15年後の1964年、バール・アイヴスが「赤鼻のトナカイ」を録音したのは、すでにビング・クロスビー、ペリー・コモ、ディーン・マーティン、エラ・フィッツジェラルドなど多くのミュージシャンが定番ヒット曲としてカバーを行っていたころだ。1958年の映画『大いなる西部』でアカデミー賞助演男優賞を受賞したバール・アイヴスは、1957年にクリスマス・アルバムをリリースしている。
そんな彼は、1964年12月に放映されたNBCのテレビ番組『Rudolph the Red-Nosed Reindeer』で雪だるまサムの声優として、クリスマスの音楽に戻ってきた。この番では、アイブズは雪だるまのサムだけではなく、物語のナレーションを担当した。物語は、ルドルフがエルフのハーミーやユーコン・コーネリアスと組んで、忌まわしい雪の怪物、おもちゃの島、そしてルドルフの恋敵クラリスを中心とした、ちょっとファンタジックな冒険を繰り広げるというものだ。
この番組はアルバム『The Original Sound Track And Music From Rudolph The Red Nosed Reindeer』とタイトルでも発売された。ブルックリン・スタジオで録音され、ニューヨーク州グラバーズビルにあるデッカ・レコードの工場でプレスされた。ジャケットには、アイブスに似た雪だるまがルドルフを撫でているアニメの絵が使われている。
プロデュースは、コモドール・レコードの創業者であり、ビリー・ホリデイの反リンチの歌「Strange Fruit(奇妙な果実)」を録音したミルト・ガブラーが担当した。ルイ・アームストロングやルイ・ジョーダンとも仕事をしたガブラーは、このアルバムのためにドイツ生まれの指揮者ハーバート・レーベインを雇い、デッカ・コンサート・オーケストラを指揮させた。このサウンドトラック・アルバムの成功を受けて、デッカとアイブズはアルバム『A Holly Jolly Christmas』を制作し、1965年10月に発売した。
このアルバムのために、アイブズは「赤鼻のトナカイ」のスロー・バージョンを新たに録音し、再びガブラーにプロデュースしてもらうことになり、このヴァージョンは今やおなじみのものとなっている。1965年10月に発売されたこのアルバムからは、同じくマークスが作曲したシングル「Have A Holly Jolly Christmas」がヒットを記録した。
「赤鼻のトナカイ」の人気は揺るぎなく続いている。この曲は、レイ・チャールズ、ジョン・デンバー、ウィリー・ネルソン、ハリー・コニック・ジュニア、デスティニーズ・チャイルド、ドリー・パートンなどがレコーディングしている。ラッパーのDMXが、2012年にこの曲に合わせてラップしている動画が流行したことを受けて、独自のカヴァー・バージョンをリリースしている。
1964年に放送されたテレビ番組『Rudolph the Red-Nosed Reindeer』も人気を保っている。この番組は、半世紀以上にわたって毎年クリスマスに放送されており、現在では最も長く放送されているホリデースペシャルとなっている。1978年にバール・アイヴスがこの番組についてこう答えている。
「“Rudolph the Red-Nosed Reindeer”は毎年必ず見ます。いつ見ても素敵だし、これだけ持ちこたえているのを見ると驚くばかりです」
クリスマスの大ヒット曲「Rockin’ Around The Christmas Tree」を作曲したジョニー・マークスは、トナカイの歌の有名な歌詞を書いたとき、自分が何をしているかわかっていただろう。
Then how the reindeer loved him
As they shouted out with glee
Rudolph the Red-Nosed Reindeer
You’ll go down in history
トナカイたちは彼をいかに愛したか
嬉しそうに叫んでいた
真っ赤なお鼻のトナカイ ルドルフ
あなたは歴史に名を残すでしょう
この曲は世界中で1億枚以上の売り上げを記録し、何百人ものアーティストがカバーしている。
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