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ジョージ・ハリスン「Isn’t It A Pity」制作秘話:代表作『All Things Must Pass』の中で輝ける名曲
ジョージ・ハリスン(George Harrison)が「Isn’t It A Pity」をやっとレコーディングした時には、楽曲誕生からすでに4年もの年月が経っていた。そして70年代の半ば、後に最高傑作となる3枚組アルバム『All Things Must Pass』に収録する曲を選んでいた時にハリスンは、ビートルズで没になった曲を聴き返していた。特にこの1曲は長いこと日の目を見ることはなかった。
ハリスンはおそらく長い時間をかけて「Isn’t It A Pity」の歌詞と曲を完成させていったが、初めてビートルズのメンバーに聴かせたのは『Revolver』を制作していた1966年の時。同年1月に結婚したということもあり、妻のパティが曲のインスピレーションとなったと言う者もいるが、二人の関係がまだ新鮮だった頃にそんな情緒不安な曲をインスパイアされて書いたと想像するのは早とちりなのかも知れない。ハリスンは自叙伝『ジョージ・ハリスン自伝 I・ME・MINE』でこう書いている。
「‘Isn’t It A Pity’は関係がうまくいっていない時のことを歌ってる。(殴り合うとか)みんながやってることをする代わりに、僕は曲を書いた。もし誰かが僕を失望させているのなら、僕が誰かを失望させた可能性は十分にあると気付いたんだ。僕たちは互いに傷付け合い、返す代わりに奪うことだけをしている」
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「Isn’t It A Pity」は1969年に行われた「Get Back」のセッションで再び取り上げられたがビートルズのアルバムには収録されなかったが、その1年後には全く違う新しい意味を持つことになった。出だしの「悲しいことだね/残念だね/互いに傷付け合うなんて/心を打ち砕くなんて」という歌詞は、ビートルズの辛辣な解散直後だったこともあり、より深く聴いた者の心に響いたのだ。
『All Things Must Pass』のレコーディング・セッションには有名プロデューサーのフィル・スペクターが招かれた。スペクターの特徴である“ウォール・オブ・サウンド”は、演奏したい人と好きに演奏できるという新しい自由に対するジョージの意気込みと反響した。ハリスンは “気分を一新する新鮮な変化”と話している。
従って「Isn’t It A Pity」のセッションが行われたアビー・ロード・スタジオには大勢のミュージシャンが集まった。ベーシストのクラウス・フォアマンはその中に望まない訪問者もいたと話している。
「ある日ローブを羽織った変な男がやってきた。エルビスかマハリシのファンか知らないけど、頭に色々なものを着けてスタジオに入ってきたから誰かが外へ押し出したんだ!」
しかしその後もカオス的な状態が続いたとクラウスは認める。
「大げさでやり過ぎな部分もあった。だけどジョージはそれに気付いて、その後の何回かのセッションはより落ち着いた雰囲気の中で行われたよ」
アルバムに収録されている最初のバージョンは7分あり、最初の序奏部分を支える物悲しいピアノで始まり、そこから大胆なオーケストレーションへと発展し、二つ目の序奏部分では、ハリスンが手掛ける曲の多くがそうであるように、普遍的な愛について歌っている。
「どうやって説明すればいいんだろう」とジョージは問う。「多くの人たちが気付いていない/僕たちはみんな同じだってことを」。トラックを締めくくる壮大で長めのコーダは、ジョージの美しいスライド・ギター、そして瞬時に「Hey Jude」を思い出させる盛大な“ナナナ”のボーカル・リフレインによって更に魅力を増す。
アルバムに収録されているもう一つのゆっくりとしたバージョンでは、エリック・クラプトンが演奏を提供し、余分なものを取り除いた心を打つアレンジに仕上がっている。「大勢の人とのレコーディングは大変だった」とアラン・ホワイトは話す。「だけど、少人数でやれば曲の雰囲気が捉えやすくなる」。
どちらのバージョンも精神的な救いに対して熟慮し、他人のことなんて気にしない自己中心的な人たちの究極な孤立に対して警告をしている。「見渡せば美しいものに囲まれているのに、彼らは見るという希望さえ持っていない」とジョージは歌う。
「My Sweet Lord」との両A面シングルとして11月23日にリリースされた「Isn’t It A Pity」の長いバージョンは、1ヶ月間アメリカのシングルチャートで1位にランクインされ、4日後に発売されたアルバム『All Things Must Pass』の売上を促進させ、同じくアルバムも1位を獲得した。そして、12月に発売されたジョン・レノンの『Plastic Ono Band』に影を投げかけた。
それ以来、多数の様々なアーティストがその奥深さに共感しカバーを発表している。ニーナ・シモンのバージョンはハリスンに影響を与え、ハリスンの曲の中で「Isn’t It A Pity」が一番好きと話すエリック・クラプトンは、2002年のコンサート・フォー・ジョージでビリー・プレストンと一緒に歌った。
現在はメンタルヘルスや差別反対に対する意識が広まっているが、曲の共感に対してのメッセージはかつてないほど響き渡る。ジョージはこう話す。
「これは社これは、社会や自分自身がどうだったか、どうあるべきかを観察したもの。僕たちは互いの有り難みを忘れてしまい、お返しを忘れてしまっている。あの曲はただそれについて歌っていただけさ」
Written By Simon Harper
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