Classical Features
春にぴったりのクラシック音楽作品トップ10
ベートーヴェン、ドビュッシー、ヴィヴァルディなどの作曲家による、春にぴったりのクラシック音楽をご紹介する。
さあ、呼吸してみよう。暗い冬の夜は遠ざかり、朝の霜は結露し、太陽は日々空に向かい高くゆっくりと上がってゆく。雪が溶け、春の最初の至福の数ヵ月に向かう時、春を楽しむのに役立つクラシック作品の喜びに満ちて暖まるプレイリストをまとめた。春に最適なクラシック音楽から10の重要な作品のセレクションをご覧いただきたい。
春にぴったりのクラシック音楽作品トップ10
10.ディーリアス:春初めてのカッコウを聞いて
春のはじまりのカッコウを聞くことを描いたディーリアスの交響詩は、音楽によって表される自然の美しい例であり、春に最適なクラシック音楽の一つである。
この曲は、カッコウの鳴き声を模した弦楽器の軽快なさえずりから始まり、鳥の鳴き声のような穏やかな不協和音へと有機的に変化していく。ディーリアスはまた、伝統的なノルウェーの民謡を作品の素朴な素材に織り込み、心地よい牧歌的な雰囲気を与えている。
9.シューマン:交響曲 第1番《春》
シューマンの交響曲第1番は、金管楽器のファンファーレが春の訪れを告げる。この歓喜に溢れた祝祭的なオープニングは、アドルフ・ベトガーの次のような言葉からヒントを得たと言われている。
さぁ、おまえの歩いていく方向を変えよ、
谷ではもう春が始まっている!
賑やかでせわしない第1楽章に続き、高揚感のある叙情的な第2楽章、軽快で舞曲風の第3楽章のあとには活気に満ちた勝利のフィナーレとなる。
8.ストラヴィンスキー:春の祭典
おそらく最も好き嫌いの分かれる曲といわれた作品、ストラヴィンスキーのバレエ《春の祭典》は、春へのひねくれたオマージュともいえる作品である。
異教の国ロシアを舞台に、9曲もの伝統的なロシア民謡の断片がほぼ全面的に使用されている。重厚な不協和音とリズミカルでアグレッシヴな音楽は、原始的なものを感じさせながら、土俗的な風景を連想させる音の世界を作り出している。ストラヴィンスキーの書いたスコアは、ヴァーツラフ・ニジンスキーのオリジナルの振り付けとほぼ同じくらいに挑発的である。
7.ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ 第5番《春》
ストラヴィンスキーの春の音楽を紹介した後は、慣れ親しんだ場所に戻り、ベートーヴェンの魅力的なヴァイオリン・ソナタの一つを紹介する。
第5番(1801年作曲)は、名人芸的な技巧とエレガントなシンプルさで、ベートーヴェンの真骨頂とも言える作品だろう。花のように美しい抒情性と、ときには賑やかで活発なピアノの伴奏とのコントラストが、この美しいソナタの愛称を決定づけている。
6.グリーグ:《抒情小曲集》から〈春に寄す〉
グリーグの『抒情小曲集』の第3集に収められた、絵画のように美しいピアノ小品は、春の繊細で壊れやすい性質と、季節がもたらす大胆な新しい始まりの興奮の両方を表現している。
冒頭の部分は、高音域の可憐で玉を転がすようなメロディと、柔らかく鳴り響く鐘を思わせる響きが特徴の優美な曲である。旋律が豊かな響きの低音域に移ると、中間部は勇ましくなり、その後、流れるような伴奏とともに第1主題へと戻っていく。
5.コープランド:アパラチアの春
1944年に上演された同名のバレエから生まれた管弦楽組曲《アパラチアの春》も、春に捧げる魅惑的な音楽である。この組曲は、13人の室内オーケストラのために軽やかな楽器編成になっているが、音楽は春の景色、感情、音を見事に鮮明な色彩で表現している。
柔らかく牧歌的な情景描写から、陽気な舞曲風のパッセージ、そしてシェーカー(キリスト教プロテスタント派の一派)教徒の伝統的な賛美歌〈シンプル・ギフト〉による変奏曲まで、様々なセクションが完璧にキャプチャされたスクリーンショットのように並ぶ。注目すべき作曲家による、春にふさわしい華麗なクラシック音楽作品である。
4.ドビュッシー:牧神の午後への前奏曲
交響詩《牧神の午後への前奏曲》は、ステファヌ・マラルメの同名の詩に着想を得て書かれたものである。ドビュッシーの詩の音楽的な解釈は、音楽による象徴主義を代表するものである。ドビュッシーは、青々とした草原で芽吹く花々の中を跳ね回る牧神の姿を描いている。
牧神の笛を表現したフルートが、太陽の光を浴びた弦楽器や魔法のハープ、木管楽器のうねりの中へと舞い降りるように演奏する。目を閉じて、ドビュッシーがあなたの周りに作り出す、この幻想的で素朴な情景に身を委ねてほしい。
3.ヴォーン・ウィリアムズ:揚げひばり
ヴォーン・ウィリアムズの作曲スタイルは、どこまでも牧歌的でありながら、常に繊細さがあり、まるで家に帰ってきたかのような気分にさせてくれる。《揚げひばり》は、この感覚を見事に表現している。
この曲は、ヴァイオリン独奏とオーケストラのために作曲されたもので、世界中のコンサート・ホールで愛奏・愛聴されているが、それには理由がある。ヴォーン・ウィリアムズは、鳥たちのつぶやき、震えるような歌声をはじめ、軽い不規則なはばたき、飛行中の翼の急降下まで、紛れもない鳥の特徴を独奏ヴァイオリンのパートに与えている。
果てしなく感傷的で、陽光とうれしそうな懐かしさにあふれ、春のクラシック音楽の最高の作品の一つである。
2.レスピーギ:ローマの松
レスピーギの巨大な「ローマ三部作」のフィナーレである《ローマの松》は、春の音の宝庫である。それぞれの楽章は、ローマの風光明媚な場所の見事な音楽的描写だ。最初の楽章〈ボルケーゼ荘の松〉は、春の興奮と息吹を喚起する、ふるえるような音色を奏でる弦楽器と疾走感のある管楽器群の演奏によって導かれる。
レスピーギは熱心な鳥類学者であり、第3楽章の〈ジャニコロの松〉では鳥の鳴き声を録音したものを収録しており、響き渡るピアノのアルペジオによって、広々とした空間の印象を与えている。鳥、カタコンベ、ローマ軍団の行進など、全体を通して素晴らしい演劇的な仕掛けが施されており、聴いていると本当に興奮してしまう。
1.ヴィヴァルディ:《四季》より〈春〉
ヴィヴァルディの有名なヴァイオリン協奏曲《四季》の〈春〉は、春にぴったりのクラシック音楽として、間違いなくトップに挙げられる。
象徴的なアレグロの冒頭では、作曲者自身によって指示された、虫の鳴き声や犬の鳴き声など、春の生き物を模した軽快で個性的な弦楽器が登場する。実際に、ヴィヴァルディは音楽に物語性を与えた先駆者であり、四季のそれぞれに詩(14行詩ソネット)を添えて出版している。
〈春〉に添えられた詩を一部引用してみよう。
春は喜びとともにやって来た
幸せな歌を歌う鳥たちに迎えられ
穏やかな風にやさしくなでられた小川は
甘い声をあげて流れていく
おすすめのレコーディング
ジャニーヌ・ヤンセンが演奏するヴィヴァルディの《四季》から〈春〉
「現在、およそ100種類の様々な《四季》が発売されているので、レコード会社、ソリスト、そして聴衆は、この作品に飽き飽きしていると思っていただろう。しかし、このヴァージョンでは、オーケストラは各パートが一人ずつにされ、独奏パートはこの素晴らしいオランダの若手ヴァイオリニストによって見事に演奏されている。その結果、個性的で際立った、生き生きとした色鮮やかな演奏が生まれたのである」—クラシックFM
Written By uDiscover Team
■リリース情報
ジャニーヌ・ヤンセン『ヴィヴァルディ:協奏曲集《四季》』
2019年10月23日発売
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