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グラディス・ナイト、パティ・ラベル、ディオンヌ・ワーウィックの珍しい共演「Superwoman」
グラディス・ナイト(Gladys Knight)の豊かで時に掠れる歌声は、曲の中枢へと切り込む。1952年、とあるバースデー・パーティーでアトランタの人々を感心させてから、1990年まで彼女は家族で構成されたバックアップ・グループ、ピップスと一緒にパフォーマンスしていた。1970年代後半、2年ほど契約上の問題で一緒にパフォーマンスできない時期もあったが、数十年にわたってヒットを飛ばし続けたグラディス・ナイト&ザ・ピップスは、スィート・ポテトとパイのようにしっくりまとまっていたのだ。
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1987年、MCAからの初のアルバム『All For Love』をリリースした後、ナイトはソロで活動することを決意した。ミシガン・シチズン紙には「グループ活動は言ってみれば、延期にしたんです」語っている。彼女のコンサートは大変人気があったため、ツアー自体は続けたが、曲を足したり削ったりしてオーディエンスに新しい方向性を示した。「ザ・ピップス抜きのグラディス・ナイト&ザ・ピップスのショーをステージでやりたくありませんでした」と、ロサンゼルス・タイムス紙の取材で話している。
オリジナルはキャリン・ホワイト
新しいセットリストに加えた曲に「Superwoman」がある。新人だったR&Bシンガー、キャリン・ホワイトが1989年にヒットさせたバラードだ。人気急上昇のプロデューサー・チーム、アントニオ“LA”リードとケニー“ベイビーフェイス”エドモンズ、そして、彼らの影のパートーナー、ダリル・シモンズが作った曲であり、ある女性が自分の恋愛における思いを、情熱的に相手にぶつける内容だ。
歌詞では「時々抱きしめて愛情を示してくれるだけでは、もの足りないの」と歌っている。レコーディング時、ホワイトは20代であり、曲の切なさをほとんど理解できなかった。ミネアポリス・スター・トリビューン紙の取材で、ホワイトはこう応えている。
「最初は、陳腐な曲だと思いました。なんとか私なりにあの曲に共感できるようにはしたんです “Superwoman”に出てくる女性は、必ずしも私ではない。結婚もしていなかったし、精神的に曲を理解していたとも言えないですね。どうしたかというと、私の母がスーパーウーマンだったことを思い出したんです。私の父は家族を捨てたので。歌っている間は、母に想いを馳せるしかありませんでした」
グラディス・ナイト、パティ・ラベル、ディオンヌ・ワーウィックのカバー
ホワイトにとって感情面で難しかった曲は、当時、2回の結婚と離婚を経ていたグラディス・ナイトにはどんぴしゃで当てはまり、心から痛みが伝わるように歌い上げた。ある夜、彼女がステージのこの曲を歌った際、オーディエンスにMCAの重役、ルィール・サイラス・ジュニアがいた。そして、彼女の歌に非常に感動した彼は、同レーベルからの初のソロアルバムに収録するように提案したのだ。彼のアイディアはそこで終わらなかった。
彼は、R&Bの同胞でも友人でもあるパティ・ラベルとディオンヌ・ワーウィックと一緒に歌うように提案したのである。3人はすでに「シスターズ・イン・ザ・ネーム・オブ・ラブ(愛のもとに集うシスター達)」というタイトルの合同ツアーを計画していたため、「あの曲を一緒にレコーディングするのは理に適っていると、私たちは思ったんです」と、ナイトはビルボード誌に語っている。
彼女達の「Superwoman」は、アニタ・ベーカーの出世作『Raputure』にも関わったマイケル・パウエルがプロデュースし、魂をむき出しにした懇願の曲というよりは、音楽をつけたキッチン・テーブルでの会話のように仕上がった。それぞれのヴォーカル・スタイルを反映して、気持ちが離れてしまった男性をどう感じているか歌っているのだ。ナイトの歌声は長年、彼との問題に耐えてきたように聞こえる。ワーウィックは争いから抜け出そうと決断したようだし、強烈に張り上げるラベルの歌声は、最後の音符を歌い切った途端、その恋愛関係を終わらせるように響く。
3人は、『ザ・オプラ・ウィンフリー・ショー』など高視聴率のテレビ番組に出演して一緒に歌った。黒人向けのラジオ局は大歓迎し、R&Bのトップ20に入った。この曲は、(南部の人種差別的な)ジム・クロウ法があった時代から、オバマ政権、そして現在のトランプ政権を通してキャリアを築き上げた3人のアフリカ系アメリカ人女性の絆の証となったのである。彼女達は特殊な能力ではなく、それぞれの自制心と立ち直る能力、そして信仰を合わせた力をもって、キャリアを長続きさせた。だからこそ、彼女達の「Superwoman」は元気を与えるのだ。それは、闘いの物語を共有した勝者達の歌なのだから。
Written By Craig Seymour
uDiscoverミュージックで連載ている「ブラック・ミュージック・リフレイムド(ブラック・ミュージックの再編成)」は、黒人音楽をいままでとは違うレンズ、もっと広く新しいレンズ−−ジャンルやレーベルではなく、クリエイターからの目線で振り返ってみよう、という企画だ。売り上げやチャート、初出や希少性はもちろん大切だ。だが、その文化を形作るアーティストや音楽、大事な瞬間は、必ずしもベストセラーやチャートの1位、即席の大成功から生まれているとは限らない。このシリーズでは、いままで見過ごされたか正しい文脈で語られてこなかったブラック・ミュージックに、黒人の書き手が焦点を当てる。
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