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UKラッパーのスロータイ、2021年発売の『TYRON』の内容とは? 先行シングル「nhs」MV公開
UK出身のラッパー、スロータイ(Slowthai)が、2021年2月5日にメソッド・レコード(Method Records)からリリース予定のニューアルバム『TYRON』の詳細を発表した。
このアルバムは全英TOP10入りを果たし、マーキュリー賞にもノミネートされたデビュー作『Nothing Great About Britain』に続く作品。アルバムの発表とともに新作からの2作目のシングルとなる「nhs」のオフィシャル・ビデオも公開された。
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来るニュー・アルバム『TYRON』から、今年9月にリリースされたファースト・シングルで、ジェイムス・ブレイクとマウント・キンビーをフィーチャーした「feel away」は、スロータイの内省的で思慮深い側面を示唆していた。彼の復帰への支持と賞賛によって、BBCラジオ1のプレイリストを着実に駆け上がっていった同トラックは、現在もBリストに留まり、全世界で800万回以上のストリーミング再生を記録している。
スロータイが躍進を続ける中で発表された今回のニューシングル「nhs」にも注目が集まっている。この曲は、英国で最も重要な施設の一つであるNHS(National Health Service/国民保健サービス)への頌歌であり、同曲で歌われているのは、社会的ヒエラルキー(階級組織)の破壊や人々を平等に扱うこと、私たちが人生の中で与えられたものを持っていることへの感謝の気持ち、そして何事も当たり前だと思ってはならない自分たちが危機に晒されるのを待っていてはならないというメッセージだ。
この曲こそ、アルバム『TYRON』の冒頭を飾るに相応しい曲なのかもしれない。このセカンド・アルバム全編を通してのテーマである“二面性”は、人生のバランスを見つけ出すための押し合い引き合いの奮闘の中で表現されている。スロータイという血気盛んな人物像の下では、自分自身が誰なのか、今までどんな人間だったのか、そしてこの先どんな人間になろうとしているかの絶え間ない葛藤が巻き起こっているのだ。
スロータイ曰く、『TYRON』は“人間の複雑さを露呈した二面性の物語 ”だという。彼の人生の物語と同じく、全ての物語には常に2つの側面がある。ひとつは、自惚れ、男らしさ、大ぼら吹きといったラップ・ミュージックの典型を私たちにあらためて紹介してくれるところ。もうひとつは、その枠組みからは逸脱し、半酩酊状態で繰り出される、ふざけて貶すようなダイナミックなフロウが、同様に多様なプロダクションの上に成り立っていることだ。
彼のバッドボーイなイメージがエネルギッシュなフリースタイルで表現されているオープニング・トラック「45 SMOKE」は、疑心暗鬼なリスナーへの声明とも言える。このトラックは、善人振ることなく、どんな犠牲を払ってでも常に自分自身を貫き、彼という人間を形成した荒々しいルーツへ立ち返ることを警告するもので、モッシュピットを挑発するような、ポストパンクのような歪みを感じさせる。
7つのトラックからなるディスク1は、2021年にリリースが予定されているUKのラップ作品の中でも最高レベルのものを提供しており、はらわたに響くストレート・パンチで叩き起こし、心揺さぶり、そして唸らせる。それは否定する者や嫌う者がいても、世の中は回っているのだと歌う恐れ知らずの反撃なのだ。“進歩”という名の下に人々を引き裂く行き過ぎた行為への、スロータイによるオーラル・アタックには、「MAZZA」でのエイサップ・ロッキー(A$AP Rocky)や「CANCELLED」での同胞スケプタ(Skepta)らも加勢している。
ディスク2では、私たちがスロータイについて抱いていたイメージを根底から覆される。彼の複雑な心の奥底にあるものへ足を踏み入れていく「feel away」や「nhs」といったトラックで、彼という人物を深く掘り下げいくことによって、真の姿をより明確に理解することができるだろう。
つまり、スロータイがリスナーに1番伝えたいメッセージは、「ありのままの自分でいい」ということだ。「focus」では、自らの身を守るための知恵について歌っており、自分を信じることへの頌歌でもある。インターネット時代において、情報過多が引き起こす瞬間的な注目が、重要でわかりやすい青写真となりつつある中で、「もっと別のものに目を向けた方がいい」というのがスロータイからのアドバイスなのだ。ドミニク・ファイクとデンゼル・カリーをフィーチャーした「terms」は、名声を得るための“条件”、そして彼の発言に対するお決まりの捻じ曲げや誤解についての曲だ。アルバムを締めくくる「adhd」は、“表向きには笑顔を作り、裏では傷ついている”、哀れな内省の曲である。
スロータイの多様性は、その幅広い影響力だけではなく、感情の浮き沈みにも反映されている。彼は一見、自らのダークサイドを受け入れることには慣れているようでいて、実は必ずしもそうではない。子供のような遊び心と悩ましい大人の心理が混在しているのがアルバム『TYRON』なのだ。「i tried」では、まるで自分を否定する者たちが抱いている、“悪魔の化身”という概念を自ら覆すことはできないのだと云わんばかりに、“地獄が罪を犯した者のためにあるのならば、天国は俺のために存在しない”と彼は歌う。
今年初めに公開した声明の中で彼は、「それでも、何かに属したいと願う自分は間違っているのだろうか?」と疑問を呈していた。自分に正直でありたいと願う気持ちと肯定願望との狭間で生じる彼の葛藤は、“優しく触れて、天国よ、俺を受け入れておくれ”と懇願する、アルバムの最終曲「adhd」のラストで聴くことができる。
アルバム『TYRON』は、他人を裁き、貶め、未発達で単純化された観念が蔓延る、容赦のない現代社会を背景に制作された作品であり、孤独、アイデンティティ、自己受容、自立することの難しさといったテーマを臆することなく探求する、とても複雑なスロータイというアーティストを紹介している。
彼の波乱に満ちた生い立ちやイギリスでの生活に対するスタンスをリスナーに伝えたデビュー・アルバム『Nothing Great About Britain』の政治的な雰囲気とは異なり、自らの本名を宿した次なるアルバム『TYRON』は、彼の感情が織り成す広大なランドスケープにメロディックに飛び込んだ作品となっているのだ。
<DISC 1>
1. 45 SMOKE
2. CANCELLED (feat. Skepta)
3. MAZZA (feat. A$AP Rocky)
4. VEX
5. WOT
6. DEAD
7. PLAY WITH FIRE
<DISC 2>
1. i tried
2. focus
3. terms (feat. Dominic Fike & Denzel Curry)
4. push (feat. Deb Never)
5. nhs
6. feel away (feat. James Blake & Mount Kimbie)
7. adhd
Written By Tim Peacock
スロータイ『TYRON』
2021年2月5日発売
iTunes / Apple Music / Spotify
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