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コンセプト・アルバム・ベスト20:プログレだけではない様々なジャンルの傑作たち

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コンセプト・アルバムは、プログレッシヴ・ロックと1970年代のものというイメージが強い。壮大なアルバムが多く制作された時期だからだ。しかしコンセプト・アルバムは何もプログレッシヴ・ロック・バンドだけのものではない。このランキングからもわかる通り、ファンク・クレイジーからカントリー・ミュージックのスター、パンクスに至るまで、さまざまなジャンルのアーティストがそうしたアルバムを制作しており、中には名作も少なくない。この数十年のあいだにリリースされた優れたコンセプト・アルバムの一部を紹介していこう(*それぞれのタイトルをクリックするとSpotifyに飛びます)。

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25位 : ラッシュ『Clockwork Angels』(2012年)

半コンセプト・アルバムといえる『2112 (西暦2112年) 』以降、多くのラッシュ・ファンが壮大なコンセプトとSFへの回帰を20年以上望んできた。ラッシュは、バンド史上最も冒険的な音楽性といわれる最後のアルバムで、その望みに応えてみせた。

Clockwork Angels

 

24位 : アリス・クーパー『School’s Out』(1972年)

少年の非行をユーモアを織り交ぜて描いた作品ほど1970年代らしいものはないだろう。アリス・クーパーはその役目にぴったりの男だった。このコンセプト・アルバムで彼は待ち望んだアメリカでの成功を手にした。一方、感傷的で皮肉が影を潜めた「Alma Mater」には当時のイメージとは異なるアリスの真の姿が表れている。

School's Out

 

23位 : ジャネール・モネイ『Dirty Computer』(2018年)

異端児である彼女の最新アルバムは、今でも大胆なほど未来志向の作品を作ることができると証明した。そして、プリンスなき後のロックとR&Bの融合にもまだ可能性が残っていると示した。同作は現時点で、ブライアン・ウィルソンが参加した最も新しい秀作でもある。

Janelle Monáe – Dirty Computer (feat. Brian Wilson)

 

22位 : グリーン・デイ『American Idiot』(2004年)

上位に入っているアーティストの多く (特にザ・ジャムザ・フー) から影響を受け、グリーン・デイは政治色と音楽的深みのある作品を生み出した。それまで彼らとほぼ無縁だった分野だ。『American Idiot』はブロードウェイにも進出。このコンセプト・アルバムからミュージカルも派生している。

American Idiot

 

21位 : ムーディー・ブルース『In Search Of The Lost Chord』(1968年)

コンセプト性が明確だった『Days Of Future Passed』に続くムーディー・ブルースのアルバム『In Search Of The Lost Chord』は、深みと1960年代色がより強まった作品だ。同作は瞑想や幻覚剤、愛などをテーマに、悟りへと続くいくつもの道のりをコンセプトにしたアルバムである。

Ride My See-Saw

 

20位 : ザ・ジャム『Setting Sons』(1979年)

ポール・ウェラーはパンク全盛期に王道のコンセプト・アルバムを作ることを少し恥じらっていた。最後にカヴァー曲「Heat Wave (恋はヒート・ウェイヴ) 」を入れたのもそういうわけだ。しかし完成したアルバムは何ひとつ恥じることのない出来だった。イギリスの腐敗を投影した人物描写でウェラーは一流の作詞家としての評価を得たのだ。『Setting Sons』にはジャム史上最もパワフルなシングル「Eton Rifles」も収録されている。

The Jam – The Eton Rifles

 

19位 : リック・ウェイクマン『The Six Wives Of Henry VIII (ヘンリー八世の六人の妻) 』(1973年)

後年のリック・ウェイクマンのコンセプト・アルバムにはコスチュームやナレーション、本物のスケート・リンクなどが欠かせなかった。だが『The Six Wives Of Henry VIII』では歌詞がなくても、優れたバンド (半分はイエス、もう半分はストローブスのメンバー) と自身の指の力だけで物語を効果的に伝えている。テーマにふさわしく、ドラマティックかつイギリス色の強いアルバムだ。

Catherine Of Aragon

 

18位 : アラン・パーソンズ・プロジェクト『I Robot』(1977年)

後年のアラン・パーソンズの作品はプログレ色の薄いものが多いが、このアルバムは違っている。音世界は壮大だが、同作の核になっているのは楽曲だ (多くは亡くなったパーソンズの相棒エリック・ウルフソンの作) 。同作のテーマはロボットの発展というより、それを研究する男の苦悩に置かれている。「Breakdown」では名シンガーであるホリーズのアラン・クラークがすばらしいヴォーカルを披露している。

The Alan Parsons Project – I Wouldn't Want to be Like You

 

17位 : ウィリー・ネルソン『Red Headed Stranger』(1975年)

ウィリー・ネルソンが、自作曲よりも、カヴァー曲 (特にフレッド・ローズの「Blue Eyes Crying In The Rain」) でキャリアのハイライトを迎えていたことは興味深い。だが彼は他人の曲を壮大かつ荘厳にカヴァーしてみせる。流れるような語り口や無駄をそぎ落としたサウンドは当時めずらしいものだったが、その後数十年のアウトロー・カントリーを形作った。たった33分しかない同作の内容には未だ明確になっていない部分もあるが、それこそが魅力なのだろう。

Willie Nelson – Blue Eyes Crying In The Rain

 

16位 : タートルズ『Present The Battle Of The Bands』(1968年)

このコンセプト・アルバムで、タートルズは12組の架空のバンドに扮している。個々の曲でカントリーやサーフ、ブロードウェイ、ハワイアン音楽 (「I’m Chief Kamanawanalea (We’re The Royal Macadamia Nuts) 」) まで様々なジャンルを取り上げている。その混沌の中からは、「You Showed Me」「Elenore」という2曲の完璧なポップ・ソングも生まれている。

Elenore

 

15位 : エルトン・ジョン『Captain Fantastic And The Brown Dirt Cowboy』(1974年)

世界的なロック・スターにとって、抜け出したばかりの辛い時期を賛美する作品を作るのは容易ではない。だが、同作はエルトン・ジョンとバーニー・トーピンの青春時代に聴く者を誘うのだ。バンドの演奏にも脂が乗っている。聴けば、埃っぽいリビングでチョコのビスケットを食べている気分になるだろう。

Someone Saved My Life Tonight

 

14位 : ピーター・ハミル『Nadir’s Big Chance』(1975年)

5枚目のソロ・アルバムで、プログレ界の哲学者というべきピーター・ハミルは自分の中に10代の少年心を見出した。すべての曲にヴァン・ダー・グラフ・ジェネレーターのメンバーが全員参加しており、普段は複雑な作品を志向するヴァン・ダー・グラフだが、この『Nadir’s Big Chance』で聴けるのは英国パンクの先駆けといえる演奏だ。セックス・ピストルズのジョン・ライドンは同作のファンとして知られているが、同作収録の2曲のソウル・バラードでのハミルのように、ライドンが感情を込めて歌うことはなかった。

Nadir's Big Chance (2006 Digital Remaster)

 

13位 : ピンク・フロイド『Wish You Were Here (炎~あなたがここにいてほしい) 』(1975年)

同作はピンク・フロイドがバンドとして制作した実質的に最後のアルバムといえるだろう。そこには、当時は健在だったシド・バレットの幻影も加わっていた。以降の作品では皮肉性ばかりが前面に出るようになるが、同作には彼らの温かみやアイデアが色濃く出ている。

Wish You Were Here

 

12位 : ドライヴ・バイ・タッカーズ『Southern Rock Opera』(2001年)

一聴した限りでは、『Southern Rock Opera』はレイナード・スキナードにリフ中心の反骨的ロックを混ぜ込んだような2枚組アルバムだ。だが深く分析すると、同作が”南部にまつわる2面性”に関するシリアスな考察をふんだんに含んでいることがわかる。そうした深い考察はタッカーズの特徴でもある。同作にも感じられるパンキッシュなユーモアは、実は本質ではないのだ。

Ronnie And Neil

 

11位 : ジェスロ・タル『Thick As A Brick (ジェラルドの汚れなき世界) 』(1972年)

大胆さの観点で『Thick As A Brick』に勝るジェスロ・タル作品は後にも先にもない。それは作り込まれたひとつの曲がアルバムの2面に亘り続く構成をとっても、イアン・アンダーソンが不機嫌な8歳児の壮大な詩を音楽にしたという設定の中核となるテーマをとっても言えることだ。2012年の続編『Thick As A Brick 2』も、アンダーソンよるここ数十年で一番の作品だ。

Really Don't Mind / See There a Son Is Born

 

10位 : XTC『Skylarking』(1986年)

XTCはプロデューサーのトッド・ラングレンとの仕事でそれなりの成果を得た。バンドによるデモを聴いてライフ・サイクルのコンセプトの着想を得たラングレンは、いくつかの曲間を切れ目なく繋ぐアイデアを取り入れた。あまり語られないが、アンディ・パートリッジとコリン・モールディングの歌い手としての実力に着目したXTCのプロデューサーはラングレンが初めてだったという。

Summer's Cauldron (Remastered 2001)

 

9位 : フランク・シナトラ『Watertown』(1970年)

それまでのシナトラの所謂”コンセプト・アルバム” (テーマの共通した楽曲の寄せ集め) とは違い、『Watertown』は妻に逃げられた男の数日間を描いたひとまとまりの作品だ。悲しいロマンスに焦点が当たった同作は、最も陰鬱なシナトラのアルバムでもある。

Watertown

 

8位 : キンクス『The Kinks Are The Village Green Preservation Society』(1968年)

後に続くキンクスのアルバムほどテーマの縛りは強くないが、『The Kinks Are The Village Green Preservation Society』からはレイ・デイヴィスの楽曲にその後も登場するキャラクターや設定が誕生した。同作でキンクスはビート・グループの世界からひとつ頭の抜けた存在になったのだ。

The Kinks – Village Green (Official Audio)

 

7位 : パーラメント『Mothership Connection』(1975年)

同作に関し驚くべき点は多いが、そのひとつはジョージ・クリントンが自身のメッセージを伝えるためにプログレのイメージ性を流用したことだ。コンセプト・アルバムの中のほかの代表作と比べると『Mothership Connection』のコンセプト性は薄い。”バカを手懐ける (tear the roof off the sucker) “ことを通して、世界は真の秩序にたどり着いたのだ。

P-Funk (Wants To Get Funked Up)

 

6位 : ザ・フー『Quadrophenia (四重人格) 』(1973年)

アドレナリンが出続ける90分間でザ・フーは、10代の疎外感についてロックで描けるすべてを表現してみせた。エンディングが喜ばしいものか悲劇かは聴く者の解釈に委ねられているが、『Quadrophenia』でピート・タウンゼントはソングライターとしての絶頂期を迎えている。特に4つのテーマを融合させた最終部が見事だ。

5:15

 

5位 : マイケル・ネスミス『The Prison : A Book With A Soundtrack』(1974年)

誰の目にも触れないところで、元モンキーズのマイケル・ネスミスは宇宙的なアメリカーナを完成の域に到達させていた。懐かしさとスペイシーさが同居する同作はそれだけで魅力的だ。しかし附属する短い物語のサウンドトラックとしての意図通りに聴いてみると、同作は人生を賛美する深遠なコンセプト・アルバムの様相を見せ始める。

Opening Theme – Life, The Unsuspecting Captive

 

4位 : ハスカー・ドゥ『Zen Arcade』(1984年)

初めて故郷から離れて暮らす若者の物語は、ポスト・ハードコアの名作である同アルバムで完璧に表現されている。史上屈指の影響力をもつパンク・バンドによるこの『Zen Arcade』からは、疾走感のあるエネルギーや存在に関する危機、そして無限の可能性が感じられる。

Something I Learned Today

 

3位 : ジェネシス『The Lamb Lies Down On Broadway (眩惑のブロードウェイ) 』(1974年)

ジェネシス『The Lamb Lies Down On Broadway』でピーター・ガブリエルは、プログレ史上に残る至高のメロディと巧みなアレンジによって、この世のものとは思えないシュールな世界観を表現してみせた。長大な物語は、ロック界に燦然と輝く壮大な言葉遊びで終結を迎える。

The Lamb Lies Down On Broadway

 

2位 : ブライアン・ウィルソン『Brian Wilson Presents Smile』(2004年)

ビーチ・ボーイズが1966年に制作したヴァージョンはこれほど美しかったのだろうか? 今となっては知る術がないが、2004年のヴァージョンは高次元に昇華されている。同作ではヴァン・ダイク・パークスの作詞協力を得ながらブライアンのアイデアが形になり、魅力的な楽曲の数々がひとつにまとめられている。何より、同作はロック史上最大の未実現作にハッピー・エンドを生んだのだ。

Heroes and Villains

 

1位 : マーヴィン・ゲイ『What’s Going On』(1971年)

楽曲同士が繋がりひとつの作品になっているポップやソウルのアルバムは多いが『What’s Going On』はその最初の1作ということになるかもしれない (単にクロスフェードで曲を繋いたムーディー・ブルースの作品は除く) 。マーヴィン・ゲイの歌はこれ以上ないすばらしさだ。彼に勝る歌い手はごく少数である。収録曲には、当時世間に求められていた関心や同情がふんだんに詰まっている。

What's Going On (Original Single Mix)

Written By Brett Milano



 

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